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一話

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現在、私は世界中が注目する世界最強の魔法使いです。

ですが私にはどうしても譲れないものがあります。

それは悪役令嬢であること──。

乙女ゲームでの悪役令嬢は、ヒロインを苛め抜き、最後はざまぁされるという役どころです。

私は、そんな悪役令嬢には絶対になりたくありません! そんな思いが通じたのか──ついに私の魔法才能が発見されました! ですが『魔才値』と言う魔力の能力値のようなものが高くないと診断されてしまいました……。

しかし、私は諦めませんでした!

『魔才値』が低いのは、他の面で才能を伸ばせばいいと自分を奮い立たせました。

そこで思いついたのが魔法道具を作るということです。

乙女ゲームの世界では悪役令嬢がヒロインに嫌がらせをするために様々な魔法道具を開発してきました。

それを逆に私が作り出し、世界最強になるのです! これで誰にも邪魔されることなく悪役令嬢として振る舞うことができます! ……でもその前に一つだけ確認させてください。

「この屋敷って、どこ?」

……ここはどこ? 私はどうしてここにいるの? 私の名前はリリーナ。

ピンクゴールドの髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ、あざとかわいい女の子──ではなく、美少女です。

私には前世の記憶がある──そしてこの世界は乙女ゲームの世界だと知っている。

だからここが乙女ゲームの世界で間違いはないのだけど……。

でもなぜここに私がいるの!? だってここは『ルーファス』という悪役令嬢が住む屋敷で、その悪役令嬢が私を苛め抜くの! どうして悪役令嬢である『ルーファス』に私が転生してるの!? 乙女ゲームの世界に行くならヒロインになるはずでしょ!? ……もしかして、『ルーファス』が転生したの? 私はそう思わずにはいられなかった。

だってここは本当に乙女ゲームの世界で、ここはその世界なのだ。

でもそうなると『ルーファス』はどこにいるんだろう? 私の記憶にある乙女ゲームの中の『ルーファス』は意地悪で性格の悪い女の子だった。

だけど今の私は、『ルーファス』になったわけじゃない。

今の『私』は悪役令嬢のリリーナだ。

だから意地悪で性格の悪い女の子に転生したのかと思ったけど……でも違うみたい。

だったらもしかして私が転生したせいで、『ルーファス』が消えてしまった可能性もある……? そんなことになったらまずいじゃない! ここは乙女ゲームの世界だよ? つまりヒロインがいるってことでしょ!? そんな世界に『私』みたいな悪役令嬢がいていいはずがない! ヒロインにはちゃんとヒロインらしく可愛い女の子を配置しなきゃダメでしょ!

「こうなったら私がヒロインを見つけてあげる!」

悪役令嬢として転生した私だけど、誰かをいじめたいとか人を蹴落としてまで幸せになりたいとは思わない。

だから私はこの世界が乙女ゲームの世界だと知っているからには、ヒロインを幸せにするために動くよ!

「そして素敵な男性に出会って溺愛してもらうんだー!」
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