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一話
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「私、前世で何か悪いことをしてしまったんでしょうか」
「キャロル、それは何回目だ?」
「う……すみません」
項垂れると、頭上から溜息が降ってくる。顔を上げると、うんざりした様子のお父様と目が合う。その後ろではお母様が困ったように微笑んでいた。
私の名前はキャロル・オリバー。伯爵家の娘である私は、たった今死んだばかりの前世の記憶を持って生まれてしまったらしい。今生の記憶も当然あるけれど、私が物心つく頃にはすでに私はキャロル・オリバーだった。
そしてもう一つ、前世の記憶はどうやら私の妄想ではなく、事実らしい。
「キャロルって、本当に不思議だよなぁ」
なんと今生では、私には兄がいる。
鼻筋の通った美しい顔立ちに、宝石のように輝くエメラルドグリーンの瞳。輝く金髪は絹糸のように繊細で、まさにお伽噺の王子様のような容貌だ。前世で言うところのイケメンというやつである。
そんな兄の名前はロヴェル・オリバー。私の三つ上だ。
ロヴェルお兄様は、第一印象こそ冷たい人間だと思われがちだけれど、実はとても優しくて面倒見がいい人だ。口では何だかんだ言いつつも、勉強が分からなければ教えてくれるし、風邪をひいて寝込めばお粥を作ってくれることもある。
そんな兄を慕っている私だけれど、さすがにここまで言われると少し傷つく。
「私だって不思議に思っているのですよ?でも本当のことなんです」
「じゃあ前世のキャロルは、悪役令嬢だったとでも言うのか?」
「そうなんです!」
「何で悪役なんだ?」
「私、乙女ゲームのヒロインをいじめるんです!悪い子なの!」
「……あっちの世界ではそれが普通なのか?」ロヴェルお兄様が心配そうにこちらを覗き込む。こんな変なことを言う妹に優しい言葉をかけようとしてくれるなんて、やっぱりお兄様は優しい!でも今生の私は、決して悪い子ではないのだ。むしろ良い子だと思う。だってお父様もお母様も私のことをとっても愛してくれているもの!
「でも心配しなくて良いんですよ!私、本当はとっても良い子なんですから!」
「その根拠はどこから来るんだ」
「ええと……なんとなく?」
「ダメじゃないか!」
兄が頭を抱える。両親も苦笑いだ。私はテーブルに突っ伏す兄に向かって声をかける。
「そんなことよりお兄様!せっかく家族水入らずなんですから、楽しいお話をしましょう?」
「……そんなこととはなんだ……」
兄はぐったりとしているけれど、私はめげない。だってこれから話す内容は、私にとって何より大事なことなのだ。
私はコホンと咳払いをすると、その場にいる全員を見回してにっこりと笑った。
「私、恋がしたいです!」
私の言葉に両親はきょとんとし、兄はやれやれと頭を振った。
「キャロル、それは何回目だ?」
「う……すみません」
項垂れると、頭上から溜息が降ってくる。顔を上げると、うんざりした様子のお父様と目が合う。その後ろではお母様が困ったように微笑んでいた。
私の名前はキャロル・オリバー。伯爵家の娘である私は、たった今死んだばかりの前世の記憶を持って生まれてしまったらしい。今生の記憶も当然あるけれど、私が物心つく頃にはすでに私はキャロル・オリバーだった。
そしてもう一つ、前世の記憶はどうやら私の妄想ではなく、事実らしい。
「キャロルって、本当に不思議だよなぁ」
なんと今生では、私には兄がいる。
鼻筋の通った美しい顔立ちに、宝石のように輝くエメラルドグリーンの瞳。輝く金髪は絹糸のように繊細で、まさにお伽噺の王子様のような容貌だ。前世で言うところのイケメンというやつである。
そんな兄の名前はロヴェル・オリバー。私の三つ上だ。
ロヴェルお兄様は、第一印象こそ冷たい人間だと思われがちだけれど、実はとても優しくて面倒見がいい人だ。口では何だかんだ言いつつも、勉強が分からなければ教えてくれるし、風邪をひいて寝込めばお粥を作ってくれることもある。
そんな兄を慕っている私だけれど、さすがにここまで言われると少し傷つく。
「私だって不思議に思っているのですよ?でも本当のことなんです」
「じゃあ前世のキャロルは、悪役令嬢だったとでも言うのか?」
「そうなんです!」
「何で悪役なんだ?」
「私、乙女ゲームのヒロインをいじめるんです!悪い子なの!」
「……あっちの世界ではそれが普通なのか?」ロヴェルお兄様が心配そうにこちらを覗き込む。こんな変なことを言う妹に優しい言葉をかけようとしてくれるなんて、やっぱりお兄様は優しい!でも今生の私は、決して悪い子ではないのだ。むしろ良い子だと思う。だってお父様もお母様も私のことをとっても愛してくれているもの!
「でも心配しなくて良いんですよ!私、本当はとっても良い子なんですから!」
「その根拠はどこから来るんだ」
「ええと……なんとなく?」
「ダメじゃないか!」
兄が頭を抱える。両親も苦笑いだ。私はテーブルに突っ伏す兄に向かって声をかける。
「そんなことよりお兄様!せっかく家族水入らずなんですから、楽しいお話をしましょう?」
「……そんなこととはなんだ……」
兄はぐったりとしているけれど、私はめげない。だってこれから話す内容は、私にとって何より大事なことなのだ。
私はコホンと咳払いをすると、その場にいる全員を見回してにっこりと笑った。
「私、恋がしたいです!」
私の言葉に両親はきょとんとし、兄はやれやれと頭を振った。
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