15 / 19
15 国を出る
しおりを挟む
馬車の旅もそろそろ終わりに近づいた。イズミはとりあえず、国境を越えることにして、馬車を乗り継いで行った。想定外は馬車の振動だった。尻を直撃してきたのだ。回復魔法を使えることに感謝、感謝だった。
問題はそれ以外にもあった。国境を越えるにあたって気がかりなうわさを聞いたのだ。どう対策すればいいか、この二・三日ずっと考えている。
うわさと言うのは食料を買い込んでいた市場で聞き込んだものだ。
なんでもおえらい貴族様が国境の町に居座って冒険者の顔を確認しているというのだ。
顔をじっくり見るだけでなにもしないのだが、なんともいどこちの悪い気色悪いことだというのだ。
これって、もしかしてるかもと思い当たったイズミは悩んでいるのだ。
馬車が休憩だと止まった。腰をさすりながら馬車を降りたイズミは体をほぐす為に軽く歩き回っていたが
「そいつを捕まえてくれ」と大声を聞いた。なぜかその声に従い足を突き出した。
男は破れた服を着て、裸足だった。
男はもんどりうって転んだ。
イズミは男に近づくと手を後ろでひねりあげて拘束した。
「兄さんありがとよ。こいつ逃げ出しやがって」と悪人面の男が軽く言った。
「たいしたことじゃないが、こいつはその?どうして?」イズミは罪悪感に襲われたのだ。
「知らないのか。奴隷だ」
「まだ奴隷はたくさんいるのか?」
「まぁな、相棒が怪我しちまって手が足りないくてな」
「そうか、金が欲しいんだ。雇ってくれ」閃いた考えが形をとる前にイズミの口から言葉がこぼれた。
「そんなに出せないぜ」
「贅沢は言わない」
「国境を越えたら引き継ぐから、そこまでいいか?」
「助かる。そいじゃ馬車を断ってくる」とイズミの頭は高速で回転していた。
小さな出入り口のついた箱のような馬車の中に奴隷が十人程、乗っていた。手と足に枷を付けられて下を向いて座っている。
先ほどの男を放り込むために戸が開けられても誰も反応しなかった。
男を放り込むと戸を閉めて鍵が掛けられた。
イズミと男は御者席に並んで座った。
「俺はフールだ」とイズミは名乗った。
「俺はライヤ。よろしくな」
道中、イズミはライヤに奴隷商売について教わった。
最近、この国の田舎は土地が荒れてきて、税金を払う為に身売りする者が増えてきて奴隷商人のいい稼ぎ場所になってきたということで、ライヤもこの機会に奴隷商人を始めたらしい。
奴隷契約の方法、闇で儲ける方法、なぜかぺらぺら教えてくれる。
イズミは話を聞きながら、計画を練って行った。
その日の野営地は街道の脇の広場で先客が二組いた。
ライヤは如才なく挨拶をすると焚き火を始めた。大鍋に湯を沸かすと干し肉と野菜を煮てスープを作った。
馬車の裏手に奴隷を並べると、リルに命じてスープを配らせた。カビのはえたパンを出すとそれも配らせた。
奴隷たちは臭っていた。イズミが顔をしかめているのを見てライヤは笑っていた。
「御貴族様に奴隷の世話は大変ですね」と言うので
「俺が貴族と思う?」
「誰が見ても貴族だろ。結婚がいやで逃げ出したってところだな。相手はどっちか?男?女?」
「確かに逃げ出したが・・・・」
「まぁ俺らも飯食おうか」とスープに干し肉と野菜を足した。
「奴隷と同じ飯だが・・・・ちょっと待ってろ、肉が柔《やわ》くなるまで」
スープと一緒に渡されたパンにカビは、生えていなかった。
「奴隷はどこに売るのだ?」
「国をでたら元締めがいて、めぼしい者を引き取ってくれる。残った者は・・・そうだな・・・ダチがやっている娼館に引き取ってもらうんだ。世の中にはとんでもない趣味の人間がいるからな・・・・なんというか・・・・俺も一発当てて伸し上がりたいよ」
「国をどうやって出るんだ?」
「そこはそれ・・・どこでも悪い奴はいるし・・・奴隷の乗った馬車を検査するやつもいないさ・・・臭いしよ」
「なるほど・・・・」
夜の見張りは大部分イズミがやった。そうした野営を重ねて明日は国境を越えるという最後の野営をしているときの事だ。
「おらぁ、フールを仲間にしてよかった」そういいながら抱きついてきたライヤに腕輪を付けられてしまった。
「これは・・・」
「すまんな、仲間にするには上玉すぎてな・・・途中であんたを見た元締めの命令なんだよ・・・・元締めあんたを気に入ったんだ」
「・・・・・」
「俺があんたの主人だ・・・・」と言いながら腕輪に手を重ね呪文を口にしようとしたライヤの腕と自分の腕をリルは切り飛ばした。
「うわーーーー」とのたうち、焚き火に転がり込みまた転がるライヤ。
「・・・・・」声をおさえてイズミは痛みに耐えた。
馬車の中では奴隷たちがライヤの悲鳴を聞いて、恐怖に震えていた。
やがて馬車のドアが開くとフールが立っていた。
「みな、助ける。逃がす・・・・・すまないが見張りを頼む・・・」というとフールは倒れた。
顔をみあわせていた奴隷達だが、一人が恐る恐る外にでた。
焚き火のそばに奴隷商人が転がっていた。片手は肘から先がもう片方は手首がなくなっていた。
不思議と出血は止まっていた。奴隷の男があたりを見回して悲鳴をあげた。
手が三本落ちていたのだ。
男は足かせを忘れて走ろうとして転んだが、這うようにして馬車のところに戻った。男はまわらぬ口で見たことを話した。
問題はそれ以外にもあった。国境を越えるにあたって気がかりなうわさを聞いたのだ。どう対策すればいいか、この二・三日ずっと考えている。
うわさと言うのは食料を買い込んでいた市場で聞き込んだものだ。
なんでもおえらい貴族様が国境の町に居座って冒険者の顔を確認しているというのだ。
顔をじっくり見るだけでなにもしないのだが、なんともいどこちの悪い気色悪いことだというのだ。
これって、もしかしてるかもと思い当たったイズミは悩んでいるのだ。
馬車が休憩だと止まった。腰をさすりながら馬車を降りたイズミは体をほぐす為に軽く歩き回っていたが
「そいつを捕まえてくれ」と大声を聞いた。なぜかその声に従い足を突き出した。
男は破れた服を着て、裸足だった。
男はもんどりうって転んだ。
イズミは男に近づくと手を後ろでひねりあげて拘束した。
「兄さんありがとよ。こいつ逃げ出しやがって」と悪人面の男が軽く言った。
「たいしたことじゃないが、こいつはその?どうして?」イズミは罪悪感に襲われたのだ。
「知らないのか。奴隷だ」
「まだ奴隷はたくさんいるのか?」
「まぁな、相棒が怪我しちまって手が足りないくてな」
「そうか、金が欲しいんだ。雇ってくれ」閃いた考えが形をとる前にイズミの口から言葉がこぼれた。
「そんなに出せないぜ」
「贅沢は言わない」
「国境を越えたら引き継ぐから、そこまでいいか?」
「助かる。そいじゃ馬車を断ってくる」とイズミの頭は高速で回転していた。
小さな出入り口のついた箱のような馬車の中に奴隷が十人程、乗っていた。手と足に枷を付けられて下を向いて座っている。
先ほどの男を放り込むために戸が開けられても誰も反応しなかった。
男を放り込むと戸を閉めて鍵が掛けられた。
イズミと男は御者席に並んで座った。
「俺はフールだ」とイズミは名乗った。
「俺はライヤ。よろしくな」
道中、イズミはライヤに奴隷商売について教わった。
最近、この国の田舎は土地が荒れてきて、税金を払う為に身売りする者が増えてきて奴隷商人のいい稼ぎ場所になってきたということで、ライヤもこの機会に奴隷商人を始めたらしい。
奴隷契約の方法、闇で儲ける方法、なぜかぺらぺら教えてくれる。
イズミは話を聞きながら、計画を練って行った。
その日の野営地は街道の脇の広場で先客が二組いた。
ライヤは如才なく挨拶をすると焚き火を始めた。大鍋に湯を沸かすと干し肉と野菜を煮てスープを作った。
馬車の裏手に奴隷を並べると、リルに命じてスープを配らせた。カビのはえたパンを出すとそれも配らせた。
奴隷たちは臭っていた。イズミが顔をしかめているのを見てライヤは笑っていた。
「御貴族様に奴隷の世話は大変ですね」と言うので
「俺が貴族と思う?」
「誰が見ても貴族だろ。結婚がいやで逃げ出したってところだな。相手はどっちか?男?女?」
「確かに逃げ出したが・・・・」
「まぁ俺らも飯食おうか」とスープに干し肉と野菜を足した。
「奴隷と同じ飯だが・・・・ちょっと待ってろ、肉が柔《やわ》くなるまで」
スープと一緒に渡されたパンにカビは、生えていなかった。
「奴隷はどこに売るのだ?」
「国をでたら元締めがいて、めぼしい者を引き取ってくれる。残った者は・・・そうだな・・・ダチがやっている娼館に引き取ってもらうんだ。世の中にはとんでもない趣味の人間がいるからな・・・・なんというか・・・・俺も一発当てて伸し上がりたいよ」
「国をどうやって出るんだ?」
「そこはそれ・・・どこでも悪い奴はいるし・・・奴隷の乗った馬車を検査するやつもいないさ・・・臭いしよ」
「なるほど・・・・」
夜の見張りは大部分イズミがやった。そうした野営を重ねて明日は国境を越えるという最後の野営をしているときの事だ。
「おらぁ、フールを仲間にしてよかった」そういいながら抱きついてきたライヤに腕輪を付けられてしまった。
「これは・・・」
「すまんな、仲間にするには上玉すぎてな・・・途中であんたを見た元締めの命令なんだよ・・・・元締めあんたを気に入ったんだ」
「・・・・・」
「俺があんたの主人だ・・・・」と言いながら腕輪に手を重ね呪文を口にしようとしたライヤの腕と自分の腕をリルは切り飛ばした。
「うわーーーー」とのたうち、焚き火に転がり込みまた転がるライヤ。
「・・・・・」声をおさえてイズミは痛みに耐えた。
馬車の中では奴隷たちがライヤの悲鳴を聞いて、恐怖に震えていた。
やがて馬車のドアが開くとフールが立っていた。
「みな、助ける。逃がす・・・・・すまないが見張りを頼む・・・」というとフールは倒れた。
顔をみあわせていた奴隷達だが、一人が恐る恐る外にでた。
焚き火のそばに奴隷商人が転がっていた。片手は肘から先がもう片方は手首がなくなっていた。
不思議と出血は止まっていた。奴隷の男があたりを見回して悲鳴をあげた。
手が三本落ちていたのだ。
男は足かせを忘れて走ろうとして転んだが、這うようにして馬車のところに戻った。男はまわらぬ口で見たことを話した。
10
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。


僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる