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18 伯爵家の終わり
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オリビアは夜会の後、実家に戻っていた。静養の為だと神殿には届けていた。
夜会以来、父親の伯爵は家におらず、屋敷を守っていた兵も大半がいない。不安でパーシーに来てくれと使いを出すが忙しい、申し訳ないが会えないと返事が来るだけだった。
そんなある日、王都のはずれの森で伯爵一行が見つかった。
伯爵も兵も飲まず食わずで、森を彷徨っていたようだ。だがそれだけではなかったようで、兵も伯爵も理由のわからない事を口走りまともな会話はできなくなっていた。
伯爵家の執務を滞らせることは出来ないと城からパーシーと代行を派遣したが、彼らは伯爵の不正をどんどん見つけた。
代行はパーシーに遠慮していたが、パーシーは自分を気にすることなく不正を正すよう、代行に言いつけ人数を増やして徹底的に調査した。
その結果、伯爵家はなくなった。夫人は修道院に入った。
オリビアは聖女であると言う事で神殿に戻った。侍女は誰もついて行かなかった。
「エメ、やめる必要はないのよ。ついて来ていいのよ」とオリビアは言ったが、
「お嬢様、縁談がありますので」とエメはさっさとやめた。
オリビアは神殿に入ったが、パーシーは訪ねて来なくなり、魔力はあれから一度も蘇ることはなかった。
オリビアの魔力は枯れたと神殿の者はみなした。
「オリビア様、どうしますか?魔力の枯れた者はやめる事ができますが・・・残りたいならば下働きをして働く事が出来ます。それとも修道院に行きますか?北の修道院が見習いとして受け入れると言っていますが・・・
その見習いと言うのは下働きの事です。あそこは寒い所ですよ」
「なんですって・・・働きすぎで魔力がなくなったのよ。神殿のせいよ。責任をとって」
「ですから、追い出さずに下働きとしておいてあげると言ってるんです。出て行ってもいいんですよ」
「わかりました。下働きとして残ります」とオリビアは答えた。屈辱だった・・・どいつもこいつも・・・全てを恨んだ。
その夜ジェラルドの元へレイモンドがやって来た。
「ポーションが出来た」とテーブルに三本置いた。
「この間の怪我人がめまいに悩まされているから、これを飲ませてみよう」とジェラルドが言うと
「あぁ好きに使ってくれ・・・ロザリーの魔力はもういじらなくていいのか?」
「もういい。あれの役目は終わった。これからは聖女らしく神殿で慎ましく暮らして貰う」
「なるほど」
「レイモンドはあの畑に囲まれていればいいのか?」
「もちろんだ。いい暮らしだ」
「遊びに行ってもいいか?」
「いいぞ。手土産に気を使うな」
「御親切なことで」と言うとドアを使わずに姿が消えた。
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