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05 デステ侯爵夫妻目線

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セーラ・デステ侯爵目線


わたしにはとても優秀な姉が二人いる。

二人は才媛と呼ばれていた。美しくて頭がいいと言う意味だそうだ。


わたしの学院への入学は下の姉と入れ替わりだった。そしてわたしは成績が下のクラスにはいった。姉二人はがっかりしたようだが、お友達に恵まれて楽しい学院生活だった。

やがて、上の姉は腕利き外交官の侯爵と結婚して、よき伴侶として活躍しだした。

下の姉はこの家の後継としてふさわしい伴侶を探していたが、隣国の伯爵と恋に落ちた。

そして隣国がわたしの結婚相手としてある男性を推薦して来た。

つまり、その男性が結婚して補佐するから、実家を継いで欲しいと提案されたのだ。

わたしは貴族としてなかば義務で彼と会ったが、彼は会ってすぐに結婚したいと告げてきた。

両親と一緒にいられるのは歓迎だと、わたしはこの結婚を承諾した。



こうしてわたしは実家を継いだ。わたしは侯爵夫人ではなく、侯爵になった。

彼はとても優しくて夜会も、園遊会も一緒に行って仲の良い美しい夫婦として評判になった。わたしは姉より幸せな結婚をしたと満足だった。姉に勝ったのだ。

やがて彼は領地で事業を興して、領地と王都を往復する生活になり、更に事業を拡大して隣国と領地と王都を、行き来するようになった。


そして待望の子供アーデリアが生まれた。とてもいい子だ。教えたことはなんでもすぐに覚えた。

それからリリベルが生まれた。違っていた。二人は違っていた。

アーデリアはお姉様だった。リリベルはわたしだ。


そういうことならと、わたしはアーデリアをより賢く育てようと努力した。お姉様なんかに負けないように育てようと思ったのだ。

教師もわたしの熱意に答えてアーデリアにきびしく当たった。

王子殿下の婚約者になり勉強時間が増えたが、休む暇などないと励ました。

子供ながらに執務の手伝いが出来るようになると、わたしの買い物に口出しするようになった。

昔、お姉様が、わたしを妬んでやった事を、今度はアーデリアがやってくるのだ。ぞっとした。


だが、王子殿下とリリベルが結婚する事になった。よかったリリベルに、侯爵を譲れる。

最初は難しい顔をしていた夫も、リリベルを手元に残せるのは嬉しいみたいで、最後は協力してくれた。

結婚式はおもいきり華やかにする。楽しみだ。




◇◇◇

婚約者のエミリーが死んだ時、わたしも後を追いたかった。だが、エミリーは死ぬ間際に、弟と妹のことをわたしに頼んだ。

なんの努力もしない者にしがみつかれて、寄生されてエミリーは我が身を犠牲にした。

エミリーとの約束を破るわけには行かない。わたしは途方にくれた。

すると上司から、ある男を紹介された。普通だったら会うこともない男だったが、その男はある提案をして来た。

ある侯爵家に婿入りして、家政を見て欲しいと言うのだ。

わたしは疑問に思った。侯爵家の婿と言えばなりたいものは大勢いるだろうに、何故わたしなのかと・・・・

「もっとも質問だ。率直に答えると・・・・怖い話なんだ・・・・」


それを聞いてぞっとした。そしてそんな話をわたしにするのだと思った。その家を没落させて欲しい。できれば滅ぼして欲しいとは・・・


しかしその話は、わたしの心の奥深くにある恨みに気づかせてくれた。

その話に応ずる事は、わたしの恨みをはらす事にも通じるのだ。

わたしが気づくより先に、この男はそれに気づいたのだろうか?


「案外、無邪気な気のいい令嬢かも知れないし、それならそれでいいんじゃないか」

うってかわって明るく言った男の真意は、わからない。先の事はわからない。自分の気持ちだってわからない。

男が用意した金をエミリーの弟に渡して、わたしはセーラ・デステ侯爵と結婚した。

最初は楽しかった。だが、このセーラも自覚のない悪魔だった。

人に寄生して、じんわりと奪い取っていく。

悪魔は滅ぼさねばならない。そう決心した。すると不思議と物事がうまく進んで行く。

わたしがやろうとしている事が正しいからだろう。

ただ、アーデリアには、済まない事をしてしまった。この家を離れた後はどうか幸せになって欲しい。







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