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7.君がいることがあたりまえになって

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 空になったタッパーを洗って職場に持っていくと、次の分がすでに用意されていた。申し訳ない気持ちはあるけれど、ありがたいことに変わりはないから両手に提げて持ち帰る。鈴音は、この前のことがあるから連れていくのは心配で留守番させるようにしていた。不満そうにしていたけれど、そもそも僕だって遊びに行っているわけではないし。

「タクミ、おかえり」
「うん、ただいま」

 玄関の扉を開けると、すぐそこに鈴音が待っている。こうやって挨拶しあうことも、靴をまだ脱いでいないのに鈴音が抱きついてくるのを受け止めるのも、いつの間にか当たり前のことになっている。慣れるって恐ろしい。

「ちょっと、鈴音。こぼれちゃうから離れて。梨花さんがまたおかず作ってくれたから、温めて食べよう」

 そう声をかけると、鈴音はなぜか不満そうだ。部屋の中から炊飯器の炊きあがりのメロディーがちょうど聞こえてきた。いない間に包丁や火を使わせるのはまだ心配だから、料理の第一段階として、炊飯は鈴音にやってもらうことにしたのだ。

「ほら、ごはんも炊けたみたいだし」
「梨花に会ったのか?」

 なんだかまだ口を尖らせたまま鈴音がそう問いかけてくる。僕だけ梨花さんに会ったのが気に入らないのだろうか。

「いや、梨花さんには会ってないよ。熊谷さんが持たせてくれたから」
「そうか。……鈴音も早くタクミにごはんを作りたい」
「鈴音だってごはん炊いてくれてるし、助かってるよ。ありがとう」
「タクミ、鈴音がいて嬉しいか?」

 質問の意図がよくわからないけれど、頷いて頭を撫でてやった。それだけで鈴音は嬉しそうに笑うから、なんというか、お手軽だけど可愛いなあと思う。実際のところ、鈴音がうちに来て、出費としてはかなり痛いけれど、以前より心は穏やかになった気がするし。今の暮らしは悪くない。

「今日は何してたの?」

 手を洗って、おかずを食べる分だけ皿によそって温めると、鈴音は茶碗にごはんを盛ってくれる。

「テレビ見てた。面白いんだ」

 事務所でテレビというものを知ってから、随分とはまっているらしい。僕はあまり見ないから、よくわからないけれど、日中にやっている過去のドラマの再放送を見ていたようだ。なんにせよ、退屈しないで過ごせていたのならよかった。
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