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14.君を迎えに行くよ

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 ついに最終勤務日を迎え、工場のみんなが送別会を開いてくれた。ほろ酔い気分で歩く帰り道、ショルダーバッグの中でスマートフォンが震えた気がして立ち止まる。画面には知らない番号が表示されていた。数秒悩んでから、通話状態にして耳に当てる。

「あの、江藤えとうさんのお電話でしょうか?」
「……ああ、はい。そうです」

 迷い猫のチラシに、偽名で『江藤』と記載したことを思い出し、スマートフォンを軽く握り直しながら返事をする。

「私、早川はやかわゆいと申します。猫ちゃん、見つかりましたか?」
「いえ、まだです。もしかして……」
「期待させてごめんなさい。今保護しているわけではないのですが、心当たりがあって。お力になれたらと思い、お電話させていただきました」
「心当たりというのは?」

 どんな情報でも今はありがたかった。逸る気持ちを深呼吸ひとつして落ち着かせる。

「前に一度、保護したことがあるんです。とっても綺麗な黒猫ちゃんだったのでよく覚えています。チラシにあったリボン飾りを持っていたので、たぶんお探しの鈴音ちゃんだと思うのですが」
「それっていつのことですか?」
「結構前で……たしか、秋頃だったと思います。土砂降りの夜に震えているところを見つけて連れて帰りました。でも、翌日すぐに出ていってしまって……ちゃんと届を出せばよかったのですが、すみません」
「いえ、早川さんは悪くないです。保護していただいてありがとうございました」

 電話の向こうから猫の鳴き声が聞こえる。早川さんも猫を飼っているのだろうか。

「それでですね、チラシに鈴音ちゃんの写真を載せたらいいのにと思ったのですけど」
「ああ、その通りなんですが、お恥ずかしながら写真が一枚もなくて」
「そうなんですか。あんなにかわいい猫ちゃんを写真に撮らないなんてもったいないです。あの、私が撮ったのでよければ使いますか? うちの飼い猫と並んで寝ていたのがかわいくて、つい撮ってしまったのですが」
「本当ですか、助かります」

 早川さんはSNSを利用して探してみてはどうかと提案してくれた。使ったことがないと言うと、早川さんのアカウントで声をかけてくれるということになった。本当に心強い。最近は紙のチラシよりもインターネットの掲示板やSNSを利用した迷い猫捜索が主流だそうだ。

「何か進展があったらまたご連絡しますね。あ、ちょっと大福。まだ電話中だから待って」
「大福?」
「あ、うちの猫の名前です。白くてふかふかで……おいしそうだったので」
「かわいらしい名前ですね。ご連絡いただいた上に、さらにご協力いただいて本当にありがとうございます。こちらも何かあればすぐ連絡します」
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