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第9話 幽霊騒動
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庭に入り込んだ者が今日は家のなかに入って来た。引っ越して来た日は、人がいるのを見て帰って行ったが、ときおり様子を見ているようだ。たまに鋭い気配が混ざるのが不思議だったが害はなさそうなので放っておいた。
入りやすくしてやろうと、六三を使いに出した。一晩帰って来ない。
害のなさそうなのが、七人、そっと家のなかに入って来た。
台所でなにやらごそごそしていたが、こちらへ向かう足音がした。
なにやら音が聞こえてきた。芝居で幽霊が出て来る時のあのヒューードロドロドロだ。
そして洗い髪の女がお盆を持って近づいて来た。襖がさっと開くと女が枕元に座って
「お茶をどーーーぞーー」と言った。
順三郎は起き上がり、女をじろりと見ると立ち上がった。上から女を見下ろす。
それから後ろの闇を見てこう言った。
「恨んでいるのか?そうだろうなぁ」
「ヒ?!」と驚いた女の手から盆が落ちて湯呑から茶が、こぼれなかった。最初から空だったようだ。
「幽霊が幽霊にとりつくのか!そんなに恨んでいるのか?」と順三郎が低い声で言うと
「ヒ!!旦那様。お助けをーー」と女は順三郎の足にすがりついた。
そこに残りの六人がやって来た。
「フクなにやってるんだ」
「おまえ、もう浮気か?」
「あら、近くで見るとほんと。いい男」
「こうなったら」と言った男は順三郎に飛びかかったが、手もなく転がって襖を倒した。
「旦那、命ばかりは」
「それどころじゃないよ、幽霊だよ」とフクと呼ばれた女が順三郎から離れずに言った。
「フクとやら、なにもおらん。驚いたか? ただお前たちこの家になにがあるんだ」
「ヒェ?」とフクが順三郎を見たが次の言葉が出ない。
他のものも
「それは・・・」
転がった男も起き上がって
「その」とうなだれた。
七人は順三郎に土下座をして、必死で頼んだ。
「この家に隠した盗品を持って帰りたい」
「盗品?」
「盗品とか大したもんじゃない。ケチな盗品で」
「お前たちが例の盗賊か?」
「いや、あんなだいそれたものじゃない・・・コソ泥です」
「つまりおまえたちはこの家に盗品を隠したということか?」と順三郎が言うと
「はい。隠しました」と飛びかかって来た男が代表して答えた。
「どこに隠した?」
「納戸」
「納戸?それは隠したことになるのか?」
「さぁ?」
「納戸か。見に行くか?」
戸を開けると暗くてよく見えない。順三郎は越して来てから納戸のなかを見たことがないのを思い出した。
「まぁ良い。明るくなってから確認しよう」と順三郎は言うと
「さて、お前たちは泥棒で暮らしているのか?」
「いえ!はい?いえ、雇われ仕事もしてまして」
代表の男、センゾウが説明したのによれば
「最初は芝居小屋で働いていたんです。それがつぶれたんで俺たち衣装とか小道具を持って出たんです。そしたらここが空家だったんで住み着いて。人に見つかるとよくないと思って出入りは夜にしてたら、ここが幽霊屋敷だと聞いて・・・」
『それはおまえたちが原因じゃないのか?』と順三郎は思ったが黙って話を聞いた。
「怖いから引っ越そうと思っていたら、住み着いたお人がいて、様子を見てたら幽霊はいなくなったみたいで」
『そうだろうな』と順三郎は頷いた。
「それで取りに来て・・・幽霊がおどかせば逃げるかもと思って」
「なるほど、わかった。泥棒した家はどれくらいだ?」
「何件もありますが、どこからなにを盗ったか覚えてません」とセンゾウがなぜか威張って答えた。そのことを咎めずに
「覚えてなけりゃ、返しにいけないってことか?」と聞くと
「そうです!」とセンゾウが答え、他のものも頷いている。
「お前たちここを出たらどこに?」
「えっと空家を探してありますんで」とセンゾウが答えると順三郎はふっと笑って
「ここで雇われないか?」と言った。
七人は息を飲んだ。それからお互いを見た。フクが
「あたしゃ、雇われる。お世話させていただきます」と言った。
「なんだい抜けがけかい。わたしもお世話します」とタカが言うと
男たちも手を上げて全員が雇われることになった。
「仔細は六三が戻ってからになるがな。言っておく。ここんちは貧乏だ。給金は少ないぞ。いや払えんかも知れん」と言った。
途端にしょんぼりした七人はまたしてもお互いを見ていたが
「雇われます」と言うセンゾウの言葉にいっせいに頷いた。
入りやすくしてやろうと、六三を使いに出した。一晩帰って来ない。
害のなさそうなのが、七人、そっと家のなかに入って来た。
台所でなにやらごそごそしていたが、こちらへ向かう足音がした。
なにやら音が聞こえてきた。芝居で幽霊が出て来る時のあのヒューードロドロドロだ。
そして洗い髪の女がお盆を持って近づいて来た。襖がさっと開くと女が枕元に座って
「お茶をどーーーぞーー」と言った。
順三郎は起き上がり、女をじろりと見ると立ち上がった。上から女を見下ろす。
それから後ろの闇を見てこう言った。
「恨んでいるのか?そうだろうなぁ」
「ヒ?!」と驚いた女の手から盆が落ちて湯呑から茶が、こぼれなかった。最初から空だったようだ。
「幽霊が幽霊にとりつくのか!そんなに恨んでいるのか?」と順三郎が低い声で言うと
「ヒ!!旦那様。お助けをーー」と女は順三郎の足にすがりついた。
そこに残りの六人がやって来た。
「フクなにやってるんだ」
「おまえ、もう浮気か?」
「あら、近くで見るとほんと。いい男」
「こうなったら」と言った男は順三郎に飛びかかったが、手もなく転がって襖を倒した。
「旦那、命ばかりは」
「それどころじゃないよ、幽霊だよ」とフクと呼ばれた女が順三郎から離れずに言った。
「フクとやら、なにもおらん。驚いたか? ただお前たちこの家になにがあるんだ」
「ヒェ?」とフクが順三郎を見たが次の言葉が出ない。
他のものも
「それは・・・」
転がった男も起き上がって
「その」とうなだれた。
七人は順三郎に土下座をして、必死で頼んだ。
「この家に隠した盗品を持って帰りたい」
「盗品?」
「盗品とか大したもんじゃない。ケチな盗品で」
「お前たちが例の盗賊か?」
「いや、あんなだいそれたものじゃない・・・コソ泥です」
「つまりおまえたちはこの家に盗品を隠したということか?」と順三郎が言うと
「はい。隠しました」と飛びかかって来た男が代表して答えた。
「どこに隠した?」
「納戸」
「納戸?それは隠したことになるのか?」
「さぁ?」
「納戸か。見に行くか?」
戸を開けると暗くてよく見えない。順三郎は越して来てから納戸のなかを見たことがないのを思い出した。
「まぁ良い。明るくなってから確認しよう」と順三郎は言うと
「さて、お前たちは泥棒で暮らしているのか?」
「いえ!はい?いえ、雇われ仕事もしてまして」
代表の男、センゾウが説明したのによれば
「最初は芝居小屋で働いていたんです。それがつぶれたんで俺たち衣装とか小道具を持って出たんです。そしたらここが空家だったんで住み着いて。人に見つかるとよくないと思って出入りは夜にしてたら、ここが幽霊屋敷だと聞いて・・・」
『それはおまえたちが原因じゃないのか?』と順三郎は思ったが黙って話を聞いた。
「怖いから引っ越そうと思っていたら、住み着いたお人がいて、様子を見てたら幽霊はいなくなったみたいで」
『そうだろうな』と順三郎は頷いた。
「それで取りに来て・・・幽霊がおどかせば逃げるかもと思って」
「なるほど、わかった。泥棒した家はどれくらいだ?」
「何件もありますが、どこからなにを盗ったか覚えてません」とセンゾウがなぜか威張って答えた。そのことを咎めずに
「覚えてなけりゃ、返しにいけないってことか?」と聞くと
「そうです!」とセンゾウが答え、他のものも頷いている。
「お前たちここを出たらどこに?」
「えっと空家を探してありますんで」とセンゾウが答えると順三郎はふっと笑って
「ここで雇われないか?」と言った。
七人は息を飲んだ。それからお互いを見た。フクが
「あたしゃ、雇われる。お世話させていただきます」と言った。
「なんだい抜けがけかい。わたしもお世話します」とタカが言うと
男たちも手を上げて全員が雇われることになった。
「仔細は六三が戻ってからになるがな。言っておく。ここんちは貧乏だ。給金は少ないぞ。いや払えんかも知れん」と言った。
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