『鴉』「遺伝子が定めた相棒と共鳴せよ」天涯孤独の高校生が “国家機密組織” に加入し怪異達に立ち向かう

赤月瀾

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百舌

0.00 Cafe Dawn 2

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 カフェを開けたい、と、魁君が言い出した翌日の午後。

 ワイシャツに、ショート丈の腰巻エプロン。そんなコスチュームに身を包んだ二人を見て、オレは大きな溜息を吐いた。

 そんな調子だから、もちろんオレにもコスチュームが充てがわれたけど、オレは嫌々普段着にエプロンだけ装着して事なきを得ることに成功した。

 魁君が「エプロンだけでも超似合ってるよカズ~」とかなんとかはしゃいでいるのがちょっと面倒くさい。

 そんな魁君の手には『占いカフェ』とチョークで書かれた看板が握られている。

 いや。カフェは分かった。分かってた。

 だけど、『カフェ』だなんて、微塵も聞いてないんだけど。

「占い……」

 オレが納得いかずに呟くと、隣にいた琉央さんが小さくため息を吐くのが聞こえた。

 やっぱり、琉央さんも面倒くさいんだろうな。そう思いながら、オレは琉央さんの顔を覗き込んだ。

 けれど「まぁ、魁がやりたいなら好きにすればいいよ」とちょっぴり優しい声で琉央さんが言い出したから、オレは思わず唇を噛んで前に向き直った。

 やっぱり魁君のことになるとダメだなこの人。

 魁君によれば、シュンさんは仕事があるから後から急いで合流する、とのことらしい。シュンさんも案外とやる気満々みたいだ。

 なるほど、逃げ道はないのか。

「あのさ、占いカフェってなに。魁君、占いなんてできるの?」

 オレが半ば諦め気味に尋ねると、魁君がニコニコしながら「もちろん!」と答える。

「オレとシュンちゃんは占いが趣味なんだよ~。だからカフェに占い要素足してみた」

「いやその……足してみた、って……」呆れた声が溢れた。

「……じゃあ、二人が占いするの?」

「琉央くんもするよ」

「え、」

 思わず隣で腕を組む琉央さんを見上げる。

「意外だろうね」琉央さんが言った。

「……人とか興味なさそう」

「御名答」琉央さんが頷く。

「だけどね! 琉央くん超人気者で、ファンめっちゃいるの。くくっウケる~ハクさまぁ~」

「こうなったのは1割がシュンのせい、あと9割は君のせいだ」

 やっぱりほとんど魁君のせいじゃん。と、オレは心の中でツッコむ。

 魁君は「あー聞こえないー」なんて言いながら耳を塞いでいる。

 その時、魁君が壁に立て掛けた看板に、オレは目が奪われた。

「…………占い師、4って書いてあるんだけど」

「うえ?」と、魁君がしらばっくれた顔でこちらを見る。

「もしかして、4人目って……、オレ? オレも占いするの?」

「…………えへへへへ」

「いや、えへへへへ、じゃないし」

「いいじゃ~ん。カズ、絶対才能あるからやってみなって~」

 冗談じゃない! 他人と無駄に関わるなんてごめんだ。

「いや無理やだ絶対やんない」

「うぇー、そんなこと言わないでさぁ~」

 猛烈に拒否するオレに、魁君が思案するみたいに首を傾げた。

「うーん。じゃあ、こうしない?」



  * * *



 そうして。上手く言いくるめられたオレは、結局カフェでの手伝いを始めることとなってしまったのだった。

「まずはワンコイン占いから始めればいいじゃん。あんなのサービスの一環みたいなもんだし、やってみたら簡単だって!」

 とかなんとか。そう魁君が宣うので、仕方なく、やった事もない占いを人にサービスとして提供するという暴挙をオレはしなければならなくなった。

 魁君もひどい人だ。

「これからカフェ手伝ってくれるなら、カズが欲しそうにしてるものあげてもいいよ」

 だなんて言い出すし。

「遊び用のスマホと、スマホアプリダウンロード用の偽造アカウントはどう? 琉央くん作」

 とか言うもんだから。

 正直ズルいと思った。

(魁君の提案に二つ返事で用意してくれる琉央さんもどうかと思う)

 ここに来てから、アプリも自由にインストール出来なくて、大好きだったweb小説とか、スマホゲームも随分ご無沙汰であったけれど。

 そういうの、機密組織的にアウトなんじゃないの? とは多少思った。でも。ちょっと魅力的だ、とか思ってしまったのだ。

 そうして、いま現在に至る。
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