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20 カスミ

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「今頃やっても遅いよね。もともと馬鹿だし」と聞き慣れたカスミの声がした。

「遅くないわよ」とレイナの声がした。

「邪魔するなら、帰れば」とレイナが冷たく言ってる。

「どうしていつも、わたしに冷たいの?」とカスミが言うと

「冷たいってどういうこと?」とレイナが問題を解きながら答える。

「わたしに逆らうじゃない」とカスミがとんでもないことを言い出した。

「逆らうってなにその言い方。わたしはわたしの意見を言っているの」とレイナが言うと

「なによ。生意気に・・・」とカスミは言うとわたしを見て

「トイレに行っといたほうがいいんじゃない?また間に合わなかったら大変よ」と言った。矛先を変えたな!!

「なんのことを言ってるの?意味わかんないけど」と言った。言い返してやるって、こう言ってやるってずっと思っていた。やっと言えた。

「なによ、随分、強気じゃない。ママと弟に守られてお気楽だから、ゆるいのよね。漏らさなくなって良かったわね」

カスミがこう言った時、わたしの体が無意識に動いてカスミの頬をぶっていた。

「なに、するのよ」とカスミが頬をおさえて言った。

「わからない?」と言った。もっと言いたいけどセリフを思いつかない・・・

「カスミ、どうしてとは聞かない。あんたの理由なんかどうでもいい。だけどあんたは最低よ」とリオナが言った。

カスミはリオナを睨んだが、なにも言わずにミヨコを見た。

「ミヨコはわたしに似てるよね。キリコみたいに甘やかされた子が嫌いよね。特にキリコが・・・」と言った。

「だって、ミヨコってさ。典型的な貧乏子沢山の末っ子じゃん。壊れかけた家でさ・・・何人兄弟だっけ?

十人?確か?もっと? だからさ、名前とか適当でさ。三月四日に生まれてミヨコ。ほんと生まれた時から雑に適当に扱われてさ・・・よく言ってたよね。キリコむかつくって・・・あの甘ったれた喋り方が嫌い。って」

ミヨコは赤くなり、わたしをちらっと見た。

わたしはミヨコがそう言っているのをよく知ってる。小さい頃は悲しかったけど・・・今はどうでもいい。

小さい頃のそういうことはどうでもいい。ミヨコもわたしも成長したし・・・

ただミヨコには警戒してたよ。ミヨコがカスミのうわさをした時に「そうだね」は絶対に言わなかった。

ミヨコがカスミに言いつけることを知ってたから、それもすごく大きくしてね。ほんとに、カスミがいなければわたしの人生は平和だったでしょうに・・・だけど、ミヨコの味方もしない・・・

「前から思っていたけど、カスミさん、どうして人が嫌がることを言うの?」と裏方をやっていたミツグが言った。

幼稚園からいっしょの仲間だ。

「途中からぼくたちの手伝いに来たけど、『そんなことじゃだめじゃない』しか言わなかったよね。今は勉強の時間だから余分なことは言いたくないけど。勉強の時間が減るだろ」

「いいと思うよ。一度話したかった。君が他の子をいじるのって不愉快だったんだ」

「それに、衣装のことなにか知ってる?」

「衣装ってなによ。わたしを疑ってるの?」とカスミが言うと

「状況だと君だよ。あの時、誰かといなかったのは君だけだ」

「それは・・・それは・・・覚えてないわ」

「あのとき、僕たちは都会にふれて、みんな楽しかった。まぁその後が強烈だったから・・・過去になったけど」とアキラが言うと

「そうよね。カスミあの時どこにいて、なにをしていたか教えて」とルミコが言った。

「そんなことどうでもいいでしょ!とにかくわたしは犯人じゃないわよ」と怒鳴るとカスミは出て行った。

「なんで、ああなのかしらねぇ」

ほんとよね、わたしもそう思う。


「ごめん、なんだか、みんなを巻き込んだ。今日は帰って頭を冷やすわ。勉強は明日」とレイナが言い出してわたしたちは家も戻った。





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