7 / 17
第二章 奪ってやる
07 生贄・・・その名も・・・
しおりを挟む
カイルに誘われて、久しぶりで庭でくつろぐミリアムは、いつしかうとうとしていた。
人の気配で意識が戻ると
「おばさん、寝ちゃってるの?いい身分ね」とケティの声がした。
「ミリアム、お客さんだよ」と言うカイルの声に目を開けた。
「お邪魔してます。ミリアさん」
「よくいらっしゃいました」と答えると
「ミリアム、すまないけどお茶の用意をお願いできますか?ケティに庭を見せたいので」
「すごーーい」と言いながらケティがカイルの腕にじぶんの腕を絡ませた。
「わかったわ」とミリアムは家に戻った。
お湯の準備をすると自室へ行き、小瓶を持って台所に急いだ。
お茶のポットとカップをお盆に乗せると庭に戻った。
わざとらしいケティの声が聞こえた。
「もう、カイルひどいわーー」
ミリアムの中のなにかが切れた。ミリアムは小瓶を開けると中身をカップに入れた。
「早くお茶が冷めるわ」
「はーーい」と二人が戻って来た。
ミリアムはお茶を飲み、小さなビスケットを口にした。
ケティもビスケットをバリバリ食べながらお茶を飲んだ。
「冷めてる方がすぐ飲めていいね」と全部飲み干した。すぐにカイルがお代わりを注いだ。
それを半分ほど飲んだケティが、急に
「お腹が痛い・・・苦しい」と口を押さえて言い出した。
ガチャっとミリアムがカップを置いた。
「医者に連れて行く」とカイルはケティを横抱きにすると自動車へ急いだ。
「苦しーー」と言いながらケティはカイルの首にしがみ付いていた。
それを見送るミリアムの顔は真っ青だった。
何度か深呼吸して落ち着いたミリアムはお茶を注いで一気に飲んだ。
「しっかりしなさいミリアム。証拠を消す。出来るよね」ミリアムは自分を励ますのだった。
手の震えがおさまるまで待ってから、ポットとカップをお盆に乗せるとしっかりした足取りで家にはいった。
カップを念入りに何度も洗い、ポットも洗った。小瓶も何度もすすいだ。
それから薬の棚から頭痛薬を一本持ってくると、蓋を開け中身を半分毒薬がはいっていた小瓶に移した。
それぞれに水を足すと棚にしまった。
さっそく一本飲みたいが、カイルに飲むところを見せたほうがいい。いまは我慢・・・・・
ミリアムは寝室に行くと横になった。カイルの首に巻き付いた白い腕の映像はミリアムを眠らせなかった。
自動車が門をでるとケティが笑った。
「あの、おばさん腹痛ぐらいで真っ青になるなんてどんだけ甘えてんのよ」
「繊細な人だから」
「ほんとにお嬢さんっていうのは」
「あそこまでショックを受けるとは」とカイルが言うと顔を顰めた。それから後ろの座席に置いてあるワインを指差して、
「くすねたんだ。飲みかけだけど上等だ。お嬢様のお口に合いますよ」と笑った。
「いいね、気が利くね。あたしの口も固くなるよ。うちの父ちゃんは車の整備はきちんとする人なんだ。タイヤが吹っ飛ぶなんてまずないね。誰かがやったんだ」
「よっぽど、あの女恨まれていたのかな?」とカイルが答えると
「あたしが夜中に誰かがタイヤの所にいたと、証言したらどうなると思う?」
「どうにもならない。多分相手は大物」
「そうかな、あの繊細な人がどうなると思う?」
カイルは黙って前方を見つめた。
「あの人を部屋に閉じ込めたらあんたとあたしで、あの家好きにできるんじゃ?」
自動車を路肩に止めると
「いいね、思ったより悪くていい女だ」
「あんたもね」
「近くまで送ったら一度帰るわ。様子を確認しとくわ」
「それがいいかも、今晩待ってるから」
「あぁ眠らせてから行くよ」
二人はそれぞれの思いを胸に黙った。
人の気配で意識が戻ると
「おばさん、寝ちゃってるの?いい身分ね」とケティの声がした。
「ミリアム、お客さんだよ」と言うカイルの声に目を開けた。
「お邪魔してます。ミリアさん」
「よくいらっしゃいました」と答えると
「ミリアム、すまないけどお茶の用意をお願いできますか?ケティに庭を見せたいので」
「すごーーい」と言いながらケティがカイルの腕にじぶんの腕を絡ませた。
「わかったわ」とミリアムは家に戻った。
お湯の準備をすると自室へ行き、小瓶を持って台所に急いだ。
お茶のポットとカップをお盆に乗せると庭に戻った。
わざとらしいケティの声が聞こえた。
「もう、カイルひどいわーー」
ミリアムの中のなにかが切れた。ミリアムは小瓶を開けると中身をカップに入れた。
「早くお茶が冷めるわ」
「はーーい」と二人が戻って来た。
ミリアムはお茶を飲み、小さなビスケットを口にした。
ケティもビスケットをバリバリ食べながらお茶を飲んだ。
「冷めてる方がすぐ飲めていいね」と全部飲み干した。すぐにカイルがお代わりを注いだ。
それを半分ほど飲んだケティが、急に
「お腹が痛い・・・苦しい」と口を押さえて言い出した。
ガチャっとミリアムがカップを置いた。
「医者に連れて行く」とカイルはケティを横抱きにすると自動車へ急いだ。
「苦しーー」と言いながらケティはカイルの首にしがみ付いていた。
それを見送るミリアムの顔は真っ青だった。
何度か深呼吸して落ち着いたミリアムはお茶を注いで一気に飲んだ。
「しっかりしなさいミリアム。証拠を消す。出来るよね」ミリアムは自分を励ますのだった。
手の震えがおさまるまで待ってから、ポットとカップをお盆に乗せるとしっかりした足取りで家にはいった。
カップを念入りに何度も洗い、ポットも洗った。小瓶も何度もすすいだ。
それから薬の棚から頭痛薬を一本持ってくると、蓋を開け中身を半分毒薬がはいっていた小瓶に移した。
それぞれに水を足すと棚にしまった。
さっそく一本飲みたいが、カイルに飲むところを見せたほうがいい。いまは我慢・・・・・
ミリアムは寝室に行くと横になった。カイルの首に巻き付いた白い腕の映像はミリアムを眠らせなかった。
自動車が門をでるとケティが笑った。
「あの、おばさん腹痛ぐらいで真っ青になるなんてどんだけ甘えてんのよ」
「繊細な人だから」
「ほんとにお嬢さんっていうのは」
「あそこまでショックを受けるとは」とカイルが言うと顔を顰めた。それから後ろの座席に置いてあるワインを指差して、
「くすねたんだ。飲みかけだけど上等だ。お嬢様のお口に合いますよ」と笑った。
「いいね、気が利くね。あたしの口も固くなるよ。うちの父ちゃんは車の整備はきちんとする人なんだ。タイヤが吹っ飛ぶなんてまずないね。誰かがやったんだ」
「よっぽど、あの女恨まれていたのかな?」とカイルが答えると
「あたしが夜中に誰かがタイヤの所にいたと、証言したらどうなると思う?」
「どうにもならない。多分相手は大物」
「そうかな、あの繊細な人がどうなると思う?」
カイルは黙って前方を見つめた。
「あの人を部屋に閉じ込めたらあんたとあたしで、あの家好きにできるんじゃ?」
自動車を路肩に止めると
「いいね、思ったより悪くていい女だ」
「あんたもね」
「近くまで送ったら一度帰るわ。様子を確認しとくわ」
「それがいいかも、今晩待ってるから」
「あぁ眠らせてから行くよ」
二人はそれぞれの思いを胸に黙った。
145
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
業腹
ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。
置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー
気がつくと自室のベッドの上だった。
先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた
(完)私を裏切る夫は親友と心中する
青空一夏
恋愛
前編・中編・後編の3話
私を裏切って長年浮気をし子供まで作っていた夫。懲らしめようとした私は・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風。R15大人向き。内容はにやりとくるざまぁで復讐もの。ゆるふわ設定ご都合主義。
※携帯電話・テレビのある異世界中世ヨーロッパ風。当然、携帯にカメラも録音機能もありです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる