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侯爵邸に馬車が着いた時、サイラスが待っていた。
リリベルは手をとらんばかりに、客間に案内すると
「あなたが鉱山の人?」とリリベルは聞いた。サイラスはレイモンドをちらっと見ると
「いえ、持ち主は今、鉱山の管理で大忙しです。予定より採掘効率がよくて。わたしは彼に代わってレイモンド様にお仕えしてます。サイラスです」
と答えた。
「投資をすれば増えるのでしょう。レイモンドは投資をしてないって言うけど」とリリベルが言えば、
「はい、レイモンド様は投資をしていません・・・・・今日はお願いがあって」とサイラスが申し訳なさそうに言うと
「お願いって何?」リリベルが言うのに、サイラスが答えようとするのを、レイモンドは止めた。
だが、リリベルはレイモンドを無視して、話を続けた。
翌日からリリベルは、今まで以上に社交に勤しんだ。そして投資をすすめた。リリベルが集めた出資者への配当は少し多いらしいとうわさになって、リリベルが出席するお茶会は、人が多く集まった。
レイモンドは、リリベルをたしなめた。鉱山から出た鉱石が消費されている所がわからない。だから、この話をもっと疑えと・・・・
だが、リリベル母娘はそんなレイモンドを二人で非難した。
確かにお金は入ってきたが、レイモンドはそのお金に、いやな気配を感じるのだった。
二人のお金への執着は、ひどくなり来年の小麦の収穫を抵当にいれて、借りたお金を投資に回すまでになった。
レイモンドは、侯爵の位を返上して離縁する事を考えるようになった。レイモンドは思い余って、兄達に相談した。
兄達もこの投資熱を苦々しく思っていたようで、離縁をすすめられた。
二番目の兄はこう言った。
「投資はね、静かにやるもんだよね。それと引き際が大事だよね。もうわたしたちは、おこづかいを稼いだし・・・王族はお金に潔癖だとみせた方がいいし・・・・」といたづらっぽく笑いながら・・・
「レイモンド、派手に騒いで離縁するんだよ。一応、資金は稼いだだろ」と一番上の兄もレイモンドの肩を叩きながら言った。
「手続きは、最優先ですすめるけど・・・・急いだ方がいいね」
レイモンドは『この人たちには、かなわないな』と思いながら、
「はい、きれいに離れます」と答えた。
レイモンドが帰って行った後、兄達は残って話をしていた。
「あの、甘ちゃんが成長したね」
「アーデリア嬢と結婚すれば安心と思っていたけど・・・」
「レイちゃんが立派になって、領主も出来るとは」と言いながら涙を拭く真似をすれば、
「そうだ。あそこで領主をやらせようか」と一人が言うと、彼らはお互いに顔を見合わせていたが、
「「「「それがいいな」」」」と、うなづきあった。
そして、ある夜会でレイモンドは騒ぎを起こした。
「リリベル、投資に誘うのはやめるように言っただろ。約束しただろ。わたしたちは領民の為に時間を使うと・・・・投資の勧誘に使う時間があれば、領民と話そうと。小麦の出来を一緒によろこび、祝おうと」
「領地はもともと我が家の物です。レイモンド様の物じゃありません。どうしようとわたしの勝手ですわ」
「済まない、大声を出して帰って話し合おう」
「もう、レイモンのせいで白けたわ。別れま」と言いかけたリリベルの腰にレイモンドが手を回すと、広間から連れ出した。
「レイモン、わたしは別れるって言ってるの」とリリベルの声が、最後に聞こえた。
すると、兄の仕込みで、
「今は侯爵でもさすがは王族ですね。微塵もゆるがない・・・」
「真面目すぎませんか?少しくらい・・・」
やがて、リリベルが夜会に一人で現れてこう言った。
「みなさん、わたくしがデステ侯爵になりました。いっそう、事業に励みますので今後もよろしく」
パチパチと始まった拍手は会場全体に広がった。
そして、ある日、全てが壊れた。その日は配当が届く日だったが、いつも届けてくるサイラスが来なかった。
リリベルは急用だと思い、さして気にしなかった。翌日も来なかった。あれっと思い、連絡しようとして連絡先を知らないと気づいた。
かなり広まった投資活動で、出資者は身分を問わず、かなり大勢だった。
出資の話をする主人の、そばにいた侍女や侍従にも、こっそり投資した者がいたし、その家族も出資していたせいだ。
だが、彼らの被害は、最後の配当が返ってこなかった程度だった。
大半の者の手元には、浮かれて買った着もしないドレスや、ちょっといい馬車、派手なだけでたいして価値のない宝石が残った。
その為、声高に被害を訴える者はいなかった。
リリベルは手をとらんばかりに、客間に案内すると
「あなたが鉱山の人?」とリリベルは聞いた。サイラスはレイモンドをちらっと見ると
「いえ、持ち主は今、鉱山の管理で大忙しです。予定より採掘効率がよくて。わたしは彼に代わってレイモンド様にお仕えしてます。サイラスです」
と答えた。
「投資をすれば増えるのでしょう。レイモンドは投資をしてないって言うけど」とリリベルが言えば、
「はい、レイモンド様は投資をしていません・・・・・今日はお願いがあって」とサイラスが申し訳なさそうに言うと
「お願いって何?」リリベルが言うのに、サイラスが答えようとするのを、レイモンドは止めた。
だが、リリベルはレイモンドを無視して、話を続けた。
翌日からリリベルは、今まで以上に社交に勤しんだ。そして投資をすすめた。リリベルが集めた出資者への配当は少し多いらしいとうわさになって、リリベルが出席するお茶会は、人が多く集まった。
レイモンドは、リリベルをたしなめた。鉱山から出た鉱石が消費されている所がわからない。だから、この話をもっと疑えと・・・・
だが、リリベル母娘はそんなレイモンドを二人で非難した。
確かにお金は入ってきたが、レイモンドはそのお金に、いやな気配を感じるのだった。
二人のお金への執着は、ひどくなり来年の小麦の収穫を抵当にいれて、借りたお金を投資に回すまでになった。
レイモンドは、侯爵の位を返上して離縁する事を考えるようになった。レイモンドは思い余って、兄達に相談した。
兄達もこの投資熱を苦々しく思っていたようで、離縁をすすめられた。
二番目の兄はこう言った。
「投資はね、静かにやるもんだよね。それと引き際が大事だよね。もうわたしたちは、おこづかいを稼いだし・・・王族はお金に潔癖だとみせた方がいいし・・・・」といたづらっぽく笑いながら・・・
「レイモンド、派手に騒いで離縁するんだよ。一応、資金は稼いだだろ」と一番上の兄もレイモンドの肩を叩きながら言った。
「手続きは、最優先ですすめるけど・・・・急いだ方がいいね」
レイモンドは『この人たちには、かなわないな』と思いながら、
「はい、きれいに離れます」と答えた。
レイモンドが帰って行った後、兄達は残って話をしていた。
「あの、甘ちゃんが成長したね」
「アーデリア嬢と結婚すれば安心と思っていたけど・・・」
「レイちゃんが立派になって、領主も出来るとは」と言いながら涙を拭く真似をすれば、
「そうだ。あそこで領主をやらせようか」と一人が言うと、彼らはお互いに顔を見合わせていたが、
「「「「それがいいな」」」」と、うなづきあった。
そして、ある夜会でレイモンドは騒ぎを起こした。
「リリベル、投資に誘うのはやめるように言っただろ。約束しただろ。わたしたちは領民の為に時間を使うと・・・・投資の勧誘に使う時間があれば、領民と話そうと。小麦の出来を一緒によろこび、祝おうと」
「領地はもともと我が家の物です。レイモンド様の物じゃありません。どうしようとわたしの勝手ですわ」
「済まない、大声を出して帰って話し合おう」
「もう、レイモンのせいで白けたわ。別れま」と言いかけたリリベルの腰にレイモンドが手を回すと、広間から連れ出した。
「レイモン、わたしは別れるって言ってるの」とリリベルの声が、最後に聞こえた。
すると、兄の仕込みで、
「今は侯爵でもさすがは王族ですね。微塵もゆるがない・・・」
「真面目すぎませんか?少しくらい・・・」
やがて、リリベルが夜会に一人で現れてこう言った。
「みなさん、わたくしがデステ侯爵になりました。いっそう、事業に励みますので今後もよろしく」
パチパチと始まった拍手は会場全体に広がった。
そして、ある日、全てが壊れた。その日は配当が届く日だったが、いつも届けてくるサイラスが来なかった。
リリベルは急用だと思い、さして気にしなかった。翌日も来なかった。あれっと思い、連絡しようとして連絡先を知らないと気づいた。
かなり広まった投資活動で、出資者は身分を問わず、かなり大勢だった。
出資の話をする主人の、そばにいた侍女や侍従にも、こっそり投資した者がいたし、その家族も出資していたせいだ。
だが、彼らの被害は、最後の配当が返ってこなかった程度だった。
大半の者の手元には、浮かれて買った着もしないドレスや、ちょっといい馬車、派手なだけでたいして価値のない宝石が残った。
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