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14.君を迎えに行くよ
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キッチンに向かってにんじんの皮を剥く。すっかり手に馴染んだピーラーは鈴音にねだられて買ったものだったんだと思い出して、頬が緩む。鈴音がいなくなって、自分でもだいぶ料理ができるようになった。キャベツや玉ねぎも刻んで、豚肉を炒めたフライパンに放り込む。
「タクミ、何作ってるんだ?」
「野菜炒めだよ」
「そうか。ごはんはちゃんと炊いたか?」
「冷凍してたのがあるから。……え?」
振り返ると、人間の姿の鈴音がそこにいた。あの髪飾りでポニーテールにした鈴音が。
「タクミ、ただいま」
「おかえり。会いたかった」
「迎えに来てくれてありがとう」
そう言って笑った鈴音を抱きしめる。そっと抱きしめ返してくれたのが嬉しくて、もう絶対に手放さないと誓いながら腕の力を強めた。
「タクミ、コンロの火消さないと焦げるぞ」
慌てて火を落とすと、後ろからぐう、とお腹が鳴った音がした。
「タクミ、お腹空いた」
「うん、食べようか」
ふたり分の食器を用意してテーブルの前に並んで座る。手を合わせていただきますをした。
「鈴音、あの餃子おいしかったよ」
「そうか。また作ってやろう」
「今度は一緒に作ろう。たぶん、僕のほうが包むのは上手だと思う」
「タクミ、器用だもんな」
そう言いながらも少し不貞腐れたような顔をした鈴音がかわいくて、尖らせた唇にキスをした。鈴音は頬を赤くして、目をぱちくりさせている。
「……タクミ、鈴音のこと好きなのか」
「うん、さっきも言ったけど、好きだよ。できればずっと一緒にいてほしい」
「そうか。それなら問題ない。タクミが嫌だって言っても、離れてやらない」
飛びついてきた鈴音を受け止める。もう、気持ちを偽ったりしない。二度と後悔しないように。
「タクミ、何作ってるんだ?」
「野菜炒めだよ」
「そうか。ごはんはちゃんと炊いたか?」
「冷凍してたのがあるから。……え?」
振り返ると、人間の姿の鈴音がそこにいた。あの髪飾りでポニーテールにした鈴音が。
「タクミ、ただいま」
「おかえり。会いたかった」
「迎えに来てくれてありがとう」
そう言って笑った鈴音を抱きしめる。そっと抱きしめ返してくれたのが嬉しくて、もう絶対に手放さないと誓いながら腕の力を強めた。
「タクミ、コンロの火消さないと焦げるぞ」
慌てて火を落とすと、後ろからぐう、とお腹が鳴った音がした。
「タクミ、お腹空いた」
「うん、食べようか」
ふたり分の食器を用意してテーブルの前に並んで座る。手を合わせていただきますをした。
「鈴音、あの餃子おいしかったよ」
「そうか。また作ってやろう」
「今度は一緒に作ろう。たぶん、僕のほうが包むのは上手だと思う」
「タクミ、器用だもんな」
そう言いながらも少し不貞腐れたような顔をした鈴音がかわいくて、尖らせた唇にキスをした。鈴音は頬を赤くして、目をぱちくりさせている。
「……タクミ、鈴音のこと好きなのか」
「うん、さっきも言ったけど、好きだよ。できればずっと一緒にいてほしい」
「そうか。それなら問題ない。タクミが嫌だって言っても、離れてやらない」
飛びついてきた鈴音を受け止める。もう、気持ちを偽ったりしない。二度と後悔しないように。
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