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第三章 ある破局

03 醜聞

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エドワードのいらつきは頂点に近かった。

マギーを見ればさっさと帰れと思い、エリサを見れば帰るように言えと思ってしまうのだ。
勿論、自分が言うのが一番だとわかっているが言えなかった。だからいらついた。

エリサの柔らかい身体はそばにあるのにお預けなのだ。

休みの日、エリサを誘ってそういうホテルに行こうとしても、マギーが外出についてくるのだ。
欲しいものがあれば買わされ、ぜいたくな店で食事をしてひとりだけ楽しくすごして意気揚々と家に戻るのだ。

ある夜、1年目の記念日に飲もうと新婚旅行先で買っていたワインをマギーが見つけ出して、勝手に飲みはじめてしまった。

さすがにエリサが抗議したが

「ワインくらいなによ、ねぇ兄さん。それよりつまみがしょぼい。なにか買ってきて」
「もう遅いから、行かなくていいぞ」
「そうやって甘やかすからこの人、付け上がるのよ。なにその態度。さっさと行って」
エリサは助けを求めてエドワードを見たが、無言のエドワードにあきらめて出て行った。

さすがにエドワードは引き止めようと席を立ったがマギーに腕を引っ張られて
「いいのよ、いい薬よ」と言われてタイミングを逸してしまった。

情けないやつだという自覚はあるので酒が進んでしまったエドワードはマギーの顔もみたくなくなり、ワインの瓶とグラスを持つと寝室に移動した。

マギーも文句の続きとばかりグラスを持って2人の寝室へはいった。



激しくドアを叩かれてエドワードは目を覚ました。団長がエリサを横抱きにして立っていた。その隣にダリル夫人がいて大声を出している。

「・・・だい!」
なんと言ってるんだ?

「この恥知らず、あんたたち実の兄妹きょうだいだろ。ずうずうしく家に連れ込んで」

エドワードは飛び起きようとしたが、そのまま凍りついた。横に寝ているのがマギーだと気づいたからだ。

家の外でダリル夫人が大声で近所の人に詫びている。

「すみませんねぇ、大声出しちゃって。ここのご主人が妹さんとベッドで寝ていたから、びっくりしてね。つい大声が出て・・・・皆さんを起こしてしまって・・・・だってびっくりしたんでね。妹とベッドにいたんだよ」


最悪だとエドワードは頭をかかえた。


エリサはまた馬車に戻り、ダリル夫人も同乗し去って行った。



しばらくするとエドワードは制服を着て家を出て、詰所に向かった。

エドワードは詰所にやってきたが団長は不在だった。団員はエドワードを見たがなにも言わなかった。

そういえばエリサは団長が抱いて出て行った。なにがあったのだ?

団員は忙しく出入りして捜索状況を報告しては次の指示で出て行った。たまにチラッとエドワードに目を向ける者もいたがその目は侮蔑に満ちていた。

エドワードは身の置き所がなかったが、隅に立って団長が戻るのを待っていた。

昼近くなって団長が戻って来た。エドワードを見ると部屋に来るように言った。

「状況をどれくらいわかっているか?」

「団長に抱かれてエリサが戻って来ました。怪我をしたのでしょうか?今どこに?すぐ行かないと・・・・どこですか?」

最初、声を落として話していたエドワードはだんだん声を荒らげて団長に詰め寄った。

「確かに怪我をした。暴漢に襲われた」

「なぜあの時間にひとりでだした?いやじっくり話さないといけないが・・・・奥さんとも話さないといけないし・・・・まだあの妹は家にいるのか?」

「わかりません」

「すぐに追い出せ。それからもう一度戻って来い。先ず追い出せ」
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