ある王国の王室の物語

朝山みどり

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夜会 1

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迎えにきたアンドリューと一緒に王城に着いた。待合室はすでに大勢待っていた。

アンドリューは「いちいち名前を覚える必要はないんだけどね」と言いながらもそれぞれの名前を教えてくれた。

公爵位は最後の入場らしいが、お祖父様は、座って友達と話したいからと先に会場に入った。

四公爵程の身分になるとそれが出来るのだそうだ。

わたしとアンドリューはうわさの愛人同士ということで注目されていたので、適度にいちゃいちゃした。


入口付近で楽しげな声がしている。みると女性が二人とエスコートの二人がいた。
女性は互いにしっと口に手を当てるがついつい声が大きくなるようだ。
仲良しって言うのがよくわかる。四人ともすごく楽しそうだ。

二人は色違いのおそろいのドレスを着ている。エスコートの男性も調和した装いですごく感じがいい。

はしゃぐ二人をやさしく見守る様子もちょっとうらやましい。

やがてわたしの名前が呼ばれて、会場にはいった。

リンバロスト子爵なんて知られてない名前にちょっと注目されてしまった。


程なく王室メンバーが入場して王太子の婚約が発表された。そしてシャーロットが紹介された。相変わらずカッテシーが安定してない、教育は行われていないのだろうか?

二人が最初にダンスを披露する。それをわたしたちは見守った。

王族、貴族へのお披露目だ。わたしたちは静かに見守った。いや、失敗しろと念を送るものもいるだろう。ドレスや宝石の品定めもしているだろう。

全員の目が二人を追っていた。その時、空気が揺らめいた。二人を追っていた視線が剥がれていくのを感じた。


公爵四人が会場の入口に向かって手を振っていたのだ。無言で満面の笑みで。

王太子たちのダンスより注目を集めてしまった。

王太子たちのリズムが狂った。

ダンスが終わるとすぐに拍手が・・・・・そう、終わるのを待っていたと言わんばかりに・・・・・公爵四人が立ち上がって・・・・

本来ならばすぐに次の演奏が始まる所だが・・・・・給仕が急いで会場入口あたりから青年を公爵たちのテーブルに案内した。手を取らんばかりの給仕の動作に焦りが伺えた。


隣のアンドリューが笑いをこらえて体を震わせていた。わたしはその笑いの発作が移らないよう隅にある料理に気持ちを向けた。

彼が公爵たちのそばに行くとよく来たって感じで四人が背中を叩いている。

青年をテーブルに座らせると公爵たちは楽団を見た。許可を与えるように。

すぐに演奏が始まり、フロアで不安そうに立っていた王太子とシャーロットは二曲目を踊り始め、高位貴族たちがそれに続いた。


王族のダンスは続いているが注目は公爵たちが集めている。

これって意地悪だよね。とても効果的だ。



アンドリューに連れられて公爵たちのところへ行く。視線が刺さってくるよ。愛人登場だよ。

あの青年はバージルと言い辺境伯の三男らしい。ダンスを申し込まれた。


「踊っておいでよ。僕はジェラルドを待っていたいから」とアンドリューがウインクをして来た。
正直、初めてのダンスを知らない男性とはと柄にもなくためらっていたら


彼はにっこり笑うと

「迎えに来たんだ」と言った。

胸がときめいた。だってこの部屋で一番目立つ彼の微笑みだよ・・・・『いや、そうじゃない。そう、あの子だ。あちらは覚えているよね。迎えに来たんだよね』

彼とはすごく踊りやすかった。彼の微笑みをみているとそれだけで魅せられてステップのことなど忘れてしまった。

音楽が終わったとき、ちょっと残念だった。彼がホールドをとかず次の音楽が始まったときはうれしかった。

踊り終わってアンドリューの所に戻ると、ジェラルドが合流していた。

「エリザベートこんばんは」
「ジェラルド、こんばんは」と挨拶を交わす。

「久しぶり、ジェラルド」とバージルが言った。

「三人は知り合いなの?」
「うん、学院で知り合った」
と三人が微笑みを交わした。



これって見目麗しい男性三人に囲まれたそれなり令嬢って図だよね。視線が痛いが快感だ。



その後、化粧室に行く途中で変な女たちに絡まれている先ほどの二人を見かけたので、

「こんばんは、おひさしぶり、お祖父様が会いたがっているの。ご迷惑でなかったら」

と声をかけたら、ちょっとびっくりしたみたいだけど

「ひ、ひさしぶり」とかえってきたので、並んで歩きながら

「びっくりさせた?お話したかったの。待合室で皆さんが楽しそうで」

「見てたんですか?恥ずかしい」

「わたしはエリザベート・リンバロスト」

と自分から名乗って、二人に腕を絡めるとやや、引きずりながら連行した。


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