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第12話 善光寺の句会
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「村上様。ほんとうにありがとうございました」と言うとその男は平伏した。
「どうなされましたか? 木村殿」と珍しく村上平治郎は慌てた。
木村と呼ばれた男は先日、俳句の師匠に入門するにあたってと言う講義を受けた者である。
「はい、村上様、先日、二回目の俳句の会に行きました。その時の席題が嫁入りでございました。それでわたしはまえに教えていただいていた句を参考に
赤無垢で嫁ぐ佳人に花笑う と提出しました。
すると思いがけなくいい評価を頂きました。
なにやら阿呆みたいに佳人に見とれる姿が想像できるとか・・・これって褒められてますか?
確かに佳人がわたしに嫁いでくれたら嬉しいと思いますよ。でもそんなに上手くいかないですよ。
それで、長野の善光寺で句会があるそうでそれに師匠と一緒に出席するように言われました。もしかしたら面白い句を期待されてるような・・・」と木村は謙遜したが名誉なことである。
「そうですか。その句はよい句だと思いますよ。幸せ一杯の嫁入りの光景ですね。それを素直に描いています。正直わたしが提案した句はどれも素人芸です。でも師匠が木村殿を見込んだということですので、お祝いを述べさせていただきます」
と平治郎も頭を下げた。
「ありがとうございます」と木村は受けると
「お礼でございます」と菓子折りをつと差し出した。
「ありがとうございます」と平次郎は受け取った。
木村はすぐに暇を告げた。平治郎は送り出しながら「句会で落ち着いていられるには」と新しい講義について思いをめぐらせた。
考えてみると平治郎は江戸を出たことがない。主を持たぬ身になったのだ。好きに旅をしてもいいのだ。千夏をつれて善光寺参りもいいなと平治郎は信濃路を思った。
「どうなされましたか? 木村殿」と珍しく村上平治郎は慌てた。
木村と呼ばれた男は先日、俳句の師匠に入門するにあたってと言う講義を受けた者である。
「はい、村上様、先日、二回目の俳句の会に行きました。その時の席題が嫁入りでございました。それでわたしはまえに教えていただいていた句を参考に
赤無垢で嫁ぐ佳人に花笑う と提出しました。
すると思いがけなくいい評価を頂きました。
なにやら阿呆みたいに佳人に見とれる姿が想像できるとか・・・これって褒められてますか?
確かに佳人がわたしに嫁いでくれたら嬉しいと思いますよ。でもそんなに上手くいかないですよ。
それで、長野の善光寺で句会があるそうでそれに師匠と一緒に出席するように言われました。もしかしたら面白い句を期待されてるような・・・」と木村は謙遜したが名誉なことである。
「そうですか。その句はよい句だと思いますよ。幸せ一杯の嫁入りの光景ですね。それを素直に描いています。正直わたしが提案した句はどれも素人芸です。でも師匠が木村殿を見込んだということですので、お祝いを述べさせていただきます」
と平治郎も頭を下げた。
「ありがとうございます」と木村は受けると
「お礼でございます」と菓子折りをつと差し出した。
「ありがとうございます」と平次郎は受け取った。
木村はすぐに暇を告げた。平治郎は送り出しながら「句会で落ち着いていられるには」と新しい講義について思いをめぐらせた。
考えてみると平治郎は江戸を出たことがない。主を持たぬ身になったのだ。好きに旅をしてもいいのだ。千夏をつれて善光寺参りもいいなと平治郎は信濃路を思った。
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