今世は好きにできるんだ

朝山みどり

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やっと大きな町に着いた。ここで公演をやると言う事だ。

この町は興業が盛んなようで、町の一角に劇場がずらりと並んでいて、芸人集団が競い合っているのだ。

なんて素晴らしい。毎日見に行きたい。


だが、わたしたちもここの外れで明日から興業だ。専門家はこの一座にいないから、わたしの受け持つ時間はすべてわたしが、決める。嬉しいのか悲しいのか・・・・・

前世では大きな劇場でいろいろなものを見たが、町の広場で行われていたのは見たことがない。この一座を見たのが初めてだったのだ。

貴族の夜会の余興も思い出してみる。

確か・・・・(神秘の国から今日の為に、マジカルリリーさんが来てくださいました)で拍手してたんだよね・・・・


それとか(あの不思議子さんが来てます。この奇跡に感謝ーーーー)とか・・・・


(消えてしまう、花を惜しむ気持ちはみんな一緒です・・・・ですが今日の思い出は永遠です・・・・アリスさん・・)いや名前は変えよう。

(消えてしまう、花を惜しむ気持ちはみんな一緒です・・・・ですが今日の思い出は永遠です・・・・オージョさん・・)うん、これで行こう。

自分で言うのか?演技中は黙っているからいいか??



(それではお次はオージョさんの『はなびらの噴水』です。みなさん花を惜しみますね。花を惜しむ気持ちは一緒ですが、思い出は永遠です。どーぞお楽しみ下さい)

と自分で自分を紹介するとわたしは舞台に出た。

舞台用の派手なドレスを着てカーテシーをする。それから杖を取り出す。ドレスのポケットに隠せるのだ。

それで客を指して行きながら、目を合わせて微笑んで行く。ねらいはおばさまよ。

杖を今度は上に向けて動かすと小さな花びらが、残念ながらただの楕円形だ、杖から出て空中で舞う。

わたしも舞台の端から端まで、ゆっくりとワルツの回転の要領で周りながら移動する。

客に見えない位置でもう一本、杖を取り出すと、葉っぱのつもりの緑の楕円をくるくる出した。

花びらと葉っぱは客席の奥まで、ひらひら舞った。手を出してつかまえる人もいる。今は持っていられるけど、この舞台が終われば消えてなくなる。


そして終わりだ。花びらが一斉に舞台に戻って来る。わたしはもういちどカーテシーをした。そのわたしを花びらが取り囲む。その隙に急いで引っ込んだ。

あとは舞台袖から杖を操作して、花びらを回収する。ぱっと消してもいいけど演出上、回収するのだ。

そして、何もなくなった舞台に杖が一本残る。

これでわたしの舞台は終わり。そして

(今日は来ていただいてありがとうございます。今日の舞台をみなさまと一緒に作りあげられたことにオージョさんは感謝しております・・・・・本当にありがとうございました)

これで終わり、お客様は拍手してくださいまして、終わりになりました。



わたしは自分の口上で舞台を終えると、はーーと深く息を吐いた。

なんとか終わった。

「アリス、すごい。涼しい顔で、すごい。すごい」とマールが褒めてくれた。

わたしは

「ありがとう。しっかし、疲れたーーー」と言うとマールの肩によりかかった。



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