1 / 1
1話
しおりを挟む『条件を満たしました。これより、文字変換の使用文字数がリセットされます』
視界に表示された画面を見てレイナは危うく声を出そうになったが、どうにか抑える。文字数が元に戻ったという事は日付が変更されたらしく、知らない間にレイナは大迷宮内で1日近くを過ごした事らしい。
文字数がリセットされた事で文字変換の能力も扱えるようになり、ここでレナは3人の様子を伺う。まだイヤンに仕掛けられた罠の影響が残っているのかリルは目元を抑え、チイやネコミンも眠たそうに目を擦る。その様子を見てレイナは脱出の前に安全な場所で休息が必要だと判断して文字変換を使って3人が休める場所を作り出す事にした。
(銃を生み出したとき、俺の思い通りの物が出てきた……なら、あれも作り出せるかもしれない)
レイナは立ち上がるとカバンの中から文字変換に使えそうな道具を探し出し、万が一の場合に想定してカバンのポケットの中に文字変換の材料として入れていた金貨を取り出す。
『金貨――世界中で発行されている金貨』
金貨を見つめてレイナは特に勿体ない気がしたが、今回作り出す物を考えると一文字よりも二文字の文字の方が「想像」しやすく、文字変換の能力を発動させて作り上げる事にした。
「すいません、ちょっと待っててください」
「ん、何処へ行く気だ?」
「大丈夫です、何処へも行きませんから」
立ち上がって移動を始めたレイナにリルが声を掛けるが、言葉通りに数歩ほど離れた場所でレイナは立ち止まり、そして解析と文字変換の能力を発動して「金貨」の名前を変更させる。
「……頼む、成功して」
祈るようにレイナは金貨の詳細画面の名前の部分を書き換えた瞬間、金貨が光り輝き、それを見たレイナは咄嗟に放り投げる。そして地面に落ちた瞬間に金貨は形状を大きく変化させ、やがてレイナの前に「一軒家」が誕生した。
――第四階層の安全地帯の中央にてレイナが生まれた時から住み続けていた『自宅』が誕生し、その光景を見てレイナは無意識に瞳を潤ませる。何しろ異世界で自分の家を目にするなど考えてもおらず、扉を開けば家族が出迎えてくれるのではないかと考えてしまう。
一方で金貨から建築物を誕生させたレイナにリル達は唖然とした表情を浮かべ、まさか建物まで作り出せるとは思わず、リルが珍しく焦った声を上げる。
「こ、こ、これはいったい……何なんだ!?」
「あ、すいません……説明するのを忘れてました。これが俺の家です」
「いや、家ですって……」
「……わおっ」
リル達は目の前に誕生した建物を前にして唖然とした表情を浮かべ、恐る恐る近付いて本物である事を確認する。レイナの方も扉に手を伸ばし、鍵が開いている事を確認すると中に入り込む。
外見だけではなく、建物の中身の方も完璧に再現されており、リル達を中に通すとレイナは部屋の間取りや家具も存在する事を確認し、これで気兼ねなく休むことが出来ると判断した。その一方で家の中に案内されたリル達は興奮した様子でレイナに話しかける。
「お、おい!!この天井付近に張り付いているのは何なんだ!?」
「あ、それはクーラーです。部屋の中を温かくしたり、逆に冷たくする事も出来ます」
「なら、こっちの箱のような物は?」
「電子レンジです。中に冷たい食べ物とかを入れると温めることが出来ます」
「なら、この変なの?」
「テレビです。今は使えないと思いますけど……」
リル達は初めて見る電子機器に戸惑い、部屋の中の物をあちこちと調べまわる。彼女達にとっては初めて見る未知の道具がいくつも存在し、その間にレイナは建物の様子を確認する。
(俺がこっちの世界に召喚される前の状態の家だ……やっぱり、文字変換を発動させるとき、作り出す物は俺の想像が反映されるんだ)
レイナの予想通り、文字変換の能力を使用するときは欲しい物を想像すればその願いが反映されて望み通りの物が現れるらしく、だからこそレイナは想像力を高めるために「家」ではなく「自宅」という文字を使用した。結果としてはそれが功を奏し、見事にレイナは異世界で自分の家を作り出す事に成功した。
しかし、何でもかんでも思い通りにはいかず、残念ながら照明を付けるためにレイナはスイッチを押すが反応はなく、冷蔵庫の方も確認すると中身が空で機能していない事が判明する。
(あ、そうか……家を作り出した所で電気やガスや水道が使えるはずがないじゃん。失敗した……)
家だけを生み出したところで電気等が都合よく通っているはずがない事に気付いたレイナは頭を抑え、これでは身体を休める事は出来ても住む場所としては不適合だと判断する。物置部屋に行けばカセットコンロの類があるので火はどうにかできるが、水道と電気に関してはどうする事も出来ない。
(参ったな、折角作り出したのにこれじゃあ心行くまで休むことが出来ないよ……ん?待てよ、それならあれを作り出せば電気やガスや水道どころか、移動も楽になるんじゃないのか?)
ソファに座り込みながらレイナは自分の叔父が所持していたとある車の存在を思い出し、今度身体を休める場所を作る時はあの車を出してみるのも悪い手ではないかと考え、一先ずはリル達に声を掛ける。
「今日はここで休みましょう。アリシアさんもベッドで寝かせたいし、必要な道具があるなら全部持ってき行きましょう」
「ん……そ、そうだな」
「これが異界の勇者の家だというのか……何とも不思議な物だな」
「今度、ゆっくり見学したい」
「それはまた別の機会という事で……両親の部屋にベッドがありますから、そこで休ませましょう」
外で寝かせているアリシアを運び込み、レイナの両親の部屋へ運び込む。柔らかいベッドの上で寝かせたお陰か心なしかアリシアの表情も和らぎ、そんな彼女を見てリルが看病を申し出る。
「アリシアの事は私が見ておこう。君たちは先に休んでいてくれ」
「リル様、それなら私が……」
「いや、いいから休むんだ。アリシアとしても私の方が相手をしやすいだろう」
「そ、そうですか……分かりました」
「じゃあ、客室もあるのでそっちへ案内します」
アリシアの事はリルに任せるとレイナはチイとネコミンのために客室へ案内すると、自分は二階の自室へ向かう。入って早々にレイナは見慣れた部屋の光景にため息を吐き出し、ここが異世界である事を忘れてしまいそうになった。
読みかけの漫画や朝起きる際に床に落としてしまった毛布を見て本当に自分の部屋に戻って来た感覚に襲われるが、レイナは自分の胸元に手を伸ばし、乳房に触れる。別に邪な気持ちで触れたわけではなく、現在の自分の姿の変化を自覚してここが地球ではない事を再確認した。
「……見慣れた天井だな」
ベッドに横たわり、懐かしく感じる自分の部屋の天井を眺めながらもレイナは瞼を閉じる。無意識に涙が流れてしまい、本当の元の世界へ戻りたいという気持ちが強まっていく。
「帰りたい……」
地球の家族や友人の顔を思い出しながらもレイナは睡魔に襲われ、意識が薄れかけた時、部屋の扉が開いて誰かが中に入り込む。その人物はレイナがベッドの上で涙を流しながら眠っている事に気付くと、黙ってレイナの方へ近づき、手を握り締めた。
「よしよし……大丈夫、ゆっくり休んで」
「んっ……」
手を握り締めた人物はレイナが立ち去る際に彼から「不安」の臭いを嗅ぎ取ったネコミンであり、心配した彼女はレイナの様子を確認するために部屋まで訪れる。そして子供の様に泣いているレイナの姿を見た彼女は落ち着かせるようにレイナの頭を撫でながら安心させた。
視界に表示された画面を見てレイナは危うく声を出そうになったが、どうにか抑える。文字数が元に戻ったという事は日付が変更されたらしく、知らない間にレイナは大迷宮内で1日近くを過ごした事らしい。
文字数がリセットされた事で文字変換の能力も扱えるようになり、ここでレナは3人の様子を伺う。まだイヤンに仕掛けられた罠の影響が残っているのかリルは目元を抑え、チイやネコミンも眠たそうに目を擦る。その様子を見てレイナは脱出の前に安全な場所で休息が必要だと判断して文字変換を使って3人が休める場所を作り出す事にした。
(銃を生み出したとき、俺の思い通りの物が出てきた……なら、あれも作り出せるかもしれない)
レイナは立ち上がるとカバンの中から文字変換に使えそうな道具を探し出し、万が一の場合に想定してカバンのポケットの中に文字変換の材料として入れていた金貨を取り出す。
『金貨――世界中で発行されている金貨』
金貨を見つめてレイナは特に勿体ない気がしたが、今回作り出す物を考えると一文字よりも二文字の文字の方が「想像」しやすく、文字変換の能力を発動させて作り上げる事にした。
「すいません、ちょっと待っててください」
「ん、何処へ行く気だ?」
「大丈夫です、何処へも行きませんから」
立ち上がって移動を始めたレイナにリルが声を掛けるが、言葉通りに数歩ほど離れた場所でレイナは立ち止まり、そして解析と文字変換の能力を発動して「金貨」の名前を変更させる。
「……頼む、成功して」
祈るようにレイナは金貨の詳細画面の名前の部分を書き換えた瞬間、金貨が光り輝き、それを見たレイナは咄嗟に放り投げる。そして地面に落ちた瞬間に金貨は形状を大きく変化させ、やがてレイナの前に「一軒家」が誕生した。
――第四階層の安全地帯の中央にてレイナが生まれた時から住み続けていた『自宅』が誕生し、その光景を見てレイナは無意識に瞳を潤ませる。何しろ異世界で自分の家を目にするなど考えてもおらず、扉を開けば家族が出迎えてくれるのではないかと考えてしまう。
一方で金貨から建築物を誕生させたレイナにリル達は唖然とした表情を浮かべ、まさか建物まで作り出せるとは思わず、リルが珍しく焦った声を上げる。
「こ、こ、これはいったい……何なんだ!?」
「あ、すいません……説明するのを忘れてました。これが俺の家です」
「いや、家ですって……」
「……わおっ」
リル達は目の前に誕生した建物を前にして唖然とした表情を浮かべ、恐る恐る近付いて本物である事を確認する。レイナの方も扉に手を伸ばし、鍵が開いている事を確認すると中に入り込む。
外見だけではなく、建物の中身の方も完璧に再現されており、リル達を中に通すとレイナは部屋の間取りや家具も存在する事を確認し、これで気兼ねなく休むことが出来ると判断した。その一方で家の中に案内されたリル達は興奮した様子でレイナに話しかける。
「お、おい!!この天井付近に張り付いているのは何なんだ!?」
「あ、それはクーラーです。部屋の中を温かくしたり、逆に冷たくする事も出来ます」
「なら、こっちの箱のような物は?」
「電子レンジです。中に冷たい食べ物とかを入れると温めることが出来ます」
「なら、この変なの?」
「テレビです。今は使えないと思いますけど……」
リル達は初めて見る電子機器に戸惑い、部屋の中の物をあちこちと調べまわる。彼女達にとっては初めて見る未知の道具がいくつも存在し、その間にレイナは建物の様子を確認する。
(俺がこっちの世界に召喚される前の状態の家だ……やっぱり、文字変換を発動させるとき、作り出す物は俺の想像が反映されるんだ)
レイナの予想通り、文字変換の能力を使用するときは欲しい物を想像すればその願いが反映されて望み通りの物が現れるらしく、だからこそレイナは想像力を高めるために「家」ではなく「自宅」という文字を使用した。結果としてはそれが功を奏し、見事にレイナは異世界で自分の家を作り出す事に成功した。
しかし、何でもかんでも思い通りにはいかず、残念ながら照明を付けるためにレイナはスイッチを押すが反応はなく、冷蔵庫の方も確認すると中身が空で機能していない事が判明する。
(あ、そうか……家を作り出した所で電気やガスや水道が使えるはずがないじゃん。失敗した……)
家だけを生み出したところで電気等が都合よく通っているはずがない事に気付いたレイナは頭を抑え、これでは身体を休める事は出来ても住む場所としては不適合だと判断する。物置部屋に行けばカセットコンロの類があるので火はどうにかできるが、水道と電気に関してはどうする事も出来ない。
(参ったな、折角作り出したのにこれじゃあ心行くまで休むことが出来ないよ……ん?待てよ、それならあれを作り出せば電気やガスや水道どころか、移動も楽になるんじゃないのか?)
ソファに座り込みながらレイナは自分の叔父が所持していたとある車の存在を思い出し、今度身体を休める場所を作る時はあの車を出してみるのも悪い手ではないかと考え、一先ずはリル達に声を掛ける。
「今日はここで休みましょう。アリシアさんもベッドで寝かせたいし、必要な道具があるなら全部持ってき行きましょう」
「ん……そ、そうだな」
「これが異界の勇者の家だというのか……何とも不思議な物だな」
「今度、ゆっくり見学したい」
「それはまた別の機会という事で……両親の部屋にベッドがありますから、そこで休ませましょう」
外で寝かせているアリシアを運び込み、レイナの両親の部屋へ運び込む。柔らかいベッドの上で寝かせたお陰か心なしかアリシアの表情も和らぎ、そんな彼女を見てリルが看病を申し出る。
「アリシアの事は私が見ておこう。君たちは先に休んでいてくれ」
「リル様、それなら私が……」
「いや、いいから休むんだ。アリシアとしても私の方が相手をしやすいだろう」
「そ、そうですか……分かりました」
「じゃあ、客室もあるのでそっちへ案内します」
アリシアの事はリルに任せるとレイナはチイとネコミンのために客室へ案内すると、自分は二階の自室へ向かう。入って早々にレイナは見慣れた部屋の光景にため息を吐き出し、ここが異世界である事を忘れてしまいそうになった。
読みかけの漫画や朝起きる際に床に落としてしまった毛布を見て本当に自分の部屋に戻って来た感覚に襲われるが、レイナは自分の胸元に手を伸ばし、乳房に触れる。別に邪な気持ちで触れたわけではなく、現在の自分の姿の変化を自覚してここが地球ではない事を再確認した。
「……見慣れた天井だな」
ベッドに横たわり、懐かしく感じる自分の部屋の天井を眺めながらもレイナは瞼を閉じる。無意識に涙が流れてしまい、本当の元の世界へ戻りたいという気持ちが強まっていく。
「帰りたい……」
地球の家族や友人の顔を思い出しながらもレイナは睡魔に襲われ、意識が薄れかけた時、部屋の扉が開いて誰かが中に入り込む。その人物はレイナがベッドの上で涙を流しながら眠っている事に気付くと、黙ってレイナの方へ近づき、手を握り締めた。
「よしよし……大丈夫、ゆっくり休んで」
「んっ……」
手を握り締めた人物はレイナが立ち去る際に彼から「不安」の臭いを嗅ぎ取ったネコミンであり、心配した彼女はレイナの様子を確認するために部屋まで訪れる。そして子供の様に泣いているレイナの姿を見た彼女は落ち着かせるようにレイナの頭を撫でながら安心させた。
0
お気に入りに追加
10
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

婚約破棄された私は涙を流していましたが、夢で出会った隣国の王子と恋に落ちる
mkrn
恋愛
「お嬢様!」
私のもとに駆けつけたエマが悲鳴を上げます。床に座り込んで震えている私を抱き締めるようにしてくれました。彼女の体は温かくて柔らかかったです。
そんなエマを抱き締めた私の瞳から涙が溢れました。
「どうなされました?大丈夫ですか?」
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる