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第14話 チャラチャラした男
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ミツジことミツジロウはカモを探している。最近、江戸を騒がす盗賊が、カモを賭場で見つけているとうわさが立って取締が強化されてやりにくかったが、そっち方面の疑いが晴れて最近はカモが増えて来た。お頭が言った通り博打はなくならない。次の仕事を最後にするとお頭が言っている以上半端なカモはいらない。
ミツジは軽口で相手を笑わせながら付け入るスキを探す。
最初は簡単だった。飲み屋で同郷だと言って飲ませて酔わせて、酔ったふりをすれば気のいいやつが連れて帰ってくれた。それが思ったより大店だった。翌朝お礼を言って店をでたがしばらくしてもう一度泊まり、仲間を引き入れた。
浅生屋のときはあの手代が賭場に来たのだ。聞くと家を継いだ兄が博打に手を出して妹を売ると聞いて救うために仲間から金を借りてやって来たとか。
「いい仲間だな」と話しかけたら浅生屋の手代だとわかった。
一度おけらになった男にミツジは金を貸した。
「俺は妹を助けられなかった。兄貴は助けてやってくれ」と言って。
手代は見事に勝ったが、勝ちすぎて渡すお金が足りなかった。
「兄貴、残りは俺が届ける。すぐにこれを届けて家族を安心させてやってくれ」とミツジは手代を帰した。
それからミツジは巾着に入れた金を手代に届けた。
博打の金を届けたミツジを手代と、手代から話を聞いた仲間は信用した。
そしてあの日、追われていると言った傷だらけのミツジを、手代は部屋に匿ってくれた。その夜ミツジは盗賊仲間を引き込んだ。
『しかし、カモがいねぇなぁ』と歩いていると綺麗な娘としゃきっとした年増と小僧さんが連れ立って歩いている。
ミツジはうっかり見惚れてしまい
「おっとすまねぇ」とぶつかった相手に謝った。
「おう、綺麗な姉ちゃんがいたんじゃ仕方ないな」と相手は笑った。
「すまねぇ」と手で拝んであたりを見ながら歩いた。
この先は小間物屋の大店「美也子屋」がある。手代とぶつかってみるかなと裏に回ると女中がひとり出て来た。裏の小さな神社に入ると社殿の階段に座って泣いていた。
「おや、嬢ちゃん邪魔したかい」と物音を聞いて顔をあげた女中に話しかけた。思った通り女は泣いていたようだ。
「ほお嬢ちゃんは泣いても美人だ。得だね」とミツジは言うと
「折角、美人を見つけたんだ。名乗っておこう。俺はミツジロウってんだ。ミツジと呼んでくれ。いいね、これも神社のご利益かね。拝んでおくか」とミツジは柏手を打つと
「神様ありがとうございます。ご利益があると言いふらします」と大声で言った。
おもわずシズはふっと笑った。
「笑うともっと美人だね」と言ったあとで芝居気たっぷりに
「しまった。美人を慰める役得をみすみす逃した。娘さんもう一回泣いて」と言った。
シズはたまらず吹き出した。
「よかった、ほんとに笑ってくれた。おっと時間だ。これでも忙しいのよ。またね。美人の嬢ちゃん」と言うとミツジはさっさと歩き去った。
ミツジが歩み去る後ろ姿を別の娘が見送っていた。半泣きで飛び出したシズを慰めようと追ってきたキヨだ。キヨはミツジのことを見知っていた。軽そうな見た目ながら正義感が強いのを知っている。
どこかの小僧さんがなんくせをつけられているのを助けたところを見たことがあるのだ。泣いていた小僧さんを優しく慰めていた。その人がシズを慰めて美人さんと言っていたのだ。キヨはシズが羨ましくて少し妬けた。
通りにでたミツジは『おや』と思った。
先ほどの小僧が歩いていたのだ。なにやら大事に捧げ持っている。なんだろうと思ったが、横目で見ながらすれ違った。
カモが見つかるまで、さっきの娘と遊んでみるかとミツジはもう一度偶然会うにはどうしたらいいかと考えた。
ミツジは軽口で相手を笑わせながら付け入るスキを探す。
最初は簡単だった。飲み屋で同郷だと言って飲ませて酔わせて、酔ったふりをすれば気のいいやつが連れて帰ってくれた。それが思ったより大店だった。翌朝お礼を言って店をでたがしばらくしてもう一度泊まり、仲間を引き入れた。
浅生屋のときはあの手代が賭場に来たのだ。聞くと家を継いだ兄が博打に手を出して妹を売ると聞いて救うために仲間から金を借りてやって来たとか。
「いい仲間だな」と話しかけたら浅生屋の手代だとわかった。
一度おけらになった男にミツジは金を貸した。
「俺は妹を助けられなかった。兄貴は助けてやってくれ」と言って。
手代は見事に勝ったが、勝ちすぎて渡すお金が足りなかった。
「兄貴、残りは俺が届ける。すぐにこれを届けて家族を安心させてやってくれ」とミツジは手代を帰した。
それからミツジは巾着に入れた金を手代に届けた。
博打の金を届けたミツジを手代と、手代から話を聞いた仲間は信用した。
そしてあの日、追われていると言った傷だらけのミツジを、手代は部屋に匿ってくれた。その夜ミツジは盗賊仲間を引き込んだ。
『しかし、カモがいねぇなぁ』と歩いていると綺麗な娘としゃきっとした年増と小僧さんが連れ立って歩いている。
ミツジはうっかり見惚れてしまい
「おっとすまねぇ」とぶつかった相手に謝った。
「おう、綺麗な姉ちゃんがいたんじゃ仕方ないな」と相手は笑った。
「すまねぇ」と手で拝んであたりを見ながら歩いた。
この先は小間物屋の大店「美也子屋」がある。手代とぶつかってみるかなと裏に回ると女中がひとり出て来た。裏の小さな神社に入ると社殿の階段に座って泣いていた。
「おや、嬢ちゃん邪魔したかい」と物音を聞いて顔をあげた女中に話しかけた。思った通り女は泣いていたようだ。
「ほお嬢ちゃんは泣いても美人だ。得だね」とミツジは言うと
「折角、美人を見つけたんだ。名乗っておこう。俺はミツジロウってんだ。ミツジと呼んでくれ。いいね、これも神社のご利益かね。拝んでおくか」とミツジは柏手を打つと
「神様ありがとうございます。ご利益があると言いふらします」と大声で言った。
おもわずシズはふっと笑った。
「笑うともっと美人だね」と言ったあとで芝居気たっぷりに
「しまった。美人を慰める役得をみすみす逃した。娘さんもう一回泣いて」と言った。
シズはたまらず吹き出した。
「よかった、ほんとに笑ってくれた。おっと時間だ。これでも忙しいのよ。またね。美人の嬢ちゃん」と言うとミツジはさっさと歩き去った。
ミツジが歩み去る後ろ姿を別の娘が見送っていた。半泣きで飛び出したシズを慰めようと追ってきたキヨだ。キヨはミツジのことを見知っていた。軽そうな見た目ながら正義感が強いのを知っている。
どこかの小僧さんがなんくせをつけられているのを助けたところを見たことがあるのだ。泣いていた小僧さんを優しく慰めていた。その人がシズを慰めて美人さんと言っていたのだ。キヨはシズが羨ましくて少し妬けた。
通りにでたミツジは『おや』と思った。
先ほどの小僧が歩いていたのだ。なにやら大事に捧げ持っている。なんだろうと思ったが、横目で見ながらすれ違った。
カモが見つかるまで、さっきの娘と遊んでみるかとミツジはもう一度偶然会うにはどうしたらいいかと考えた。
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