湖の町。そこにある学校

朝山みどり

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04 カスミ。嫌われて当然

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英語の授業って下を向いて教科書を眺めるものだったのに、先生のお顔に注目をしてみた。

よく筋肉が動く。これって顔痩せになるし、あの彫りの深い顔になるのかな?だから先生って美人なのかな?

よく知っている?と思う、do you とか may I  が別の音に聞こえる。

最後に先生は、英語の歌の歌詞を黒板に書いた。わたしたちは必死でそれを写した。

「英語の歌は、音符に単語が乗ります。日本語の歌は・・・えっと最近の歌は音符に単語が乗っていますが、基本的に日本語の歌は音符に一音が乗りますね。それに ICQ  . I seek you のように、他の単語と一緒に一つの言葉のように発音します。ちょっと慣れるまで大変ですが、すぐに出来るようになります。皆さんも英語の歌を一曲歌ってみましょう。来週、始めますので好きな曲をわたしの所まで言って来て下さい。一曲を丁寧に歌えば他に応用できます。それでは」

先生はさっそうと出て行った。


「やっぱり、わたしの言った事が採用されたね」と言いだしたのはカスミだ。

これを聞いたクラスの女子は目線でわかりあった。誰もそれに相槌を打たなかった。むしろ聞こえないふりをした。

カスミを目に入れなくなった。

男子も女子の様子が不穏だと感じたようで、なにも聞かなかったように、雑談を始めた。


放課後、わたしたちはいつものように山に向かった。カスミも一緒だ。なにかと話しかけて来るがうざい。

無視はしないが「あ、そう」とか「そうなんだ」で済ませてる。終いに涙声になって

「ねぇどうして?」とか「わたしなにかやった?」とか言い出した。なに被害者ぶってるのやりまくりじゃない。

「ねぇ自覚ないの?覚えてないの?朝、みんなの前でなにやってた?」とわたしが言うと


「えー、だって面白く話しただけ。だって皆わたしの話を聞きたがるし」

「劇をしましょうって言いだしたのは誰?」と言うと

「誰でもいいんじゃない?クラスで広めたのはわたしだし・・・ラァァアアアア」と最後を調子っぱずれの歌で締めくくってカスミは答えた。

「あんたって本当に」とミヨコが言うと

「なによ、わたしが悪いって言うの? ほんと、最近、生意気になって」とカスミが言うと

「もう、やめて、カスミはいつもこうじゃない。相手にしなくても」とヒバリが言った。

随分なことを言うわね。とカスミを見ると

「やっぱり、ヒバリはわかってくれるわね」にこにこして言った。都合のいい所だけ聞こえたのだろうか?

レイナは冷笑を浮かべ、ミヨコは無表情だったが、


「まぁいいか」とわたしが言うと

「くだらないことで、すねないでよね」とカスミからダメ押しされてしまった。


カスミがここからどこかに行けばいいけど、こいつは居座るから、ちょっと我慢することにして、


「すねてないよ。むかついただけ」と答えて


「今日の英語どう思った?」と話題を変えた。

「英語って顔を動かすんだね」とヒバリが言った。

「そうそう、わたしたちも、ああゆうふうに発音したら、英語の顔になるかな?」とミヨコが言うと

「うまい言い方。さすがミヨコ」とレイナが言った。

「くだらない言い方と思うけど」とカスミが言うのを無視して

「うん、うまい言い方。英語のお顔。彫りの深い美人顔になろう」とわたしが言うと

「いいねぇ」とレイナが手を叩きながら言った。

それからは音楽劇の事をあれこれ、話した。

カスミが話の主導権を取ろうとするが、わたしたちは一致団結してそれを阻止した。

わたしはちょっと驚いていた。今まではカスミに対して皆、手加減していたんだ。子供の頃から一緒だから、許していたけど嫌だったんだ。

誰もイヤミを言ってない。ちゃんと受け答えをしている。だけど見事にカスミはなんていうか、中心から追い出された。


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