湖の町。そこにある学校

朝山みどり

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25 ある思い。後悔?

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今日からバイト先に泊まりに来るのは、田舎からやって来る子だ。コンテストのゲストとして呼ばれた。
話題作りだろう。決勝に来れなかった人たちも、この下手な踊りをみたら慰めになるだろうし、決勝しかみない一般人に普通の程度の低さを見せるってことかな?ようは、引き立て役。ってことだよね。

でもやって来た子たち、輝いている。容姿も全員、整っているしへたにカッコつけてないっていうのか?

これを見たらゲストで呼ぶかもって思った。そして思った。もしあの学校に行っていたらわたしも出演者の一人だったかもって・・・

だって不公平よ。あの子達は地元の人に大切にされて、いい友達に恵まれて、見た目も綺麗で踊りも上手で・・・

わたしなんか・・・父親は自分の血を引いてないわたしに冷たいし、母親は父親の気を引きたいから向こうの子ばかり可愛がって・・・昨日も新しい服を一緒に買いに行ってた・・・わたしは教会のバザーでこの夏の服を揃えたのに・・・ちょっとだけ知ってる同じ学校に行ってる子のお古を着てるって言うのに・・・

だから、やつあたりしちゃったのよ・・・あの子たちの服をカッターで切り裂いていた。

シャーと布が切れる音がいらいらを消してくれた。

外出から戻った彼らは服が破れていることに気づいて騒ぎだした時、自分がとんでもないことをやったと気づいたが名乗り出る勇気はなかった。

だが、いい人のまわりにはいい人が集まるのか、彼らは服を買いに行った。そしてそれをあっと言う間に衣装として着こなした。

その後、あのコジカ・マドカの事件が起きたが、彼らは見事に切り抜けた。


あれから、十年。彼らが不幸になるのを見てやる。と彼らの動向を追った。踊りの世界で成功した者がいる。

幸せな結婚をした者もいる。あのサエグサ家の跡取りと・・・大事に箱に入れて守って貰うんだろな。


そして今日、父親を殺したと捕まった女があのなかの一人だ。彼女のことはよく覚えている。みなが外出したあとで一人残っていた。

「ださい連中と離れたいの」と言った。
おすすめのお店を聞かれて、評判の悪い店を教えた。

「地元の人に聞くのが一番よね」と言った時の笑顔が寂しそうだった。

一人で行動した彼女は疑われていたと思うけど、連中は大事にしなかった。何故だろう?友情?でも彼女敬遠されてたよね。

わたしは当時、服を切り裂いたのはわたしだと当局に連絡した。聞き取りに来た人に何故?と聞かれてもしかしてあの服を破った犯人と思われたら刑が重くなるかもしれないと思って、自分のやったことがこわくなったからだと答えた。

しばらくすると、あの町出身の議員から連絡があった。彼もあの仲間だ。町の市長から国へ舞台を移していた。

彼と話した。彼らは当時、あのカスミさんを疑ったそうだ。だが向き合うのが怖くてちゃんと調べなかったそうで・・・それは心のおりとして残っているそうだ。

そして、話したことをとても感謝された。将来、カスミさんが希望すればあの町で暮らせるようにするらしい。

「同級生もいますからね」と彼は言った。最後に握手して貰った。彼の車が動き出して気がついた。

サイン貰っておけば良かった・・・大統領の若き日のサイン! 高く売れるじゃない!!


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