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旅立ち

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「夜会ですか?そうですね。誘われた時嬉しかったですよ。夜会出たことないし、あの夢の中に行けるって」

とわたしはため息まじりに話を続けた。


「ドレスもありがとうございます。夢の中より素敵でした。広間に入る時、注目を浴びて恥ずかしかったけど、わたしはあのお姫様だから、平気よ。と言い聞かせながら歩きました。

でも、その時。その時ですね。わたし後悔し始めたんですよ」と口を閉じて大きくため息をついた。それから

「足が痛くなったんです。ちょっと歩いただけでコルセットが苦しくなったんです。意識するとコルセットが痛い。苦しい。足が痛い。これがわたしの意識の大半になったんです。自分を鼓舞しながら、ダンスをしました。なんせお姫様ですからね。やっとお菓子と飲み物って時に変な女が来て、まぁお姫様仲間ですね。貴族ですね。腹が立ちましたね。わたしは苦しい思いをしてるのに、涼しい顔してるんですよ。

そんなことでお姫様って夢で見てる方がいいとわかりましたが、もう夢も見ませんね」

なんだか、みんな変な顔をしている。

「これが夜会についてですね。あっ王宮の暮らしは最高でした。食事は美味しい。マッサージは最高。さすがですね。ほんといい思いをしました」ここで立ち上がって

「まぁ体験してみてわかりました。わたしは貴族は無理だと」と言うと

「それでは、失礼します。平民に夢を見せてくれたありがとうございました」と背を向けた。



「団長さんお待たせしました」と戻ると

「ねぇあの人たち貴族でしょ。どうやって知り合った?」とマールが聞いて来たので

「うん、助けた事があるから、お礼を言いに来た」と答えると

「助けた?」

「勉強を教えたのよ」

「勉強?アリスは字が読めるの?」とマールが遠慮がちに聞いて来るので

「うん」と短く答えた。


ちょっと雰囲気が重くなったけど

「マールは苦手?」と聞くと

「うん、ちょっと苦手」

「手伝うよ。苦手な事は早めにつぶそう」と言うと

「ありがとう」と笑い、わたしの手を取り

「早く、馬車に乗ろう。あの馬車よ」と言いながら馬車を指さした。


◇◇◇◇◇

「お姫様になった夢を見たね」

「うそだよね。だけど証明できない」

「前世だったとか」と口にしたジェフはみなから頭を叩かれた。

「名ばかり貴族の家に生まれて、家庭教師もいない。冷遇されていたのは確か」

「ほんと。前世とか言われたほうが、信じるかも」

「だが、平民がどこに行こうが・・・・勝手だよな」

「なんというか、友達でいて欲しかった」とハリーが言うと

「確かに、虫除けにもなるし、話して楽しいし」

「前世、男だったとか。お姫様の相手をしていたからお姫様を知ってるんだ」と言ったジェフを見てハリーは

「そうかもな」と笑った。

「ほら、ハリー」そして小声で「殿下」と言って「ほら、僕たちがいるよ。楽しいよ。いいやつだよ」とローリーが背中を軽く叩いた。

「ありがとう。友情に感謝だよ」とハリーが言うと

「そろそろ帰りましょうか。馬鹿みたいですよ。こんな所で」とローリーが立ち上がり一同は、ハリーを囲んで歩み去った。
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