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一話

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「え? もしかして本物の聖女ってあの子?嘘でしょ!?」
「俺もさすがにこの展開は予想していなかった」
「ですよね!?」聖女として目覚めたセリナーーもといシャーロットは、偽物のシャーロットだとバレないようにしながら学園生活を満喫し始める。けれど、王子には何か裏があるようで……!?
「どうしよう!このままじゃ悪役令嬢になっちゃうよ!」
「まあでも、入れ替わったのならもう表舞台に立つことはなさそうだしいいんじゃないか?」
「よくありませんわ!入れ替わりものって大抵は元の体に戻るために奔走するじゃないですの!このままでいいわけがありませんわ」
「それもそうか……」
「……あれ、シャーロットさんが聖女なんだったらもしかしてこの魔法薬って……」
「ん?どうした?」
「いえ……何でもありませんわ」
シャーロットを男に戻す魔法薬を作る。そう決意したシャーロットだったが、その先にある出来事とは自分の想像を遥かに超えたものだった。
「なんだこれは!?」
「……王子?」
学園からの帰り道、馬車に乗っていると突然御者が叫んだ。その声につられて外を見るとそこには驚くべき光景が広がっていた。
「黒い霧……まさか……!」
「おい!どうなっているんだ!」
「殿下、危険ですのでお下がりください」
「そういうわけにはいかないだろう!シャーロットは……シャーロットは無事なのか!?」
黒い霧が王都を包んでいた。そしてその中には大きな影が蠢いていた。それは紛れもなく魔物だった。
「どうして魔物がこんなところに……!」
「とにかく皆さんを避難させましょう!」
王子達の護衛達は馬車から降りると、避難誘導を開始した。その間にも魔物の侵攻は止まらない。王都中がパニック状態になりつつあった。
「殿下!こちらです!」
「わかった、ここは頼んだぞ!」
護衛の一人がシャーロットを誘導する。だが、その先には……
「あれは……ゴブリンキングか!?」
王子が見たのは魔物の中でも上位に位置するゴブリンキングだった。普通の兵士や騎士では太刀打ちできないほどの力を持った魔物だ。しかし、王都の戦力はすでにそのほとんどが避難誘導に回っており、残った騎士達もシャーロット達を必死に守っていた。このままではいずれ全滅してしまうだろう。
(どうすればいいんだ……!)
「殿下!私が時間を稼ぎます!」
「待てシャーロット!何をするつもりだ!」
「私の魔法でゴブリンキングを足止めします!その間にどうか避難を!」
「お前を置いて行けるわけがないだろう!俺も戦う!」
王子はシャーロットを守るように前に立つと、剣を構えた。そして魔物の群れに向けて走り出す。それを見たシャーロットも魔法を唱えた。
これからどうなってしまうのーー、そんな思いを抱えながら。
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