一年で死ぬなら

朝山みどり

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出ていく

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クレアは部屋に戻るとノートに手紙を書き始めた。先ず、ルビーに生徒会の仕事を手伝えない事と今後レポートの作成や授業ノートを渡せない事、親戚の女子会の下準備ができないこと、刺繍のハンカチを今回は一枚も渡せない事、意地悪侍女から助けてもらった恩を全部返せない不義理も詫びておいた。

お祖母様には単純にお別れとローズを助けたい事。担任には学院を退学する事と、挨拶をせずに出ていくことを詫びた。

ローズは街の外側に住んでいる。多分三時間も馬車に乗れば着くはず。たったそれだけの距離が遠かったのだ。

馬鹿馬鹿しい、大事なものをなくす前に余命一年になってよかった。クレアは心からそう思った。


外出許可をもらったクレアは小さなカバンを持って学院をでた。先ず、洋品店に入った。応対にでた店主にハンカチを見せて自分で刺繍した物だと話し、買取してもらいたいと頼んだ。

ハンカチを見た店主は刺繍の細かさを見てとり、全部買い取った。示された金額はクレアが思ったより高かった。

その上、また持ってきて欲しいと言われて、クレアは行先に明かりが灯ったような気がした。


馬車はとても乗り心地が悪かったけど、車輪の一回り毎にローズに近づいていると思うとクレアはそれもうれしかった。


馬車を降りたクレアはローズに聞いていた通りに歩いて行った。

埃っぽい、殺風景な道を歩くクレアはそこだけ花が咲いたようだった。

やがて一軒の家の前にたったクレアは、門をあけた。


庭は荒れていて、玄関に続く小道は草におおわれていたが、裾にまつわるハーブが思いがけず香しかった。

玄関のベルを鳴らしたが、返事がなかった。ふとみると窓が開いている。クレアは迷うことなく窓からなかにはいった。

入るとすぐが台所、ドアを開けると寝室でローズが横になっていた。


「盗るもんなんてないよ」

「ローズ、私よ。私の話しを聞いてよ。一緒に過ごしましょ。会いたかった」


「もう、プリングルがここに来てはいけないわ」

「プリングルなんて言われたくないわ」

「いいえ、あなたはプリングル。骨の髄までね」

「いやだー」

「でも会えてうれしいけど、ここに来るのはよくないわ」

「平気よ。お茶入れるわ」

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