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4.君と繋いだ手を離したくなかった
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どうやら鈴音の気に入る基準は動きやすさと涼しさのようだ。少なくともこのショートパンツは絶対に買うことになるだろう。今回も意見を求められることはなく、ふたりは試着室の向こうへ消えていった。僕がここで待っている意味はあるのだろうか。これなら予算だけ決めて、ふたりで必要なものを買ってもらったほうがよいのではないだろうかという気になってくる。
「鈴音ちゃん、すごく可愛いわ」
「待って、これなんかいやだ。梨花、開けるな」
「えー? こんなに可愛いんだから工藤君にも見せてあげようよ」
そんなふたりの声とどたどたと騒がしい音がして、店員から冷めた視線を向けられる。申し訳なさと気まずさに頭を下げていると、カーテンが開いた。シフォン地の黒いワンピースを着せられた鈴音は、僕と目が合うと恥ずかしそうに顔を背けた。
「工藤君の好きな黒で。大人っぽくていいでしょ」
「これ、なんかお尻がすーすーしていやだ」
スカートの裾を押さえるようにして鈴音はそう言った。今朝は裸でも平気だったというのに不思議なものだ。透け感のある素材のおかげか、全身黒でも涼しげに見える。それに、鈴音の白い肌が際立って、綺麗だと思った。
「工藤君、この服どう思う? こういう服も一枚くらい持っておくといいと思うんだけど」
「えっ……いいと思うよ。似合ってるし」
突然話を振られて驚いたけれど、思ったままを口にする。
鈴音は出てきてからずっと俯いていて、目が合わない。よく見ると、鈴音の耳は真っ赤に染まっていた。梨花さんは大体買うものの目星がついたから、と言って手を振りながらカーテンを閉めた。閉まる直前、こちらを窺うように顔を上げた鈴音と目が合った。恥ずかしさからか頬を桃色に染め、目を潤ませていた鈴音を見て、僕までその熱が伝染したかのようにかあっと顔が熱くなった。
帰り道は、行きの道中でした約束を覚えていたのか、鈴音は僕の手をそっと握って静かに隣を歩いてくれていた。走り回ったりしないのであれば、手を繋がなくたってよかったのだけど、なんだか離したくもなくて、その手を優しく握り返した。
「鈴音ちゃん、すごく可愛いわ」
「待って、これなんかいやだ。梨花、開けるな」
「えー? こんなに可愛いんだから工藤君にも見せてあげようよ」
そんなふたりの声とどたどたと騒がしい音がして、店員から冷めた視線を向けられる。申し訳なさと気まずさに頭を下げていると、カーテンが開いた。シフォン地の黒いワンピースを着せられた鈴音は、僕と目が合うと恥ずかしそうに顔を背けた。
「工藤君の好きな黒で。大人っぽくていいでしょ」
「これ、なんかお尻がすーすーしていやだ」
スカートの裾を押さえるようにして鈴音はそう言った。今朝は裸でも平気だったというのに不思議なものだ。透け感のある素材のおかげか、全身黒でも涼しげに見える。それに、鈴音の白い肌が際立って、綺麗だと思った。
「工藤君、この服どう思う? こういう服も一枚くらい持っておくといいと思うんだけど」
「えっ……いいと思うよ。似合ってるし」
突然話を振られて驚いたけれど、思ったままを口にする。
鈴音は出てきてからずっと俯いていて、目が合わない。よく見ると、鈴音の耳は真っ赤に染まっていた。梨花さんは大体買うものの目星がついたから、と言って手を振りながらカーテンを閉めた。閉まる直前、こちらを窺うように顔を上げた鈴音と目が合った。恥ずかしさからか頬を桃色に染め、目を潤ませていた鈴音を見て、僕までその熱が伝染したかのようにかあっと顔が熱くなった。
帰り道は、行きの道中でした約束を覚えていたのか、鈴音は僕の手をそっと握って静かに隣を歩いてくれていた。走り回ったりしないのであれば、手を繋がなくたってよかったのだけど、なんだか離したくもなくて、その手を優しく握り返した。
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