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4.君と繋いだ手を離したくなかった
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「鈴音、僕がお世話になっている職場の人の娘さん。梨花さんだよ」
梨花さんは鈴音の顔を覗き込んだ。鈴音はびくりと動いて、僕のシャツの裾を握ってくる。ふたりでいるときとはまるで違うその態度に笑ってしまう。
「へえー、彼女、めちゃくちゃ可愛いじゃん。工藤君、意外とやるのね。鈴音ちゃん、よろしくね」
梨花さんはにこりと笑いながら鈴音に右手を差し出した。鈴音は黙ったまま、僕の表情を窺うように見上げてくる。
「ごめん、なんか人見知りしてるみたい。とにかく、僕も鈴音も料理はさっぱりだから、すごく助かったよ」
「それなら良かった。必要だったらいつでも言ってね。鈴音ちゃん連れてごはん食べに来てもいいし。じゃあ、デート邪魔したら悪いから行くね」
「梨花さん!」
小さく手を挙げて立ち去ろうとした背中に、縋るように声をかけていた。
「もし時間あるようだったら、鈴音の服買うの付き合ってくれない? 僕じゃよくわからなくて。あ、でも、無理だったら断ってくれていいから」
「え、いいよ。楽しそう。鈴音ちゃん可愛いから色々着せてみたくなっちゃう」
「助かるよ。鈴音、全然服持ってなくて……なんなら下着も僕の……なんでもない。今のは忘れて」
余計なことまで言いそうになり、慌てて口を噤む。最後の、聞こえてないよな? と心配になったけれど、梨花さんは変わらず楽しそうに笑っている。
「なるほどなるほど。ふふ、そういうことなら任せて」
梨花さんは僕と鈴音の手首を掴んで颯爽と歩き始めた。鈴音のほうを見ると、助けを求めるような顔で僕を見ていた。それがなんだか可愛くて、僕は必死で笑いを堪えた。
けれど、笑っていられたのはそのときまでだった。まずはここから、と連れてこられたのは、ランジェリーショップだったのだ。やっぱり、さっきの話は聞こえていたのかもしれないと悟り、恥ずかしさで消えたくなる。
そんな僕に追い打ちをかけるように、彼氏の好みが聞きたいから、と無理やり店内に引きずり込まれてしまった。彼女じゃなくて、ただの幼馴染という設定にしておけばよかったと後悔したけれど、もう遅い。
ただでさえ男がランジェリーショップにいるだけで浮いているのに、女の子ふたりと一緒にいるとなれば、好奇の視線を浴びることになった。どこに視点を合わせればいいのかわからなくて、梨花さんの鞄を見つめながらついていくことにした。
梨花さんは鈴音の顔を覗き込んだ。鈴音はびくりと動いて、僕のシャツの裾を握ってくる。ふたりでいるときとはまるで違うその態度に笑ってしまう。
「へえー、彼女、めちゃくちゃ可愛いじゃん。工藤君、意外とやるのね。鈴音ちゃん、よろしくね」
梨花さんはにこりと笑いながら鈴音に右手を差し出した。鈴音は黙ったまま、僕の表情を窺うように見上げてくる。
「ごめん、なんか人見知りしてるみたい。とにかく、僕も鈴音も料理はさっぱりだから、すごく助かったよ」
「それなら良かった。必要だったらいつでも言ってね。鈴音ちゃん連れてごはん食べに来てもいいし。じゃあ、デート邪魔したら悪いから行くね」
「梨花さん!」
小さく手を挙げて立ち去ろうとした背中に、縋るように声をかけていた。
「もし時間あるようだったら、鈴音の服買うの付き合ってくれない? 僕じゃよくわからなくて。あ、でも、無理だったら断ってくれていいから」
「え、いいよ。楽しそう。鈴音ちゃん可愛いから色々着せてみたくなっちゃう」
「助かるよ。鈴音、全然服持ってなくて……なんなら下着も僕の……なんでもない。今のは忘れて」
余計なことまで言いそうになり、慌てて口を噤む。最後の、聞こえてないよな? と心配になったけれど、梨花さんは変わらず楽しそうに笑っている。
「なるほどなるほど。ふふ、そういうことなら任せて」
梨花さんは僕と鈴音の手首を掴んで颯爽と歩き始めた。鈴音のほうを見ると、助けを求めるような顔で僕を見ていた。それがなんだか可愛くて、僕は必死で笑いを堪えた。
けれど、笑っていられたのはそのときまでだった。まずはここから、と連れてこられたのは、ランジェリーショップだったのだ。やっぱり、さっきの話は聞こえていたのかもしれないと悟り、恥ずかしさで消えたくなる。
そんな僕に追い打ちをかけるように、彼氏の好みが聞きたいから、と無理やり店内に引きずり込まれてしまった。彼女じゃなくて、ただの幼馴染という設定にしておけばよかったと後悔したけれど、もう遅い。
ただでさえ男がランジェリーショップにいるだけで浮いているのに、女の子ふたりと一緒にいるとなれば、好奇の視線を浴びることになった。どこに視点を合わせればいいのかわからなくて、梨花さんの鞄を見つめながらついていくことにした。
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