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09 学院の夜会

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さて、学院の夜会が来週にせまって来た。これは授業の一環で行われる夜会だ。正式なものではないが、一度経験しておくと将来、役に立つらしい。

わたしは将来を考えるより、この夜会が単純に楽しみだった。

ドレスは母が張り切って選んでくれて、わたしの髪と目をひきたててくれる色合いらしい。情けないが、自分ではよくわからない。

そして、会場の待合室に行くと大半の子はもう来ていた。ひとしきり、お互いのドレスを褒め合って、ほんとうにみんな綺麗で素敵だった。

お喋りしていると箱が回って来た。男性用の箱と女性用の箱。なかに番号札が入っていて同じ番号札の男性と一緒に入場するのだ。

わたしの相手は、お顔は見覚えがあるけどってくらいの他のクラスの人だった。

「初めまして、クリフォード・メールバンです」

「初めまして、ミランダ・スチュワートと申します」

彼は感じのいい笑いを浮かべると、エスコートの為の腕を差し出した。その腕につかまるとなぜか安心した。

やがてわたしたちは会場に入った。王子殿下はこの夜会でも王子殿下の練習だった。

生徒が最上級の礼を取るなか、彼はランダさんをエスコートして入場した。

合図で礼を解いたわたしは、いつものように殿下の腕にからみつくランダさんを見た。彼女もわたしを見ていた。

そのときアナウンスがあって、音楽が流れて来た。

王子殿下はランダさんを中央へ連れて行った。それから二人は踊りだしたが、ランダさんのステップはあきらかにか違っている。緊張しているのかしら? 

何度も転びそうになる・・・すると音楽が途中を飛ばして、終幕となり綺麗に終わった。音楽を聴いていればここでポーズを決めて終わりとわかるはずなのに・・・周囲のみんなもわたしも、クリフォードさんも楽団の機転にほっとしていたのに・・・二人は緊張しすぎてわからなかったのかしら。

音楽が終わって驚いたようで、だけど殿下がなんとか最後のポーズを決めた。よろめいていたけど。

わたしたちはほっとして、我先に拍手した。ほんとにほっとして拍手した。

それから、また音楽が流れ始めて、わたしたちは踊ろうと準備を始めた。わたしはクリフォードさんに導かれて移動した。腰を抱き寄せられて微笑みを交わした。息を吸い込んだ。

「またですわ。またわたしの失敗を笑ってますわ」とランダさんの声がした。

また、わたしに向かっていうのかしらと声を方を見ると、ランダさんが殿下の胸に顔をよせていた。

「誰とは言いませんわ。笑っていますわ」とランダさんの声が聞こえたが、殿下の側近が彼らを取り囲むと、部屋から出て行った。

今のはなにと思ってクリフォードを見たが、彼も驚いているし、まわりの友人も戸惑っている。そこに音楽が大きく響いた。

それにつられてわたしたちは、一歩踏み出した。

浮かべていた微笑みがいつしか、本当の笑みに変わっていた。

二曲踊って、一休みした。彼から果実水のグラスを受け取って口に含むと少し熱い体に染み渡った。

「わたしはくじ運がいいようです」とクリフォードが言った。不意打ちだ。気の利いた言葉が出ない・・・

「・・・お互いに」やっとそれだけ絞り出した。軽はずみな発言だけど。はめを外した。


その後、エミリーを見つけた。エミリーの相手と踊った。クリフォードはエミリーと踊った。

踊りながら二人の様子をちらちら見てしまった。


もう一度クリフォードと踊って、バルコニーに出ようと思ったら、満員だった。

それで、それぞれ片手にグラスを持ったまま、庭に出た。

空いたベンチを見つけて腰を下ろすと、空を見上げた。

「今度、食堂でご一緒しても?」とクリフォードがささやいた。


「ふっふふ、賑やかなクラスですよね。どうぞ一緒に食べましょう」と答えると彼は目に見えて嬉しそうだった。







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