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第15話
しおりを挟む更衣室の中に入ると、タオルやボトル等が置いてあるロッカーの上の所にジャージが入っているであろう袋がおいてあるのが分かった。
身長160cmの私より少し高い位置にあるけど、手を伸ばせば余裕で届くだろう。
腕を伸ばしその袋を掴みロッカーの上から袋を下ろすと、長年ロッカーの上に置いてあったせいかホコリまで一緒になって落ちてくる。
「うわっ・・・ゲホゲホっ・・・ホコリすごっ・・・!」
むせ込みながらホコリを落とし、袋を開くと中からは“中島”の名前が刺繍(ししゅう)されたジャージがでてきた。
だが1つ、問題が発生した。
このジャージ・・・めっちゃ小さい・・・!
ジャージを両手で広げるように持ち、自分の体に当ててみる。
ズボンはギリギリ履けなくもない。
でも、上着がどう頑張っても入りそうにない。
だけどジャージに着替えてくると言った手前、着替えずに向こうに戻るのはどうも気に食わない。
無理を承知で小さいジャージへと袖を通してみると、意外にもズボンも上着もはなんとか着ることが出来た。
だけどズボンはウエストギリギリ、上着に至ってはボディラインがまる分かりなほどピッチリしていて・・・。
とてもじゃないけど、見れたもんじゃない。
「本当・・・こういうの見ると自分のデブさ加減を思い知らされる・・・」
感傷的になっている時、開くはずのない更衣室の扉が音を立てて開いた──。
「あっちぃ~・・・タオルタオ──は?」
「っ──・・・!?」
扉を開けたのは、あの性悪男の二海だった。
「なっ、なんで女子更衣室に堂々と入ってきてんの!?」
「──ここ、一応女子更衣室って書いてあっけど、実質は俺らの荷物置き場みてぇになってんだよ。・・・着替えてるんなら、札・・・使用中にしてもらわねぇと・・・」
確かに、更衣室の前に何か札みたいなものがぶら下がってたような。
「・・・最悪・・・」
ちゃんと注意深く見ておけばよかった。
後悔先に立たずとはこの事だ。
どうせ二海の事だ・・・今の私のこのピッチピチのジャージを見て、“太り過ぎ”だの“豚かよ”だのって言うに決まってる。
さすがに今それを言われたらメンタルに来るからやめて欲しいんだけど・・・。
「・・・3番目」
「へ?」
頭を抱えて二海から顔を背けるようにしていると、ポツリと二海のかすれた声が聞こえてくる。
「1番上の左から3番目・・・俺のTシャツ、入ってるから・・・それ着れば」
二海はそう言い残すと後ろを向いて更衣室を出ていった。
1番上の左から3番目・・・二海に言われた場所を見てみると、そこにはタオルやボトルの他にきちんと畳まれた紺色のTシャツが置いてあった。
二海が言っていたのはこのTシャツだろう。
紺色のTシャツを手にとってみると少し大きそうな服だった。
あのピチピチの上着よりはいいかな・・・。
そう思い、Tシャツに頭を通そうとした時──・・・。
「・・・あ、いい匂い・・・」
ふわり、と漂ってきた柔軟剤の匂いに思わず口から言葉がもれる。
この匂い、すごい好きだな・・・。
どのメーカーの柔軟剤なんだろう。
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