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役所にて

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「婚約破棄したらすぐ結婚式になるのかな?」

「そうです。おなかが目立つとドレスが」と答えると

「それなら婚約破棄の書類を作ってあげよう。素人が作ると抜けがあるし。本職に頼むと金がかかるからね」

「忙しいのに悪いですよ」

「そんなことない。新しい命に罪はないからね」

「「今日来てよかったなぁ。こんなおもしろ・・酷い事が」」「「「まったくなんてことだ」」」「「どこのどいつ」」「「「静かにすぐにわかるから」」」木霊が騒ぐ日だ。


「どなたか証人として署名を」と係員が言うと

「僭越ながらわたしが」と一人進み出て来た。

「よろしければわたしも」ともう一人進み出て来た。

「はい、マリアさんこれで大丈夫あとは相手が署名すれば大丈夫。あなたは自由になります。もう一枚で彼らは幸せになりますね」


「ありがとうございます。ご親切に」と言いながら書類を二枚受け取り、証人になってくれた人。まわりで見守ってくれた人たちにもお礼を言うと涙がこぼれないように目を大きく見開いた。



役所を出ると立ち止まり、ハンカチを目に軽く目にあてた。やりすぎはよくないから一度だけ。



わたしは戻るとショーンを探して書類二枚にサインを貰った。


「マリア、マリア。いないのかい?」とお祖父様の部屋から呼ばれた。

行くと部屋はごったがえしていた。


「おまえ、遺産の事でなにか聞いてる?」とシリウス夫人が言うとわたしが答えるより先に

「うそついてもわかるんだからね」とマギーが睨みつけて来た。


「えーーと、マーチンさんとか」

「それはわかってるよ。それ以外に」

「なら聞いてません」


「あっ」とデイジーが言ったが、本人はあわてて口を押さえている。

「なんでもない」と言うも全員がそこに行った。

「銀行カードだ。全員分ある」とショーンが言いカードを手にとった。

「ここに入金してるってことかな」とデイジーが言った時にはショーンが部屋を出ていた。

「確認して来るからここ片付けて・・・・いやなにか盗るかも・・・・もう帰って」とシリウス夫人は早口で言うと

さきに出た家族を追いかけては小走りで出て行った。



わたしは素直に自宅に帰り、自分の部屋に引っ込むと、新しく結婚式のベールを編み始めた。



手を動かしながら自分の持ち物を見て持っていくものを選んで行った。計画としては家を出るまえにホテルを借りて荷物を少しづつ移動。その日にホテルの荷物を持って乗合馬車に。それから駅のある町に移動して列車に乗って・・・・列車はすぐに出るのに乗ろう。だから行き先は未定。

どこに行こうって考えるのってすごく楽しいと気づいた。

家以外、どこもいい場所なのは確かだけど・・・・






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