満月の夜に君を迎えに行くから

桃園すず

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8.君のことばかり考えてしまう

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 まずは生活雑貨店に向かった。キッチン雑貨のエリアに行くと、様々な用途の器具が並んでいて、どれも気になってしまう。鈴音も興味深げにひとつひとつ手に取って見ている。

「タクミ、ネギカッターだって。おもしろいな。買おう」

 白髪ねぎを作るためだけの刃のたくさん付いたそれを見せられる。他にもにんにく絞り器とかエッグカッターとか、特定の用途にしか使えない器具の形状はユニークで、目を引く。

「面白いけど買わないよ。お金ないから。今日買うのはピーラーと計量スプーンと大きめの鍋ね」

 余計なものを買ってしまわないよう、目当てのものだけを視界に入れるようにした。切れ味の良さそうなピーラーを選んでカゴに入れ、計量スプーンのコーナーに移動する。どれも同じようなものに見え、最初に手に取ったものをカゴに突っ込んだ。

「タクミ、これはスプーンじゃないのになんでここにあるんだ」

 鈴音が持ってきたのは、大さじと小さじを量ることのできる計量カップだった。置いたまま使えるから、こぼす心配もなく、使いやすそうに見える。

「買ってみようか」

 鈴音から受け取ったカップもカゴに入れた。今度は鍋を見に行く。周りを見ると、男女ふたりで来ている人が多いようだった。繋がれた手の薬指には、光るものが見える。いつかは僕も誰かと結婚したりするのだろうか。そんなことを考えながら鈴音を横目で見ると、目が合って微笑まれ、つい下を向く。

「タクミ、鈴音が人間になってどれくらい経ったか覚えてるか?」
「もうそろそろ二カ月くらいじゃないかな。それがどうかした?」
「なんでもない。……あっという間だな」

 そう言って鈴音は黙り込んでしまう。いつになく真剣な表情で、何かを考えているようだった。鍋はよくわからなくて、カレー鍋と書かれているものの中から値段が手頃なものを選んで購入した。その後はスーパーにも寄って、必要な食材を買い込んだ。
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