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17 勇之進を見習え
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僕は奴隷の件で面倒なことになるのがいやなので、一晩泊まったら別の町に移動した。
この町への滞在は偶然だったが、この町は勇之進が気に言って長く過ごした町だった。
魔獣と瘴気は国境に関係ないということで、勇之進は進んで国外にも援助の手を差し伸べていたのだ。
そのためこの町の教会にはあの神託板のレプリカが飾られ、図書館にも関連の書物がたくさん置いてあった。
僕は冒険者として過ごしならが図書館に通い、勇之進の事を知るようにした。
勇之進は四月朔日一族だった。そして僕もそうあるように育てられていたのだ。
四月朔日は確かに能力、財力に恵まれている。それは勇之進の時代も僕の時代も同じだ。そして僕たちはその能力を人助けに使う一族なのだ。
僕は王宮がいやだとか前世がどうだったとか、そんなくだらない理由で助けを求めるものを見捨てようとしていた。四月朔日一族として恥ずべき行為だった。
先ず、身近な問題だ。このあたりに瘴気がないか調べよう。見つかれば浄化すればいいのだ。僕は神子の能力を持つ四月朔日なのだ。
図書館にある記録によれば、魔獣に纏わりついていた黒いもやもやが瘴気だ。瘴気は大地から湧き出て魔獣や人間にも影響を与える。
それで僕は薬草採取の範囲を広げていった。だんだん出てくる魔獣が強くなり薬草採取は難しくなっていった。
魔獣は黒いモヤモヤを身にまとわせていた。僕は引き返すべきだと思いつつももう少し、もう少しと歩みを進めた。
するとこの森の奥であるものを見つけた。
地面から黒いネバネバしたものが染み出ている。その黒いものから黒い霧がでてきている。
霧は空に消えずに地上の低いところに溜まっている。これが瘴気でいいのだろう。記録で読んだものより小さいが間違いない。瘴気の影響だろうか、空気が重く体も重い。
僕は浄化しようとしたが、集中しないと難しい。こうひっきりなしに魔獣が出てくるのでは集中できない。僕は浄化を諦めて引き返すことにした。
ギルドに行くとロビーがいつになく騒がしかった。
『アレン』思わずその名を呼んだ。いや違う・・・
いつになく受付も外に出ている。アレンと同じ、いや、少し青みがかった銀髪と青色の眼の男が、皆に取り囲まれていた。
一瞬、目が合った気がした。その目を追いすがりたかったが
「イズミさん、お帰りなさい。薬草ありますか?」と受付のケティから声を掛けられた。
「ありますよ、今日は少し少ないけど」
「実は薬師からの問い合わせが多くて・・・」
「問い合わせ?」
「はい、状態が良いので・・・」
「そうなんですか?」
ケティに薬草を渡し、そのまま黒森兎を出した。
お金を受け取り賑わうギルドを出たが、あの男にまた会いたいと思った。
それからは採集しながら瘴気を探すようにした。
歩きながら魔獣を狩り、腰にぶら下げた。瘴気を探して僕はそうして森を歩き回った。
空気の重さから瘴気の存在を確信したが、同時にこれは小さいかもと思った。
やってやるぞと気負いながら歩みを進めると瘴気があった。この大きさならなんとかできると思った。できればすぐに浄化したい。
僕は瘴気の周りをぐるりと回りながら、魔獣を退治した。それから、瘴気の所へ戻った。
僕は両手をおおきなボールを持っているように構えると両手に魔力を込めた。ボール状に形作られた魔力を網の形に成形した。それを瘴気の上にふわりとかけた。
瘴気は網から逃れるように伸びたり、縮んだりした。僕は逃してなるものかと網に魔力を足した。
どれくらいの時間が経ったのか。瘴気は消えた。それから網がふるふるしながら消えた。
僕は詰めていた息を吐いた。呼吸を止めるのは悪手だ。次からは気を付けよう。
僕は手近な石に座ると一息ついて水を飲んだ。その日はギルドによらずに帰宅した。
ケティと薬草のことを話していると、あの男がギルドにはいって来た。僕は受付を空けるためにケティとの話を終わらせようと思ったが、ケティはあの男に呼びかけた。
「エドワルドさん、良いところにこちらがお話したイズミさんです。まだイズミさんに説明していないのですが、一緒によろしいですか?」
そういうとケティは事情を飲み込めない僕を、奥の部屋へ案内した。
僕とあの彼エドワルドに椅子をすすめるとケティは出ていき男と一緒に戻ってきた。
「こちら、薬師ギルドのタブレさんです」と僕に紹介するとケティはお茶を配って部屋を出て行った。
「イズミさん、いつも良質な薬草をありがとうございます」とタブレさんの話は始まった。
話と言うのは僕が薬草採取に専念できるように護衛を付けたいというものだった。薬師ギルドからの依頼だということで、護衛としてこのエドワルドさんを付けたいというものだった。エドワルドさんの腕前はギルドが保証するということだ。
エドワルドさんは先にこの話を聞いていたようで、協力するつもりだったそうだ。
だけれども僕は戸惑ってしまって返事を待ってもらうよう頼んだ。
エドワルドさんは僕の言葉を聞くとこう言い出した。
「それならイズミさん、一緒に食事でもどうか?俺と一緒に森に行ってもいいと親しくなって信頼してもらえればうれしい。それでいい回復薬ができればいろいろありがたいしな」
僕はとまどいながらもうなづいた。
僕は奴隷の件で面倒なことになるのがいやなので、一晩泊まったら別の町に移動した。
この町への滞在は偶然だったが、この町は勇之進が気に言って長く過ごした町だった。
魔獣と瘴気は国境に関係ないということで、勇之進は進んで国外にも援助の手を差し伸べていたのだ。
そのためこの町の教会にはあの神託板のレプリカが飾られ、図書館にも関連の書物がたくさん置いてあった。
僕は冒険者として過ごしならが図書館に通い、勇之進の事を知るようにした。
勇之進は四月朔日一族だった。そして僕もそうあるように育てられていたのだ。
四月朔日は確かに能力、財力に恵まれている。それは勇之進の時代も僕の時代も同じだ。そして僕たちはその能力を人助けに使う一族なのだ。
僕は王宮がいやだとか前世がどうだったとか、そんなくだらない理由で助けを求めるものを見捨てようとしていた。四月朔日一族として恥ずべき行為だった。
先ず、身近な問題だ。このあたりに瘴気がないか調べよう。見つかれば浄化すればいいのだ。僕は神子の能力を持つ四月朔日なのだ。
図書館にある記録によれば、魔獣に纏わりついていた黒いもやもやが瘴気だ。瘴気は大地から湧き出て魔獣や人間にも影響を与える。
それで僕は薬草採取の範囲を広げていった。だんだん出てくる魔獣が強くなり薬草採取は難しくなっていった。
魔獣は黒いモヤモヤを身にまとわせていた。僕は引き返すべきだと思いつつももう少し、もう少しと歩みを進めた。
するとこの森の奥であるものを見つけた。
地面から黒いネバネバしたものが染み出ている。その黒いものから黒い霧がでてきている。
霧は空に消えずに地上の低いところに溜まっている。これが瘴気でいいのだろう。記録で読んだものより小さいが間違いない。瘴気の影響だろうか、空気が重く体も重い。
僕は浄化しようとしたが、集中しないと難しい。こうひっきりなしに魔獣が出てくるのでは集中できない。僕は浄化を諦めて引き返すことにした。
ギルドに行くとロビーがいつになく騒がしかった。
『アレン』思わずその名を呼んだ。いや違う・・・
いつになく受付も外に出ている。アレンと同じ、いや、少し青みがかった銀髪と青色の眼の男が、皆に取り囲まれていた。
一瞬、目が合った気がした。その目を追いすがりたかったが
「イズミさん、お帰りなさい。薬草ありますか?」と受付のケティから声を掛けられた。
「ありますよ、今日は少し少ないけど」
「実は薬師からの問い合わせが多くて・・・」
「問い合わせ?」
「はい、状態が良いので・・・」
「そうなんですか?」
ケティに薬草を渡し、そのまま黒森兎を出した。
お金を受け取り賑わうギルドを出たが、あの男にまた会いたいと思った。
それからは採集しながら瘴気を探すようにした。
歩きながら魔獣を狩り、腰にぶら下げた。瘴気を探して僕はそうして森を歩き回った。
空気の重さから瘴気の存在を確信したが、同時にこれは小さいかもと思った。
やってやるぞと気負いながら歩みを進めると瘴気があった。この大きさならなんとかできると思った。できればすぐに浄化したい。
僕は瘴気の周りをぐるりと回りながら、魔獣を退治した。それから、瘴気の所へ戻った。
僕は両手をおおきなボールを持っているように構えると両手に魔力を込めた。ボール状に形作られた魔力を網の形に成形した。それを瘴気の上にふわりとかけた。
瘴気は網から逃れるように伸びたり、縮んだりした。僕は逃してなるものかと網に魔力を足した。
どれくらいの時間が経ったのか。瘴気は消えた。それから網がふるふるしながら消えた。
僕は詰めていた息を吐いた。呼吸を止めるのは悪手だ。次からは気を付けよう。
僕は手近な石に座ると一息ついて水を飲んだ。その日はギルドによらずに帰宅した。
ケティと薬草のことを話していると、あの男がギルドにはいって来た。僕は受付を空けるためにケティとの話を終わらせようと思ったが、ケティはあの男に呼びかけた。
「エドワルドさん、良いところにこちらがお話したイズミさんです。まだイズミさんに説明していないのですが、一緒によろしいですか?」
そういうとケティは事情を飲み込めない僕を、奥の部屋へ案内した。
僕とあの彼エドワルドに椅子をすすめるとケティは出ていき男と一緒に戻ってきた。
「こちら、薬師ギルドのタブレさんです」と僕に紹介するとケティはお茶を配って部屋を出て行った。
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話と言うのは僕が薬草採取に専念できるように護衛を付けたいというものだった。薬師ギルドからの依頼だということで、護衛としてこのエドワルドさんを付けたいというものだった。エドワルドさんの腕前はギルドが保証するということだ。
エドワルドさんは先にこの話を聞いていたようで、協力するつもりだったそうだ。
だけれども僕は戸惑ってしまって返事を待ってもらうよう頼んだ。
エドワルドさんは僕の言葉を聞くとこう言い出した。
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