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第一章 なにも奪わせない
02 拾い物・・・その名はカイル
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いきなり走り出てきて馬車の前に倒れ込んだ子供をわたしは屋敷に連れ帰った。
医者を呼んで手当をした。
子供が目を開いてわたしを見た、守らねばと思った。
すると重石がストンと消えた。
使用人は推薦状を書いてやめてもらった。屋敷も売った。爵位は返上した。
呆れる使用人から、家事も一通り教えてもらった。
田舎に行く勇気はなかったので、王都のはずれに小さな家を買って二人で住んだ。子供の頃に読んだ絵本を読んでやったり、一緒におやつを作ったり楽しく過ごした。
カイルと名付けた彼は、五年でわたしの背を追い越した。十年たった今はわたしの世話を焼いている。
夜ふかししていると部屋にやってきて寝かしつけようとする。彼が子供の頃にわたしが彼にやっていたそのままに・・・・
「そう、あのときのサミエルったら、わたしの為に、・・・・・・ねぇ聞いてるの。それから飲むものが欲しいわね。それブランデー?アル中はまだ治ってなかったの?」
物思いにふけってしまった。
「ううん、これはお弔いのお酒よ。カイル。ミザリーさんに果実水を・・・・お肌の為に午前中はお酒もお茶も避けないとね・・・・・年には勝てないから」
厚化粧で誤魔化しても目尻が・・・・
「年なんて・・・・ブランデーを頂くわ」とミザリーはカイルに笑いかけた。
「カイルあなたは好きに過ごしていてね」
ミザリーにグラスを持って来たカイルにそう言うと、黙って頭を下げて生垣の剪定を続けた。
それからわたしたちは、サミエルの思い出を話した。
「えぇ、サミエルったらわたくしの朝ごはん用に苺農園を買い取ったりして・・・・仕方のない人だった」
「優しい人だったから・・・・」
「ごめんなさいね、あなたと結婚しているときは地味な生活だったのよね」と言うミザリーの声はしっかりと勝者の響きがあった。
あなたは彼のお金を取り上げて彼を放り出したのよね。放り出された彼は世間から消えた。あんな死に方をしなければ消えたまま、忘れられたままだったのに・・・・凄惨な殺人事件の被害者になった彼は再び脚光を浴びたのだ。
彼の死を報ずる新聞の一面は彼とミザリーの結婚写真だった。ミザリーの流し目は売れ行きに貢献してるだろう。
「えぇ彼がお金を持った途端にハイエナが群がってきたわ」とハイエナはおまえだと思いを込めた言ったが何も感じないだろう。
「そうだったわ、彼が食い物になるのをみてられなかったわ。彼、ひどく傷ついて・・・」
一番食ったのはあなたでしょ。
「あなたにはほんとうに悪かったわね。彼がわたしを離さなくなってしまって・・・・・わたし悩んだのよ。あなたのもとに帰ってあげてって何度も言ったの・・・・・だけど彼言うことを聞かなくて・・・あなたがお酒に・・・・」
「いいのよ、わたしが弱かっただけだし・・・・・あなたのせいじゃないわ」
「そう、言っていただけると・・・・・ほんとよ。誓ってもいいわ。ずっと謝りたかったの」
「気にしないで」
「それでね、サミエルのお葬式に一緒に行きましょ」
「行かないわ」
「そう言わないで・・・・彼が一番愛した女と二番目に愛した女が、見送るって最高でしょ」
「行かないわ・・・・カイル。ミザリーさんがお帰りよ」
すぐにカイルは、やって来て
「リア、お疲れ様」と言うと門を開けに行こうとした。
「ちょっとミリアム、使用人のしつけがなってないわよ。ちゃんとエスコートして」とカイルを獲物のように見ながら言った。さすがの微笑みだった。
「しまった。そうだったね、リア。おばさんには親切にだった」と言うと優雅に手を差し出した。
ミザリーは一瞬、顔を歪めると、カイルの頬をバンと打った。
カイルは
「痛え、おばさん、力強いんだね。リア、僕なにかいけなかった?」と無邪気に両手を広げて、処置なしポーズをしながらわたしに言った。
「いいえ、おばさ・・・いえミザリーが酔った?だけ」
「ミザリーってあの新聞の花嫁さん?全然違うからわからなかった」
「覚えてなさい・・・・」そう言うとミザリーはまた、小道を戻って行ったが、足を取られて転んだ。
カイルは
「あぁおばさん、危ないよ・・・・酔ったんでしょ」と言いながら駆けつけると手を取って自動車まで連れて行った。
ミザリーはカイルを見上げながら、なにか言いながら彼の手を取っていた。運転手は二人から目を背けていた。
男の好みが同じ・・・・背中に冷たいものが流れた・・・
医者を呼んで手当をした。
子供が目を開いてわたしを見た、守らねばと思った。
すると重石がストンと消えた。
使用人は推薦状を書いてやめてもらった。屋敷も売った。爵位は返上した。
呆れる使用人から、家事も一通り教えてもらった。
田舎に行く勇気はなかったので、王都のはずれに小さな家を買って二人で住んだ。子供の頃に読んだ絵本を読んでやったり、一緒におやつを作ったり楽しく過ごした。
カイルと名付けた彼は、五年でわたしの背を追い越した。十年たった今はわたしの世話を焼いている。
夜ふかししていると部屋にやってきて寝かしつけようとする。彼が子供の頃にわたしが彼にやっていたそのままに・・・・
「そう、あのときのサミエルったら、わたしの為に、・・・・・・ねぇ聞いてるの。それから飲むものが欲しいわね。それブランデー?アル中はまだ治ってなかったの?」
物思いにふけってしまった。
「ううん、これはお弔いのお酒よ。カイル。ミザリーさんに果実水を・・・・お肌の為に午前中はお酒もお茶も避けないとね・・・・・年には勝てないから」
厚化粧で誤魔化しても目尻が・・・・
「年なんて・・・・ブランデーを頂くわ」とミザリーはカイルに笑いかけた。
「カイルあなたは好きに過ごしていてね」
ミザリーにグラスを持って来たカイルにそう言うと、黙って頭を下げて生垣の剪定を続けた。
それからわたしたちは、サミエルの思い出を話した。
「えぇ、サミエルったらわたくしの朝ごはん用に苺農園を買い取ったりして・・・・仕方のない人だった」
「優しい人だったから・・・・」
「ごめんなさいね、あなたと結婚しているときは地味な生活だったのよね」と言うミザリーの声はしっかりと勝者の響きがあった。
あなたは彼のお金を取り上げて彼を放り出したのよね。放り出された彼は世間から消えた。あんな死に方をしなければ消えたまま、忘れられたままだったのに・・・・凄惨な殺人事件の被害者になった彼は再び脚光を浴びたのだ。
彼の死を報ずる新聞の一面は彼とミザリーの結婚写真だった。ミザリーの流し目は売れ行きに貢献してるだろう。
「えぇ彼がお金を持った途端にハイエナが群がってきたわ」とハイエナはおまえだと思いを込めた言ったが何も感じないだろう。
「そうだったわ、彼が食い物になるのをみてられなかったわ。彼、ひどく傷ついて・・・」
一番食ったのはあなたでしょ。
「あなたにはほんとうに悪かったわね。彼がわたしを離さなくなってしまって・・・・・わたし悩んだのよ。あなたのもとに帰ってあげてって何度も言ったの・・・・・だけど彼言うことを聞かなくて・・・あなたがお酒に・・・・」
「いいのよ、わたしが弱かっただけだし・・・・・あなたのせいじゃないわ」
「そう、言っていただけると・・・・・ほんとよ。誓ってもいいわ。ずっと謝りたかったの」
「気にしないで」
「それでね、サミエルのお葬式に一緒に行きましょ」
「行かないわ」
「そう言わないで・・・・彼が一番愛した女と二番目に愛した女が、見送るって最高でしょ」
「行かないわ・・・・カイル。ミザリーさんがお帰りよ」
すぐにカイルは、やって来て
「リア、お疲れ様」と言うと門を開けに行こうとした。
「ちょっとミリアム、使用人のしつけがなってないわよ。ちゃんとエスコートして」とカイルを獲物のように見ながら言った。さすがの微笑みだった。
「しまった。そうだったね、リア。おばさんには親切にだった」と言うと優雅に手を差し出した。
ミザリーは一瞬、顔を歪めると、カイルの頬をバンと打った。
カイルは
「痛え、おばさん、力強いんだね。リア、僕なにかいけなかった?」と無邪気に両手を広げて、処置なしポーズをしながらわたしに言った。
「いいえ、おばさ・・・いえミザリーが酔った?だけ」
「ミザリーってあの新聞の花嫁さん?全然違うからわからなかった」
「覚えてなさい・・・・」そう言うとミザリーはまた、小道を戻って行ったが、足を取られて転んだ。
カイルは
「あぁおばさん、危ないよ・・・・酔ったんでしょ」と言いながら駆けつけると手を取って自動車まで連れて行った。
ミザリーはカイルを見上げながら、なにか言いながら彼の手を取っていた。運転手は二人から目を背けていた。
男の好みが同じ・・・・背中に冷たいものが流れた・・・
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