今世は好きにできるんだ

朝山みどり

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初めての

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追加公演でぬいぐるみを動かすと、思ったより疲れて食事がすむとすぐに寝る日が続いた。

そして、わたしに花束を持ってくる人が出た。寝ているわたしに代わり、団長とかマールが受け取って目が覚めると花瓶代わりのバケツに差してあった。

いろんな花がごちゃまぜになったそれは、好きな花がわからないから、一本ずつ全部買ったらそうなったらしい。

名ばかり貴族令嬢だったわたしは、お花を貰うのは初めてで、そんなんでもなんだか嬉しかった。


そんな花束が続いたが、彼が町の商店で働いている人と聞いて、お金を使わせるのは申し訳ないので、遠慮すると伝えて貰った。

すると花が一本だけ届くようになり、それはコップに差されてテーブルに飾られた。



そして、出発前、彼と会う事にした。

すると彼から、街着が届いた。彼はこの町の商店で働いていると聞いたが、お父さんの店で働いている人なんだなとわかった。

わたしはそれを着て、我ながら似合っていると思った。


そして、迎えに来た彼と一緒に、ぶらぶらとお店を見て髪飾りを買ってもらい、レストランで食事をした。

躾の行き届いた給仕の持って来る料理はとても美味しかった。彼はわたしが移動するのを残念がって、絶対次の場所も見に行くから、その時も会って欲しいと頼んで来た。

もちろん、お客様は大切にすると答えると、客なんだと残念そうな顔をした。

わかってやってると思っても、ときめいてしまった。


翌日わたしたちは出発して、馬車で二日ほど行った町で、十日間の興業をした。

わたしは、色々考えて少し、控えめに花びらを出して、ぬいぐるみは腕に抱えるようにした。

そこそこの人気、それなりの結果でわたしたちは次の町に向かい、マールは簡単な本を読めるようになった。

ここまで来ると後は本人の努力次第だ。


さて、久しぶりの大きな町に着いて、準備が終わった時、彼が訪ねて来た。

「今度、この町に支店を出す。そこでアリスさんに協力して欲しい。成功したいんだ」
わたしをじっと見た。とりあえず、

「ありがとうございます」と答えた。前世の貴族通しのやりとりとは違う。

なんというか、国を出るのに一座はちょうど良かった。そしてここまで来たから、一座を抜けようと思い団長にも話していた。団長の返事は、「そろそろだと思っていた」だった。

「知り合いがいると助かる事はわかる。うんと・・・・よく考える」と言うと彼は

「うん、よく考えて、計算もして、利用しがいがあるよ」と笑うと帰って行った。

今日はお花のかわりに、この町で美味しいと聞いたお菓子を貰った。





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