召喚されたら前世を思い出した

朝山みどり

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04 お披露目

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「イズミ済まないがお披露目にでて欲しい」とアレンがすまなそうに言うと

「僕は断りたいんだけど」とイズミが答えた。

「わかってくれて助かる」とアレンが笑うと

「これのどこがわかってるのよ」とイズミが頬をふくらませた。


「まぁ王宮の政治もあってな・・・それに召喚されたのが二人って言うのが隠せなくてな。それでもう一人を見たいっていう声を無視できなくて・・・・特に外国からの声を・・・・」

「それって見世物ってこと?」

「そうなる。ほんとすまない」とアレンが少し頭を下げると

「神子じゃないのに異世界から来たってことで見たいの?」とイズミが不安そうに聞くと

「そう・・・見たいそうだ。異世界の話を聞きたいそうだ」

「ワタヌキから聞けばいいだろ」と口を尖らせる。

「それが、お前の黒髪を見たいと・・・」

「はーーーなんだよ、おかしいでしょ。黒髪っているでしょ。この世界にも」

「イズミの黒髪を見たいそうだ。神子は金髪だから・・・・最近根元が黒くなってきてるけど」

「それだったら、ワタヌキは待てば黒髪になるよ。あれは髪を金色に染めてるから。だから根元が黒くなってきてるんだよ」

「髪を染める?そんな技術があるのか?」

「うん、よく皆染めてるよ」

「そうなのか?向こうでは髪を染めるってことがあって神子は金色に染めていた。で伸びてきた部分が自分の元の色の黒になってきてるってことか」

「だから、黒髪は神子でまかなえる」とイズミは得意げに言った。


「こっちでは髪色は変えられないの?」

「無理だな」

「魔道具でも?」

「一般的には売られてないな」

「黒髪の人を異世界人とか言って披露すれば?」

「いや、いろいろ理屈をこねてもな、無理だ。お前を見たいってことだ。あきらめろ」

「神子の髪は黒って決まってる?」

「いや、過去には金髪とか茶色とかいたから黒と神子は結びつかない」

「ならいいけど。お披露目したら結びつくよね」

「そこもすまない」

「まぁ城をでれば平民は僕の顔を知らないから少しは平気かな」

「そうだな」とアレンが顔を曇らせる。

「まぁいいよ」とイズミが返事をした。断ることができないと最初からわかってる。不満をぶつけたいだけだった。

「そうか・・・・・このまえの店でお披露目の服を頼んである」

「最初からそのつもりだったんだ」

「悪い、謝る。だがほかに普段着も作った」

「今の服で充分なのに」

「あれは俺の子供の頃のお古だぞ」

「充分だと思うけど枚数もたくさん貰ってるし・・・てか子供・・・」とイズミが呟く。

「イズミがそう思っても違う場合もある。王宮にいる間は言うとおりにして貰いたい、それが安全でもあるしな」

「わかった。それでそのお披露目っていつ?」

「来週だ。イズミは隅に立っているだけでいいし、そばにわたしがいるから安心していい」

すぐお城をでたほうが正解だったなとイズミは思いながらデザートを食べ終わった。






イズミは部屋で縫いぐるみを動かしていた。なんだかすごく相性がいいようで、うさぎはイズミが思ったより可愛い動作をする。

イメージはカステラのCMだったが、それより上手になったし短い手足と長い耳がなにをやっても可愛いポーズになる。

試しに自分を動かしてみたが、可愛くなかったのでやめた。

これを応用すれば体術でもっと戦えそうだがやってみると腰がグキっとなったのであわてて回復をかけた。

うさぎさんを動かしながらアレンからの課題をどうしたものかと考えていた。

王宮もこの国もどうでもいいが、アレンには借りがあるので真面目にやるつもりなのだ。

それは日本について話すことだ。なんでもいいと言われているがなにを話せばいいのだろう。

こんなことなら、アレンに拾われるのではなくて追い出されたほうが良かったような気がして来た。




神子の平民へのお披露目は城のバルコニーでの挨拶だ。国王が紹介して派手な音楽があり、神子が挨拶をして手を振るのだ。

神子が挨拶をして手を振ると広場の観客が大いに湧いた。

イズミは隅の方に立っていたが、紹介されることもなく手を振ることもなかった。

午後は出席者がそこかしこのテーブルで歓談するといった形式だった。

イズミはアレンに付き添われて異世界人オタクの相手をしていた。


「あの女性が足をだしているというのは本当ですか?」

「はい、本当です。男性も出していますよ」

「それは、ちょっと行ってみたいです」

「わたしも行きたいです」

「楽しいと思いますよ」とイズミが言った。

「わたし、皆さんに紹介したいものがあります」そういうと給仕に合図をした。

盆にナプキンで包んだものを乗せてやってきた。

イズミはそのひとつを取るとナプキンから取り出した。それには木でできた棒が二本だった。

「これは箸と言ってフォークに当たるものです」

「それでどうやって?」

「簡単ですよ、見せますね」

そういうと、カナッペとか小さいクッキーを皿にとってもらった。

「こうやって食べます」とカナッペを口に運ぶと

「おぉやってみたい」という声が続出して箸の包みがなくなった。

「「「「「あれ?できない」」」」」

「先ず持ち方ですね。こう持って下さい」

「一本はこうです」「できましたか?」
「そうです」「真似して下さい」とイズミが箸を一本手に自分の手元をまわりに見せる。

「もう一本はこうです」と二本を持って手をあげたり、自分が回って手元を見てもらう。

「ちいさなクッキーとか小さく切った果物で練習ですね」

「うーーん刺して使うのはいけない使い方です」とそばのおじさんに注意する。


「イズミ、君の国では皆、それを使えるのか?」とイズミの手元見ながら一人が問うと

「もちろんです」と大きな声で答える。


「皆さん、それを差し上げるので練習して下さい。実はポテトチップというお菓子を手を汚さずに食べられると言うのでとても便利です。手がきれいだと遊びを中断しないで済むので・・・・」

「ポテトチップとは?」

「薄切りにしたじゃがいもを油であげたものです」

「イズミもっと早く教えてくれていたら作らせたのに」とアレンが言うと

「悪い、話をしていて、今、思い出したんだ」とイズミが答える。


そこにレオナルド王子がやって来るとアレンがさっとイズミの肩を抱き寄せた。

「神子様のそばを離れていいのですか?」

「大丈夫だ。客に囲まれている。護衛もいる」

そういうとイズミを見て言った。

「今度茶会を開くから必ず来い。これは正式な命令だ」

そう言うと背を向けて去って行った。
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