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29 辺境伯の屋敷
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園遊会の翌日、リード伯爵一家。父と母と兄が王都の辺境伯家に呼び出された。
伯爵は、メアリーの離縁も、賠償金もすべて受け入れるつもりで、覚悟を決めて赴いた。
客間に通されると、元辺境伯だけが、待っていた。
一家が詫びようとすると、それを押しとどめ、
「少し、心に踏み入る話になります。挨拶など、今はいい。それとわたしの事は、ブリードと呼んでくれ」
「かしこまりました。ブリード様。娘は引き取ります。迷惑をかけて申し訳ないことでございます」と伯爵が言うと三人で頭を下げた。
「いえ、引き取ってもらっても恥は消えません。名誉も回復しません」とブリードが言うと、
「どうすれば、よろしいのでしょうか?」
「名誉を汚された時、なにをなさいますか?」とブリードがたずねると、
「きちんと・・・・」と伯爵は言いかけて、口をつぐんだ。とんでもない事を要求される?そんな気がしたのだ。
「娘を・・・・」『娼館に』と言えなかった。
「もちろん、娼館などには行かせませんよ。恥の上塗りだ」とブリードが言うと、
「娘は引き取り、二度と外に出しません。一生家のなかで過ごさせ、食事も質素に、着る物もメイドと同じものを」を伯爵夫人が叫ぶように言った。
「ご婦人は、控えめがいいですな」とブリードが言うと、
「妻が失礼しました」と伯爵が頭を下げ、
「どうやら、娘は思いつめたようで、多分あまり記憶がないのではないかと、思います。療養が必要なのです。暖かいお申し出に甘えてしまい、あれを嫁がせましたが、時期が早かったようです。これ以上ご迷惑をかけないように、引き取ります」と膝まづいて言うと、
「名誉に関する考えが、どうも王都の貴族は違うようだ」とブリードが、言った。
「名誉・・・・」と伯爵は呟いた。昔、聞いた話が、頭をよぎる。名誉を汚した幼い息子を・・・・・まさか・・・
「財産はすべて差し上げます。爵位も返上して」
「そんな物では、名誉は、わたしの恥も・・・・妻には最初から恥をかかせるなと言っておったのにな・・・・浮気だって、ばれなければ、やっていいんだよ。罪を犯さない人間はいない。まぁあの男は相手にせんだろうが・・・・別のものでも」とブリードは言うと、
「もう、わかったであろう。なにをすればいいのか」と伯爵を見据えた。
「だが、娘は言葉が・・・・そのよく考えずに・・・言っただけで、悪気があったのではなく・・・・」
「どうであろうと、満座のなかで口にしたのだ」
「あちらは辺境伯家の名誉を重んじて、なかったことにされた。うるさくて聞き取れなかったと・・・・
我が、家門はニック公爵家への恩は忘れぬ」
「リード伯爵家がやれる事はひとつだ」その言葉を聞いて伯爵は、静かに立ち上がった。
「あれはどこに?」という声に侍従が
「こちらです。みなさんでどうぞ」と静かに言った。
侍従が歩いて行く。この廊下に終わりがなければいいのにと伯爵は、思った。
「やっと会えるのね。心細いでしょうね。早く慰めてあげないと」と妻が話している。
普段だったら優しく相槌を打つ息子が黙っている。 理解ったのだろう。
ドアが開くと、
「ひどいわ。閉じ込めるなんて!お父様!お母様、迎えに来て下さったのね」とメアリーが言ったが、駆け寄ろうとした伯爵夫人を息子のライリーが、引き止めた。
「ブリード様、裏庭を」
「いや、この部屋で」とブリードが答えた。
「ライリー、なにするの離しなさい」と伯爵夫人がもがくと、
「母上、お静かに願います」とライリーが言い、メアリーは、
「どうしたの?変よ。なにか言って」
「静かにメアリー、ひざまずけ」と父親に言われると、おびえて壁際に下がった。
ライリーがメアリーに近づくとメアリーは、大声で叫びあばれた。伯爵夫人を侍従が押さえつけていた。
「ライリー」「父上」二人は、同時にたがいの名前を呼び、視線をからませた。
それから、ライリーはメアリーを捉えた。力を失ったメアリーを床に横たえた。
「すまん、ライリー・・・わたしの役目だ」伯爵はそう言うと、短剣を手にとった。
伯爵夫人は悲鳴を上げると、力の限りもがいたが、やがて力を失い侍従にもたれかかった。
ライリーは上着を脱ぐと、メアリーにかぶせた。
「これで、ほっとしました。わたしの恥もこれで、すすげました。伯爵家の名誉も」とブリードが礼を取った。
「湯浴みして着替えて下さい」と侍従が言うと、ブリードが、
「妻は急な病だったと発表します。病により精神に乱れがあったと・・・・・お見舞いに来たあなたがたが、その姿で帰るのは奇妙ですからね。返り血が・・・・」
「ご配慮感謝致します」と伯爵は頭を下げた。
伯爵は、メアリーの離縁も、賠償金もすべて受け入れるつもりで、覚悟を決めて赴いた。
客間に通されると、元辺境伯だけが、待っていた。
一家が詫びようとすると、それを押しとどめ、
「少し、心に踏み入る話になります。挨拶など、今はいい。それとわたしの事は、ブリードと呼んでくれ」
「かしこまりました。ブリード様。娘は引き取ります。迷惑をかけて申し訳ないことでございます」と伯爵が言うと三人で頭を下げた。
「いえ、引き取ってもらっても恥は消えません。名誉も回復しません」とブリードが言うと、
「どうすれば、よろしいのでしょうか?」
「名誉を汚された時、なにをなさいますか?」とブリードがたずねると、
「きちんと・・・・」と伯爵は言いかけて、口をつぐんだ。とんでもない事を要求される?そんな気がしたのだ。
「娘を・・・・」『娼館に』と言えなかった。
「もちろん、娼館などには行かせませんよ。恥の上塗りだ」とブリードが言うと、
「娘は引き取り、二度と外に出しません。一生家のなかで過ごさせ、食事も質素に、着る物もメイドと同じものを」を伯爵夫人が叫ぶように言った。
「ご婦人は、控えめがいいですな」とブリードが言うと、
「妻が失礼しました」と伯爵が頭を下げ、
「どうやら、娘は思いつめたようで、多分あまり記憶がないのではないかと、思います。療養が必要なのです。暖かいお申し出に甘えてしまい、あれを嫁がせましたが、時期が早かったようです。これ以上ご迷惑をかけないように、引き取ります」と膝まづいて言うと、
「名誉に関する考えが、どうも王都の貴族は違うようだ」とブリードが、言った。
「名誉・・・・」と伯爵は呟いた。昔、聞いた話が、頭をよぎる。名誉を汚した幼い息子を・・・・・まさか・・・
「財産はすべて差し上げます。爵位も返上して」
「そんな物では、名誉は、わたしの恥も・・・・妻には最初から恥をかかせるなと言っておったのにな・・・・浮気だって、ばれなければ、やっていいんだよ。罪を犯さない人間はいない。まぁあの男は相手にせんだろうが・・・・別のものでも」とブリードは言うと、
「もう、わかったであろう。なにをすればいいのか」と伯爵を見据えた。
「だが、娘は言葉が・・・・そのよく考えずに・・・言っただけで、悪気があったのではなく・・・・」
「どうであろうと、満座のなかで口にしたのだ」
「あちらは辺境伯家の名誉を重んじて、なかったことにされた。うるさくて聞き取れなかったと・・・・
我が、家門はニック公爵家への恩は忘れぬ」
「リード伯爵家がやれる事はひとつだ」その言葉を聞いて伯爵は、静かに立ち上がった。
「あれはどこに?」という声に侍従が
「こちらです。みなさんでどうぞ」と静かに言った。
侍従が歩いて行く。この廊下に終わりがなければいいのにと伯爵は、思った。
「やっと会えるのね。心細いでしょうね。早く慰めてあげないと」と妻が話している。
普段だったら優しく相槌を打つ息子が黙っている。 理解ったのだろう。
ドアが開くと、
「ひどいわ。閉じ込めるなんて!お父様!お母様、迎えに来て下さったのね」とメアリーが言ったが、駆け寄ろうとした伯爵夫人を息子のライリーが、引き止めた。
「ブリード様、裏庭を」
「いや、この部屋で」とブリードが答えた。
「ライリー、なにするの離しなさい」と伯爵夫人がもがくと、
「母上、お静かに願います」とライリーが言い、メアリーは、
「どうしたの?変よ。なにか言って」
「静かにメアリー、ひざまずけ」と父親に言われると、おびえて壁際に下がった。
ライリーがメアリーに近づくとメアリーは、大声で叫びあばれた。伯爵夫人を侍従が押さえつけていた。
「ライリー」「父上」二人は、同時にたがいの名前を呼び、視線をからませた。
それから、ライリーはメアリーを捉えた。力を失ったメアリーを床に横たえた。
「すまん、ライリー・・・わたしの役目だ」伯爵はそう言うと、短剣を手にとった。
伯爵夫人は悲鳴を上げると、力の限りもがいたが、やがて力を失い侍従にもたれかかった。
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「これで、ほっとしました。わたしの恥もこれで、すすげました。伯爵家の名誉も」とブリードが礼を取った。
「湯浴みして着替えて下さい」と侍従が言うと、ブリードが、
「妻は急な病だったと発表します。病により精神に乱れがあったと・・・・・お見舞いに来たあなたがたが、その姿で帰るのは奇妙ですからね。返り血が・・・・」
「ご配慮感謝致します」と伯爵は頭を下げた。
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