一年で死ぬなら

朝山みどり

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手続き完了

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伯父の家を出ると待たせていた馬車に乗って、役所で手続きを終えた。

最初だからと細かい説明もちゃんと聞いたが、予想が当たった事に笑いがでた。


管理人の名前でちょくちょく引き出されていたが、今日の一番でそれが補填されていた。

これについて問いただす気はない。引き出された日と金額を確認するクレアを、係員がはらはら見ているのに気づいたが、安心させる為に笑いかけることはしなかった。

そして最後に今日の入金額を口に出して読み上げると、余分に入金された金額を引き出すよう頼んだ。

渡された封筒の中身をきちんと数えてから、バッグに入れると立ち上がった。

「今後もお任せ頂けるので?」と係員が言うのに

「えぇお願いするわ」とクレアは答えた。




クレアは洋品店に寄った。前にハンカチを買ってもらって以来、つきあいは続き最近では服を預かって刺繍をいれる仕事も引き受けている。

そしてクレアはここで普段着を作ってもらっている。

なんの飾りのないワンピースを作って貰いそれにレースや刺繍で変化をつけてクレア自身が着ているのだ。

今日は頼んでいたワンピースを引き取りに来たつもりだったが、この洋品店で働ける子を紹介して欲しいと頼まれた。

クレアのやっている事を参考に、既製品を売る時に少し、細くしたり丈を詰めたりするとそれ人気をなって、すぐに対応出来る縫い手が必要になったと言うのだ。

話を聞くとクレアの頭に、二つの顔が浮かんだ。話してみると言う事で洋品店を出た。


お昼はエドワードと待ち合わせて一緒に取った。

エドワードは普通と違いすぎる結婚事情など忘れたように、甘く蕩ける態度でクレアに対する愛情を表現する。

今もクレアを見るなり飛んで来て手の甲にキスをしている。クレアもどうせ死ぬんだからとノリノリでにっこりと愛された妻の顔を見せている。

「今日はお昼に会えると思うと仕事が楽しかった。君と食べるお昼は夢を食べるようだろうね」

「あなたの詩人ぶりも板についてきましたね」と揶揄う新妻に

「あなたと結婚できたわたしはずっと詩人ですよ。得られた幸運に戸惑う子羊です。美しい人」

と言いながら、牛のステーキにナイフを入れ

「この鶏肉はロースト具合がいいですね」とクレアが答えれば

「あなたは鶏肉すらも黄金に変える」と返した。

「まわりに聞こえてないですよね」とクレアが言うと

「大丈夫ですよ。美味しそうに食事してる仲良しに見えるだけです」

「確かにここ、美味しいですね。デザートはどんなでしょう」




期待通りのデザートを食べるクレアを見ながらエドワードは、この幸せがずっと続くならばなにもいらないと思い、いやいや先を考えるな今を大事にと、振り絞るように思った。



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