湖の町。そこにある学校

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
17 / 25

17 話し合い

しおりを挟む
「皆様、本日はお忙しいなかお集まりいただきまして、ありがとうございます。わたくしは司会のウエヤマ・イチロウです」

ここは拍手かなって思ったけど、顔を見合わせてやめた。

「コジカ・マドカさんの申し立てで、本日も学校関係者のみなさまが集まってくれています。ありがとうございます」

どうしようかと思った時、レイナがすっと立ち上がった。真似してみんな立ち上がった。レイナは取材の人に向いた。わたしたちはその意を汲んだ。全員が揃ってお辞儀をした。頭をあげたレイナは次にコジカ・マドカにお辞儀をした。

わたしたちは同じタイミングで頭をあげると黙って座った。

司会の人はにっこり笑うと

「こちらのコジカ・マドカさん、そしてマドカさんを心配したミズムラ・タツヤさんが駆けつけました」

ふーーん、ミズムラさんかと思った。

「えっとミズムラさんはご存知のようにコジカ・マドカさんと多くの作品で共演され、私生活でも共に歩んだ時期がございました」

わすれないようにしっかりと司会のウエヤマさんを見てわたしは覚えようと頑張った。

「離婚という選択をしたお二人ですが、お互いをおもいやる気持ちに変わりはなく、ミズムラさんはコジカさんを支える為に本日駆けつけたそうでございます」

なるほど・・・離婚しても友達ってことか、芸能人は違うね・・・と思った。

みんなも同じように思ったみたいで

「離婚しても思いやるって芸能人は違うのね」とミヨコがルミコに言っている。

「ほんとだよね。この前、お向かいさんが離婚したけど、つかみあってた」と言ってる。ほんと、あの時は騒ぎだったわ。

司会者はわたしたちがざわざわしたせいか、ちょっと声を大きくして話していた。しまった。ちょっと聞き漏らした。

「・・・コジカさんの主張は変わらず誠意を込めた謝罪とみなさまとの共演」

「待て、おれも主演をするぞ」と往年の・・・ミズムラさんが割り込んだ。

「はい、コジカさんとミズムラさんを主演。お二人を囲んで生徒さんが踊り、振り付けを提供したコジカさんへの感謝をして欲しいと言うことです」

「慰謝料は払わなくていいんですか?」とマサトが言った。

そう、確か、昨日は慰謝料とか言ってたよね。

司会がコジカさんを見ると、おじさんが

「慰謝料の請求はございません」と答えた。

「わかりました。それで振り付けを指導したとか教えたと言ってますけど、それはだと思います」

「なんですって!!勘違いってなによ・・・人をボケ老人扱いして」

「いえ、ボケたと思っていません。意識して振り付けを教えたと言ってますか?」とマサトが答えている。

「えぇ、教えたかた教えたと。振り付けもわたしが考えて指導したのよ」とコジカが答えている。

マサトはおじさんのほうを見て

「間違いないですか?」と言った。するとミズムラさんが

「君、大人相手に失礼だよ」と言った。

「いえ、相手が大人でも子供でも関係ないですし、最初に生徒会の僕が話すと言ってます。そうでないと全員が話すと収拾がつかなくなります。これでも僕たちディベートを学んでおりますので今日は実践授業のつもりで来ております。ね?先生単位に含まれますよね」と最後はエリカ先生のほうを向いた言った。

「もちろんです。機会があれば全員に一言って出来ますか?」と先生は司会を見た。

「承知しました。それでは、みなさんは挙手して下さい」と司会はわたしたちの方を見て言った。

「はい」と何人かが手をあげた。

「はい、そちら」と指されたのは、ハヤトだった。

「はい、あの振り付けですが、あれってDVDのパクリだけど・・・音楽だってCDだし・・・おばあちゃんが出てくるのは、振り付けが緩いから、ステップとか多めに踏むようにしたり、回るのを増やしたりしてるけど、パクリだよ。
それを練習してるときに来ただろう。覚えてないのか?」とハヤトが言うと

「なにを言ってるの。ダンスのステップはある程度決まりがあるけど、それを組み合わせるには経験とセンスがいるのよ。わたしにはそのどちらもあるの。あなたたちを指導して励ましたのを忘れたとは言わせないわ」

「そうか・・・そっちの人も」と言いかけたハヤトに「ミズムラ」と誰かが教えた。

「ミズムラさんはコジカさんの言い分を信じるのか? 俺たちの踊りを見てないよな?」とハヤトが言うと

「信じるともよ。コジカ・マドカを」と答えが返って来た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...