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今日は王家が主催するお茶会だ。レイモンドは久しぶりに夫人とその母親、前侯爵の三人で、参加する。

ドレスは、来年の小麦をあてにして、無理して新しく作った。だが、装身具は新調できなかったので、せっかく出かけると言うのに、二人共不機嫌だ。

下手に、なにか言うと面倒な事になるので、黙っていた。



会場では、二人とも友達に会って楽しそうにしている。レイモンドも友人と話し始めた。

話題は、鉱山への投資だった。なんでもある領地の鉱山開発に・・・・あの時の鉱山だった。

レイモンドは失敗したと思った。あの話に乗っていれば、今頃は宝石なんていくらでも買えたはずだった。

顔色に出さないようにしながら、話に相槌を打っていると、男が話に入ってきた。

「おや、噂をすればボビー。あやかりたいよ」

「うまくやったんだってな」と男たちが声をかければ、

「あぁ、最初、美味い話にはトゲも毒もあると警戒したんだよ・・・・だけど調べてみると確かに鉱山が見つかったみたいで・・・・この話に賭けたんだよ。妹なんか、着飾って出かけたら、見初められていい結婚をしたよ」

レイモンドは逃がした魚の大きさにため息が出た。



ため息をつきながら、風にあたりにでたレイモンドは、ある男から声をかけられた。

「王子殿下」

立ち止まって相手を見たが知らぬ男だった。

「王子ではない、侯爵だ」

「失礼しました。侯爵閣下・・・・少しお話を」

「かまわぬが、歩きながらでいいか?」とレイモンドは答えた。

サイラス・ブールと名乗った男は

「実は助けていただきたい事が・・・」と話し始めた。


サイラスの従兄弟の領地に鉱山が見つかった。いろいろな人に出資をお願いしてまわるが上手くいかない。とっても有望な鉱山だから、掘れば大儲けができるのに・・・・

それで、侯爵閣下が噛んでいるとわかれば、安心して出資するだろうから、名前を貸して貰いたい。

もちろん、ただとは言わない。お礼もするという事だ。

ようは、儲け話を持ちかけろと言う事か、とレイモンドは思った。

すぐに返事をするのは、軽はずみだなと思ったレイモンドは後日、会う事にしてその日は別れた。



その店に、入ると

「レイモンド殿下。こちらです」と大声で名前を呼ばれた。相手もしまったと思ったみたいで、

「騒いでしまってすみません」とまわりのテーブルに向かって頭を下げている。

「うれしくてはしゃいでしまいました。王子殿下のお力添えがあれば、投資も順調です。儲かりますよ」と話しかける声がまだ、大きかった。

周りのテーブルの者は、投資、順調、などの単語を拾って儲け話だと耳をそばだてた。

デステ侯爵が、鉱山の開発に加わっていると言ううわさが流れた。

そんなある日、金持ちの伯父さんの遺産を貰った、メッテ子爵は、夜会のおり、バルコニーの先客の話を耳にした。

「王子だった。侯爵が保証するらしいんだ。だから間違いないと思うんだが、伝手がなくて」

先客はメッテ子爵の姿を見ると、話をやめた。子爵は涼しい風にあたりながら、今聞いた事を考えた。

王子が保証している儲け話のうわさは、耳にしていたが、単なるうわさだと思っていた。だが、どうやら本当のようだ。

それから、しばらくしたある日、メッテ子爵は街で友人にあった。友人の連れはあの時、バルコニーにいた男だった。



ビルバオ伯爵は、あの日そばの、テーブルに座っていた。全部は聞こえなかった、王子殿下、投資、儲かると言った単語は、しっかり耳にしていた。

そして、ある夜会で、サイラスを見かけて、自分から話しかけた。



レイモンドは、リリベルと園遊会に出かけた。新調のドレスを着たリリベルは、とても機嫌がよかった。

「レイモンド、聞いたぞ」と友人から、話しかけられた。

「なにを聞いたんだ?」

「儲かってるんだろ?」

「なんですって」とリリベルが割り込んだ。レイモンドは、目で合図したが、既に遅かった。まして、レイモンドは儲かってなどいない。

友人はリリベルの迫力に負けて、鉱山への投資の話をした。


友人と話すリリベルの姿は、注目を集めた。


帰りの馬車で、レイモンドとリリベルは喧嘩になった。いくらレイモンドが、自分は話をしたが、投資はしていないと言っても、リリベルは信じなかったのだ。

「いくら、投資したくてもお金は、全部君たち母娘が使ってしまうから、ないんだ。投資する金なんてないんだ」

レイモンドは、この言葉を繰り返し、

「侯爵家の体面はなにより、大事です」とリリベルも同じ事を繰り返した。


侯爵邸に馬車が着いた時、サイラスが待っていた。



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