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14 アレクサンドル・ニック目線

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わたしの両親、兄二人は善良な普通の人だ。そしてわたしは自分で言うのもなんだが、神童とか天才とか言われる類の子供だった。


両親はわたしの才能を喜んだが、兄二人で満足している所に生まれた自分は、余りというかおまけと思っているようだったで、わたしは両親の目にはいるために兄二人に引っ付いていたような気がする。子供の頃の事なので自分でもよくわからない。

兄二人が苦心して習得した事を見ただけでやってのけた。わたしからみると年上で背も高い兄の真似をしただけだった。わたしは「見て見て、褒めて褒めて」と単純に思っていただけだったので、度重なる出来事が兄二人を傷つけていたのに気付かなかった。


両親は兄が出来る事なら、真似してるわたしが出来るのは当たり前だと思っていたせいか、わたしの才能に気付かなかった。と言うより無頓着だろうか?わたしに対して無頓着だから、才能にも無頓着だったと思う。

やがて、兄二人が剣術を習い始めた時、いろいろな事が起きた。

上の兄と下の兄は一歳違いで、同時に剣術を習い始めた。兄二人は剣の才能があって、騎士団の見習いに誘われた。

その練習を両親も見にいくことになり勿論、わたしもついて行った。わたしははしゃいで、両親の間で手をつないで貰った。

そして練習を見ている時、なんだ、簡単だとわたしは思った。するとわたしがそう言うのを聞いていた。副団長がちょっとした余興としてわたしと打ち合ってくれたのだ。

見学に来たちびっこを楽しませ、親しみある騎士団って感じだったと思う。

「がんばれ、ちびっこ剣士」なんて言う声援も浴びて、わたしは大喜びだった。

ねらい通り、「僕も」「僕も」って子も並んでみんなが笑って見ていた。


翌日、騎士団からわたしに誘いが来た。両親兄二人だと思いすぐに了承したが、誘われたのはわたしだけだった。

兄二人は剣をとらなくなり、両親と離れたがった。そこで両親は二人を離すまいとした。結果わたしは家族で孤立した。

誰も口にしないがギクシャクした関係が修復される事はなかった。


「おまえのような子がうちに生まれたばっかりに」「おまえのような子はうちに生まれてはいけなかった」両親がもらしたこの言葉にわたしは苦しんだ。

そしてわたしは苦しみを自分から切り捨てた。学院に入った後、家に戻ることはなかった。

婚約者の希望で、家族を紹介した。婚約者は家族は、無条件に愛し、愛される関係だと言う考えを持っているようで、ふた家族で食事をしたいと何度も言って来たが、俺は断り続けた。

愛情いっぱいの女だったって事か?

俺は、勇者に選ばれた際も、ひとりで受け止めた。すると勇者の一人が話しかけて来た。

「相性ってもんだよ」その軽い一言で救われた。


「勇者同士って相性いいよな」これは本当だ。生きて魔王の元へたどり着けたのも、封印できたのも。封印で捧げたものをわずかな犠牲と思えたのも。

相性のいい仲間に恵まれたからだ。


そして

「あなたさまがたとえどんな姿になってもかまいません、生きて戻って下されば」とわたしにしがみついて泣いて見送ってくれた婚約者が、悲鳴をあげて逃げだしたのも

「相性が悪かった」って事。相性が悪かったから、あのたくさんある愛情を俺に向けてくれなくなったって事だ。


相性のいい勇者仲間はこれがわかっているから、全然慰めてくれなかったな・・・・少し傷ついたのに・・・

そして「相性のいい妻を得た」わたしは自分のなかにこんなに愛があるとは思ってなかった。

妻への愛は日に日に大きく深くなっている。

アーデリアはこれを知ったらびっくりするだろうし、恐れを抱くかも知れない。だからわたしはこれを隠す。そうしないと

「相性のいい友人にして同居人、ライバル、他にもいろいろあるな、なんせ相性がいいから」を失ってしまうから・・・


さてその相性のいい同居人は速歩している馬の上で、ぽんぽんと撥ねている。最初にしては上手いが・・・・・馬もしんどいだろう。

俺の合図で馬が並歩を始めた。おぉ今頃合図を出してる。まだ馬主導だな。二周したらこの馬は止まるが・・・・

並歩は上手に乗れてる。うまいな。優雅で品がいい・・・・

馬の野郎、満足そうな顔してるな。いい生徒だろ!おまえは初心者を教えさせれば最高だからな・・・・




◇◇◇

新しく「神子の余分」を投稿しはじめました。読んでみて下さい。




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