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第8話
しおりを挟むホームルームも終わり、始業式に参加するために1名を除いたクラスメイト全員が体育館へと移動する。
私も流れで一緒に体育館へと向かっているが、正直足取りは重たい。
「ハァ~・・・」
由紀の隣を歩きながら、ため息をついて項垂(うなだ)れる。
朝からろくなことが起こらない。
性悪男にタックルした挙句足を踏んでしまい、朝から初対面の奴に罵倒されるわ。
クラス分けの表を見間違えるわ、性悪男と同じクラスな挙句隣の席だわ。
いじめっ子に絡まれた時、相手を黙らせてくれたから内心ちょこっとだけ見直してたのに。
そのあとすぐに頭を殴るし、罵倒してくるし・・・。
なんか、今年1年分の不幸が一気に来たみたい。
「・・・そう言えば、茉弘って二海くんと知り合いだったっけ?自己紹介やってる時もなにか言い合いしてたみたいだし・・・仲良いの?」
「全っ然!!今日初対面だよ。なのにものすっごい罵倒されてさ・・・本当、アイツ性格悪い!」
体育館に向かう最中、怒りをあらわにしながら由紀と会話をする。
どこをどう見たら私とアイツが仲良く見てるのか問いたい。
ハァ・・・とため息をつきながら階段を降りる。
その時──。
ドンッっと誰かに後ろから突き飛ばされ、その衝撃でバランスを崩す。
やばっ、落ちるっ──・・・!
ぎゅっと目を閉じ、衝撃に耐えようとする。
──が衝撃は一向に来ず、代わりに少し骨ばった大きな手が私の左の二の腕の辺りに伸びてきて、グイッと引っ張られた。
「──っ、ぶねぇ・・・!」
後ろを振り返ってみると、私の腕を掴んでいたのはあの性悪男の二海で──・・・。
「・・・気ぃつけろよ」
「あ・・・ありがと・・・」
私の体勢が整い倒れないことを確認してからフーっと一息つき、私の腕から手を離して何事も無かったかのように階段を降りていく。
二海の行動に驚きすきで、思わず彼の背中を見つめてしまう。
朝にあれだけ罵倒されてたから、てっきり転ぶまで傍観して“こんな所で転げ落ちるなんて間抜けだな”だの“愚鈍バカ”だのって言われるんだとばかり思ってたのに。
「・・・茉弘、大丈夫?」
「へ?あ、うん!大丈夫!早く体育館行こ!」
心配そうな由紀の声にハッとしてニコッと笑みを浮かべ、再び歩き始める。
二海・・・意外とヒョロそうな見た目の割に、意外と力あるんだな。
そんなことを考えながら、二海に掴まれてた二の腕をさすった。
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