犬猿☆ラブコンフリクト

綾鷹ーアヤタカー

文字の大きさ
上 下
15 / 170

第15話

しおりを挟む


更衣室の中に入ると、タオルやボトル等が置いてあるロッカーの上の所にジャージが入っているであろう袋がおいてあるのが分かった。



身長160cmの私より少し高い位置にあるけど、手を伸ばせば余裕で届くだろう。



腕を伸ばしその袋を掴みロッカーの上から袋を下ろすと、長年ロッカーの上に置いてあったせいかホコリまで一緒になって落ちてくる。



「うわっ・・・ゲホゲホっ・・・ホコリすごっ・・・!」



むせ込みながらホコリを落とし、袋を開くと中からは“中島”の名前が刺繍(ししゅう)されたジャージがでてきた。



だが1つ、問題が発生した。



このジャージ・・・めっちゃ小さい・・・!



ジャージを両手で広げるように持ち、自分の体に当ててみる。



ズボンはギリギリ履けなくもない。



でも、上着がどう頑張っても入りそうにない。



だけどジャージに着替えてくると言った手前、着替えずに向こうに戻るのはどうも気に食わない。



無理を承知で小さいジャージへと袖を通してみると、意外にもズボンも上着もはなんとか着ることが出来た。



だけどズボンはウエストギリギリ、上着に至ってはボディラインがまる分かりなほどピッチリしていて・・・。


とてもじゃないけど、見れたもんじゃない。



「本当・・・こういうの見ると自分のデブさ加減を思い知らされる・・・」



感傷的になっている時、開くはずのない更衣室の扉が音を立てて開いた──。



「あっちぃ~・・・タオルタオ──は?」



「っ──・・・!?」



扉を開けたのは、あの性悪男の二海だった。



「なっ、なんで女子更衣室に堂々と入ってきてんの!?」



「──ここ、一応女子更衣室って書いてあっけど、実質は俺らの荷物置き場みてぇになってんだよ。・・・着替えてるんなら、札・・・使用中にしてもらわねぇと・・・」



確かに、更衣室の前に何か札みたいなものがぶら下がってたような。



「・・・最悪・・・」



ちゃんと注意深く見ておけばよかった。



後悔先に立たずとはこの事だ。



どうせ二海の事だ・・・今の私のこのピッチピチのジャージを見て、“太り過ぎ”だの“豚かよ”だのって言うに決まってる。



さすがに今それを言われたらメンタルに来るからやめて欲しいんだけど・・・。



「・・・3番目」



「へ?」



頭を抱えて二海から顔を背けるようにしていると、ポツリと二海のかすれた声が聞こえてくる。



「1番上の左から3番目・・・俺のTシャツ、入ってるから・・・それ着れば」



二海はそう言い残すと後ろを向いて更衣室を出ていった。



1番上の左から3番目・・・二海に言われた場所を見てみると、そこにはタオルやボトルの他にきちんと畳まれた紺色のTシャツが置いてあった。



二海が言っていたのはこのTシャツだろう。



紺色のTシャツを手にとってみると少し大きそうな服だった。



あのピチピチの上着よりはいいかな・・・。



そう思い、Tシャツに頭を通そうとした時──・・・。



「・・・あ、いい匂い・・・」



ふわり、と漂ってきた柔軟剤の匂いに思わず口から言葉がもれる。



この匂い、すごい好きだな・・・。



どのメーカーの柔軟剤なんだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

青春の初期衝動

微熱の初期衝動
青春
青い春の初期症状について、書き起こしていきます。 少しでも貴方の心を動かせることを祈って。

食いしん坊な親友と私の美味しい日常

†漆黒のシュナイダー†
青春
私‭――田所が同級生の遠野と一緒に毎日ご飯を食べる話。

坊主女子:学園青春短編集【短編集】

S.H.L
青春
坊主女子の学園もの青春ストーリーを集めた短編集です。

「史上まれにみる美少女の日常」

綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

処理中です...