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4.君と繋いだ手を離したくなかった
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それから梨花さんに連れられてファストファッションの店に入った。ハンガーラックにカラフルな服がずらりとかけられていて、圧倒される。近寄っておそるおそる値札を裏返すと、たしかに安く、安堵した。
ぼーっと突っ立っている鈴音に次々と服をあてがう梨花さん。ぶつぶつとああでもない、こうでもないと呟きながら、数着に一着のペースでカゴに服を突っ込んでいく。安いからといって、そんなに大量には買えそうにないのに、という悲鳴を何度も飲み込んで、その様子を見守った。
「よし、じゃあ鈴音ちゃん試着しに行こうか」
「しちゃく?」
「着てみて一番可愛い服を買うのよ。工藤君は試着室の前で待ってて」
ふたりは仲良くひとつの試着室に入っていった。閉ざされたカーテンの前でぼんやりと立ち尽くす。
しばらくすると、きゃあきゃあと楽しそうな声が聞こえてきた後、しゃっとカーテンが開いた。Tシャツにショートパンツというシンプルな装いだが、野暮ったく感じないのは梨花さんのセンスがいいからか、鈴音のスタイルがいいからか。
「まずは一着目ね。鈴音ちゃんの元気なイメージにピッタリよね」
「タクミ、これは動きやすくていい。涼しいし」
鈴音自身も気に入っているのか、うきうきと楽しそうな表情をしている。先程まで着せていた僕の服がいかに鈴音の魅力を奪っていたかがわかる。特に意見を求められることもなく、梨花さんは試着室のカーテンを閉めた。またしばらくかかるだろうと気を抜いていたら、意外とすぐに出てきた。
「さっきのショートパンツに、ブラウスを合わせても可愛いでしょ」
梨花さんの説明でトップスだけが変わっていたことに気づく。首元にフリルをあしらった白いブラウスで、女の子らしくて可愛らしいと思った。
「タクミ、これも涼しくていい」
ぼーっと突っ立っている鈴音に次々と服をあてがう梨花さん。ぶつぶつとああでもない、こうでもないと呟きながら、数着に一着のペースでカゴに服を突っ込んでいく。安いからといって、そんなに大量には買えそうにないのに、という悲鳴を何度も飲み込んで、その様子を見守った。
「よし、じゃあ鈴音ちゃん試着しに行こうか」
「しちゃく?」
「着てみて一番可愛い服を買うのよ。工藤君は試着室の前で待ってて」
ふたりは仲良くひとつの試着室に入っていった。閉ざされたカーテンの前でぼんやりと立ち尽くす。
しばらくすると、きゃあきゃあと楽しそうな声が聞こえてきた後、しゃっとカーテンが開いた。Tシャツにショートパンツというシンプルな装いだが、野暮ったく感じないのは梨花さんのセンスがいいからか、鈴音のスタイルがいいからか。
「まずは一着目ね。鈴音ちゃんの元気なイメージにピッタリよね」
「タクミ、これは動きやすくていい。涼しいし」
鈴音自身も気に入っているのか、うきうきと楽しそうな表情をしている。先程まで着せていた僕の服がいかに鈴音の魅力を奪っていたかがわかる。特に意見を求められることもなく、梨花さんは試着室のカーテンを閉めた。またしばらくかかるだろうと気を抜いていたら、意外とすぐに出てきた。
「さっきのショートパンツに、ブラウスを合わせても可愛いでしょ」
梨花さんの説明でトップスだけが変わっていたことに気づく。首元にフリルをあしらった白いブラウスで、女の子らしくて可愛らしいと思った。
「タクミ、これも涼しくていい」
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