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プロローグ

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――ちりりん、ちりりん。


 鈴の音が聴こえると、何故だか僕は胸が苦しくなる。心に穴が開いてしまったみたいに、何か大切なものを失った気がするのに、その原因がわからなくて。

 ずっと一人暮らしだったはずの僕の部屋にも、知らない食器があるとか、と暮らしていた気配がそこかしこに残っている。それに、毎晩見るこの夢は、僕に何かを伝えようとしている気がする。

――ちりりん、ちりりん。

『タクミ、大好きだ』

 長い黒髪を赤いリボンで結わえた女の子が、僕に向かってそう言う。だけど、その女の子の顔はぼやけたようになってよく見えないし、その子の名前も思い出せない。

 だけど、大切な存在だったに違いない。
 朝、目が覚めると涙が止まらないから。
 君は誰? どうして僕を置いていなくなったの?
 どうして僕は君のことを忘れてしまったの?
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