一年で死ぬなら

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
22 / 24

エドワード

しおりを挟む
あれから一年になる。幸いクレアは元気だ。でもいつ儚くなってもおかしくない。だから一秒でも目を離したくない。

それなのに・・・・・クレアの幸せが一番だ。わかっている。懐妊しているだと・・・・愛した男が・・・・そいつのそばに行かせてやらないといけないのはわかっている。わかっているが・・・・・


そこにある男が訪ねて来た。ジャック・ルベール。

俺は立ち尽くした。動けなかったのだ。視界をすべて塞がれてじっと見透かされた。

「お前がクレアの」と聞こえた。

場違いに小さな、場違いに上流の言葉だった。

相変わらず俺は動けなかった。

「お前か?クレアを身ごもらせたのは」

小さく首を振った。俺は彼女にふれてない。

「違うのか?」

「クレアに不満があるのか?クレアじゃ足りないのか?」

「不満など・・・・」

「身ごもらせたのは誰だ?」

必死で首を振った。

ジャック・ルベールは一歩なかに入るとドアを閉めた。

俺はよろよろと客間に案内した。

彼はどっかと椅子に座ると

「つまり、クレアは身ごもっているが、相手はおまえじゃない。おまえは結婚しているなクレアと」

「おまえがろくでなしだから、クレアは他の男の子を身ごもったってことだな」

確かにおれはろくでなしだが・・・・

「さっさと消えな。クレアが幸せになれない」

「あの・・・わたしはクレアを愛しています」

「愛しているだと!じゃあ、何故クレアは他の男の子を身ごもっているんだ。ろくでなしの分際でクレアの名を呼ぶな」

「は・はい」

「いいか、さっさと出て行って二度とクレアに会うな」

「い・い・いえ」

「さっさと言え」

「クレアを愛しています」必死で俺がそう言うと

「お前ごときが名前を呼ぶな」と言いながら俺の胸ぐらをつかんで思い切り揺すぶった。

「ぐぅ、ぐぇ、ぐぅ」

息が出来ない・・・・

「ジャック、いるんだろ。ジャック」

「エド、エド、生きてる?エド。お父様。お父様」

胸ぐらを掴んでいた手を離すと、戸口に行きドアを開けると

「クレアかい、おいで。待ってよく見せて。クレア。可愛いクレア」とジャックはクレアを抱きしめていた

「リチャード、へんなやつがクレアに付いたじゃないか。ちゃんとしてくれよ。始末してるとこだったけどな」


「お父様、エドは変じゃありません」

「ジャック、ちゃんと話そう」

「そうだな、クレア。ここはよくない。別の所へ」

「いえ、お父様。ここで」

「エド、そんなところに座ってないでここに来て座れ」とリチャード伯父さんが

「エド、大丈夫。お父様は直情的だから」

「クレア、誤解を招く言い方はよくないな」とジャックが涼しい顔で言っている。実に優雅だ・・・・

「わたしがお茶を入れます、クレアも座って」と言うと

「お菓子を包んでもらった」とリチャード伯父さんが包みを出すので皿を渡した。



お茶を配って席に付くとリチャード伯父さんが

「いろいろ誤解があるようだから、わたしが話す。その説明する。順を追って話すから聞いてくれ。ジャックは静かにしろ。二人の問題は解決している」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

旦那様はとても一途です。

りつ
恋愛
 私ではなくて、他のご令嬢にね。 ※「小説家になろう」にも掲載しています

【本編完結】記憶をなくしたあなたへ

ブラウン
恋愛
記憶をなくしたあなたへ。 私は誓約書通り、あなたとは会うことはありません。 あなたも誓約書通り私たちを探さないでください。 私には愛し合った記憶があるが、あなたにはないという事実。 もう一度信じることができるのか、愛せるのか。 2人の愛を紡いでいく。 本編は6話完結です。 それ以降は番外編で、カイルやその他の子供たちの状況などを投稿していきます

愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう
恋愛
フルリス王国の公爵令嬢ロメリアは、幼馴染であり婚約者でもある騎士ガブリエルのことを深く愛していた。けれど、生来の我儘な性分もあって、真面目な彼とは喧嘩して、嫌われてしまうばかり。 「……今日から、王女殿下の騎士となる。しばらくは顔をあわせることもない」 彼から、そう告げられた途端、ロメリアは自らの前世を思い出す。 (なんてことなの……この世界は、前世で読んでいたお姫様と騎士の恋物語) そして自分は、そんな2人の恋路を邪魔する悪役令嬢、ロメリア。 (……彼を愛しては駄目だったのに……もう、どうしようもないじゃないの) 悲嘆にくれ、屋敷に閉じこもるようになってしまったロメリア。そんなロメリアの元に、いつもは冷ややかな視線を向けるガブリエルが珍しく訪ねてきて──……!?

処理中です...