今世は好きにできるんだ

朝山みどり

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リンツ公爵家

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「そちらの家に居候していいですか?」と小娘に言われた公爵は口ごもった。

「いぃそぅ・・」そこでわたしは親切にもう一度言った。

「お宅に居候をしても良いですか?」

「居候だと!」

「はい、住むところがないのでここに居候してますが、おじさんはそれは良くないと今、教えて下さいました。とてもご親切です。だからこんどはおじさんが住むところを提供して欲しいです。お金がないので家賃を払えません。だから居候です。無理ならいいです」と言うと後ろのテレジアが、笑って

「良いのではありませんか?部屋は余ってますし」と言った。

「ありがとうございます。親しいお友達の家に引っ越すと言えば、送り出してくれます。皆さん心配性ですので、お友達の家に行くって言うのは、最大の安心材料です」

「お友達?」とテレジアは不愉快そうな顔をして呟いた。

「なるほど」とリンツ公爵は、わたくしを見ながら、言うとテレジアを振り返り

「すぐに準備をするように」と言いつけた。

「お父様」とテレジアの抗議の声に

「友人を暖かく迎える準備だ。急げ」と言っただけだった。

それからわたくしのほうを見て、

「えーーと」「アリスです」「そうだアリスだったな」

「アリス、部屋の片付けをして待っていてくれ、手続きをさせる」と笑って言った。

わたくしも負けずに笑って

「よろしく、おじさん」と答えた。




部屋に戻って荷物をまとめたが、下着と寝巻きくらいだ。

侍女二人にお礼として、花瓶の薔薇を目の色に加工したものを残した。


思ったより早く迎えが来てわたくしは、すんなりと王宮を出た。



わたくしひとりを乗せた馬車は、公爵家の表門から入った。出迎えは執事とメイドが一人だった。

案内された部屋は上等の客用寝室ではなく、予備室と言った感じだった。あまった部屋ですね。

テレジアは顔を出さなかった。お友達なのにひどいわね。

出迎えたメイドがわたくしに付くみたいだが、見張りもかねているのはよく、わかる。

わたくしとしても・・・・・あたしとしても・・・わたしとしても、ここで様子をみて隣国へ向かいたいから、これくらいがちょうどいいような気がする。



えーーと明日は学院に行ってしばらく休むと伝えて、魔石屋に行って、孤児院に行って、いや、孤児院は行かない。

平民は関わらない。とかいろいろ考えているとメイドが、お茶とバタートーストを持って来た。


「ありがとう。あなたの名前は」

「スージーです」

「スージーね。よろしく。食事は食堂に行くの」

「持って来ます」

「はい、お願いね。庭を散歩したいけど」

「聞いておきます」と言うとスージーは出て行った。


お友達にしては扱いは悪いけど、使用人ではないようね。ちょうどいいかなとトーストを齧った。

もう少しバターを塗って欲しいが、居候だ。贅沢は言えない。




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