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11 首都でおのぼりさん

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わたしたちは、劇のなかのように盛大な見送りを受けて首都に向かった。

衣装はよくある透明ボックスに入れて運んだ。楽器もそれぞれが手荷物で運んだ。楽器は人任せにしたくないと言ってた。重いのにね・・・

せっかくだから、ちょっと遊んでおいでと言う事で、余裕を持って到着したわたしたちは、練習より見物を選んだ。

レイナが調べておいたおしゃれな通りに、見学に行った。勇気を出してお店に入ったけど、店員さんが可愛くておしゃれで、驚いた。

「店員さんがモデルみたい」「美人でスタイルがいい」とか皆、口々に店員さんを褒めた。

最初、わたしたちを見て驚いた店員さんも、だんだん慣れて笑顔になって真剣に服を見立ててくれた。

でも、皆、気のいい人たちでわたしたたちは、あんまり高くない服を買った。

なんか今日は、居心地がいいなと思っていたら、カスミがいない。宿舎を出るときはレイナが調べたお店の悪口を言っていたようだけど、どっかではぐれたのかな?

まぁ、帰れないって事はないだろうから・・・ほんとにいてもいなくても不愉快な・・・

帰りながら、もう一度行こう。今度はあそこの店でなにか食べようと話しながら帰った。

「お腹がすいたぁ」と言いながら、部屋に戻ったが、サチヨが若返った時の衣装に今日買ったのを着たいと言い出して、衣装を取ってくるから着たのを見てと言って荷物部屋へ行った。

かすかに悲鳴が聞こえたような気がして、わたしたちは顔を見合わせた。まぁ気のせいかなとおしゃべりに戻った時、ドアが開いてサチヨが部屋に入って来て

「衣装が・・・衣装が・・・めちゃくちゃに」と言った。


意味が分からずに「え?」と言ってすぐに「大変」「なんで」「すぐ行く」とか言いながら、皆、部屋を出て走った。

状況を確認したレイナはすぐに先生たちの部屋へ向かった。

わたしたちは、透明ケースから衣装を出しかけて、腰が抜けた。

衣装は鋏で切られたり、手で裂かれたりしていた。


衣装を胸にかかえてサチヨは泣き出した。

わたしは、大変だどうしようとうろたえたが、頭の隅に犯人の姿が浮かんで来る。消してもすぐに浮かんで来るのを無理に消そうとしてもできなかった。

「カスミ・・・・」「いなくて良かったけど・・・・・」「やっぱりね・・・」「・・・・あの人って・・・カスミ」
まわりの声にもカスミって言葉が出て来ている。サチヨがふいに頭をもたげた。

「そうよ、カスミ。お店にいなかった・・・こんな事するなんて!どこにいるの!!カスミ!許さない」と言うと部屋を出ようとした。それをみなが引き止めた。

「なんで、あの女を庇うの? あの女・・・」と言いながらサチヨはまた泣き出した。



「キリコさん、聞いたよ。大変な事になったね」と落ち着いた声がした。ポールとその友人が立っていた。

「差し入れを持って来たんだ。その・・・会いたくて」と最後の部分はわたしのそばに来て小声で言われた。

顔に血が上るのを感じた。こんな事態なのに・・・

「衣装だけど、よければ僕たちに寄付させて・・・僕んちのお祖母ちゃん、物持ちが良くて若い頃の服があるんだよ。電話したらおいでって言ってた。サチヨさんはお祖母ちゃんだろ。その他の人はお店の服でも大丈夫かな?」とヒバリの方を向いて言うとヒバリは頷いたが、

「でも、予算が・・・」

「大丈夫。上げるんじゃないよ。お金だもん。だからそこは一緒に考えよう」とポールが言うとマサトが

「承知しました。そうと決めて急ごう。ヒバリさん、済まないが全部任せる選んで下さい」と言うとヒバリは

「大丈夫。夢が叶うと喜んだら、怒る?」とわたしたちに笑いかけると

「行きましょう」と部屋を出て行った。


「頼もしいね、ヒバリさんもマサトさんも。ねっキリコ」とポールは首をかしげると

「サチヨさんは僕と一緒にお祖母ちゃんちに行こう。キリコも」と言うと二人に腕を差し出した。

サチヨは

「顔くらいは洗ってくる。玄関で待ってて」と言うと急いで出て行った。

「僕たちも行こう」とポールは腕を差し出した。嬉しいけど、すごく戸惑う。どうしてこんなにあけっぴろげに好意を示して来るのだろう? 騙されないようにしないとと気を引き締めたけど・・・嬉しい!!



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