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03 婚約者交代

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「だってレイモンはお姉様よりわたしを愛してます。わたしがその勇者様と結婚するとレイモンが可哀想です」

とリリベルが、泣きながら言うと侯爵夫人が、リリベルに駆け寄り抱きしめた。


『そう来たか』とアーデリアは、二人をじっと見た。


「そうです。レイモンはお姉様よりわたしを愛してますわ」

「リリベル、なにを言うの。領地のこともあるのよ」と侯爵夫人が言うと

「お姉様でも出来るんですのよ。簡単です」

「なんと・・・・リリベルはそう思っているのか」と陛下は呟き、

「アーデリア、答えよ」と改まった口調で言った。

「はい、王子殿下は我が家にいらしたとき、わたくしよりもリリベルに先にお会いになります。毎回、花束とお菓子をリリベルに渡されます。執務は・・・」とアーデリアが、言いよどむと

「どう思うのか?」と陛下が重ねて質問した。

「わたくしから申し上げてよろしいでしょうか?」と侯爵が口を出した。

「おぉ、デステ侯爵言うがいい」

「確かにリリベルはアーデリアに比べるとおっとりとしておりますが、レイモンド殿下は頼りになる方だとうかがっております。それにわたくしもまだまだ手伝えますし、使用人も優秀です。アーデリアが家を出ても問題ありません」

「ほお、侯爵はそう思うのか?」

しばし国王陛下は黙っていたが、わたしの方を見て

「アーデリア、良いか」

「はい、陛下。ニック侯爵ご令息との婚約、受けさせていただきます」


「アーデリア・・・・ありがとう。・・・おめでとう」と陛下が言うと

「ありがとう存じます」とアーデリアは答えた。


「それではリリベルは下がれ、別室で待っておれ」

国王の合図で侍従がやってくるとリリベルをエスコートして部屋を出て行った。



「さて、急な話で悪い、他の四人は婚約者をずいぶん待たせておる。そこですぐにでも結婚式をあげたいのだ。それぞれの者に事情がある。わかるな。そこで先に結婚して、一年後に式と共に魔王を封印した凱旋パレードをしたいのだ。これは五人すべて同じように・・・・・」

『それって間抜け?』とアーデリアは思ったが、心を無にした。

そして、三人を見ながら

「明日、婚約の書類に署名をして、すぐに結婚だ」と国王が言うと

「なんと、それでは娘があまりにも・・・・」と侯爵が父親らしい口調で言だした。

『あら、父親の演技?』とアーデリアは皮肉な感想が出た。

「確かにアーデリアが不憫だな。アーデリア。なにか望みはないか?」と国王が軽く笑う。

「陛下、遠慮なく申し上げます」

「言ってみよ」

「侯爵の位を下さいませ。その・・・・後ろ盾を望めない身ですので・・・・そして領地として夢村ドリームヴィレッジ周辺を」

「ほう・・・・」と言う国王の声と「アーデリア!」と咎める侯爵の声が重なった。

「よかろう・・・望み通りにしよう・・・・だが、何故そこなんだ。理由があれば聞かせてくれ」

「はい、わたくしは子供の頃から、勉強に明け暮れておりました。王子殿下と婚約してからはもちろんですが、その前も勉強ばかりでした。そんなわたくしですが、一度だけ夢村ドリームヴィレッジに行ったことがございます。その時の湖の色、空の色そして湖の真ん中に浮かぶヴェール島。そこで暮らしたいと思います。もちろんニック侯爵ご令息次第ですが」

「承知した。王都の屋敷と夢村ドリームヴィレッジの屋敷好きな所で暮らせばいい」

続いて王は

「侯爵位はすぐに授ける。夢村ドリームヴィレッジはすぐに準備させる」

そういうと

「疲れたであろう・・・・ヴェール侯爵」とアーデリアに笑いかけた。

すぐに侍従が動き、三人は部屋を出て、リリベルが待つ部屋へ案内された。

『言ってみるもんだわね』アーデリアは信じられない思いだった。




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