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03 夜会の出来事
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夜会当日、王室から侍女がやって来てエリーの着替えを手伝った。
王室から送られたドレスは二着。エリーの分とリジーの分。いつも送られた一着のドレスはリジーが着ていたから・・・
そして、エリーはこっそり先に出発した。そうでないとリジーが泣いてエリーのドレスと交換となると思ったからだ。
侍女はそんなこと出来ないと断ったが、
【あなたが断った事で、わたくしは今の手持ちでほつれが少ないのを着るはめになる】であわてて馬車の手配をした。
今まで王太子は婚約者のエリーではなくリジーをエスコートしていたので、王宮全体が、国王夫妻も含めて、なんとなくエリーを低く見ていた。優秀な婚約者であるにかかわらず・・・
これは主に王太子の責任だが、エリーの優秀さは皆、わかっている。だが、常に一歩引くエリーに慣れて、エリーだったら我慢してくれると思って甘えてしまっていたのだ。
王太子としてはエリーを好ましいと思っていたが、そばに寄ってくる義妹リジーの相手をしてしまっていた。
それで王太子は今夜は絶対にエリーのそばを離れない。エリーがどんな事を思っていても決して・・・と固く心に誓っていた。
今の自分が見せる精一杯の愛と誠意だと・・・
でも、でも願わくば「妖精のいたずら」が終わっていて欲しいと。強く、強く思っていた。少し望みがあった。
馬車から降りたエリーの頭の上にはなにも書かれていなかったから・・・
そして、名前を呼ばれたエドワード王太子はエリーの手を取って会場へ入った。
拍手と歓声に迎えられたが、
「エディ!!わたしはここよ」と大きな声が聞こえた。
【リジーが呼んでますよ。王太子殿下!いつものように腕を差し出して】
歓声がどよめきに変わった。
しかし、エドワードは気づかぬふりをした。続いて外国からの賓客が紹介された。
彼らは皆、王太子とその婚約者の前に立ち止まり少し言葉を交わすと、去って行った。
【お孫さん、おめでとうございます。嬉しさがあふれてますね】
ごつい顔の元宰相と挨拶を交わしていた時はこうだった。
海のそばの小国の小柄な大使と挨拶をしている時
【今年のワインは美味しいよ。樽から飲んで大人気だった】これは確実に妖精情報だ。
この国のワインは、この後高騰した。なんせ、妖精に大人気のワインだ。
エリーがその事に気づいたのは先日の王太子とのお茶の席だった。もしかして妖精にいたずらされている?
自分の頭の上に視線が彷徨うのだ。
試しに王太子への不満を心で呟いたら伝わったようで、おろおろしているのが愉快だった。
妖精のいたずらはどんな発言も不問にされる。
初めて、王太子と公の場に出るのが楽しみに思えた。
挨拶が終わりダンスという時に、いつものようにリジーが飛び込んで来た。
「エディ、お待たせ」
いつものようにエリーを少し押しのけ、王太子の腕を取った。
【ほんとに二人はぶれないわね】
「リジー、やめてくれないか。ここは婚約者と踊る所だ」
【婚約者はリジーでいいでしょうに。お似合いですわ】
「妹に譲れないのは王太子妃にふさわしくありません」とエリーは今日は自分で公爵夫人のセリフを言った。
【こんな事を教育する親を持っているのは王太子妃にふさわしくない】
「王太子殿下、いつもの通りで、いままで一度もわたくしと踊った事はありませんよ。陛下も王妃殿下も認めてらっしゃいますので、いつも通りにファーストダンスはお二人で」
国王夫妻の顔色は悪かった。
【どうしたんだ?公爵夫人の得意顔が冴えないようだ】
【さすがにリジーが無作法だと思ってるのでは?】
【今更だよな】
音楽が始まり王太子とリジーが踊り始めて、次々に踊りの輪に加わって行く人々はさりげなくエリーの頭の上に視線を彷徨わせる。
【どうして今日は殿下はわたくしを気にするのでしょう? 家で面倒になるのよね。妹の面倒を見てないって。
わたくしが着られるよう、二人分のドレスを贈ってくるし・・・いつもわたくし当てのドレスをリジーが着ているのを平気な顔で見てるのに】
リジーとのダンスを終えた王太子はエリーにダンスを申し込んだ。最初で最後のエリーとのダンス。王太子は胸がいっぱいになった。
リジーに断固たる態度を取っていれば・・・もう、遅い。
エリーはあっさりと王太子の手を取るとステップを踏んだ。
【生まれて始めてのダンスの相手がこの人とはね】
にっこりと笑って王太子を見るエリーの頭の上はここまで来るとおかしさの方が先になった。
ダンスが終わると待ち構えていたリジーが
「エディ」と言いながら王太子の腕を取った。
王室から送られたドレスは二着。エリーの分とリジーの分。いつも送られた一着のドレスはリジーが着ていたから・・・
そして、エリーはこっそり先に出発した。そうでないとリジーが泣いてエリーのドレスと交換となると思ったからだ。
侍女はそんなこと出来ないと断ったが、
【あなたが断った事で、わたくしは今の手持ちでほつれが少ないのを着るはめになる】であわてて馬車の手配をした。
今まで王太子は婚約者のエリーではなくリジーをエスコートしていたので、王宮全体が、国王夫妻も含めて、なんとなくエリーを低く見ていた。優秀な婚約者であるにかかわらず・・・
これは主に王太子の責任だが、エリーの優秀さは皆、わかっている。だが、常に一歩引くエリーに慣れて、エリーだったら我慢してくれると思って甘えてしまっていたのだ。
王太子としてはエリーを好ましいと思っていたが、そばに寄ってくる義妹リジーの相手をしてしまっていた。
それで王太子は今夜は絶対にエリーのそばを離れない。エリーがどんな事を思っていても決して・・・と固く心に誓っていた。
今の自分が見せる精一杯の愛と誠意だと・・・
でも、でも願わくば「妖精のいたずら」が終わっていて欲しいと。強く、強く思っていた。少し望みがあった。
馬車から降りたエリーの頭の上にはなにも書かれていなかったから・・・
そして、名前を呼ばれたエドワード王太子はエリーの手を取って会場へ入った。
拍手と歓声に迎えられたが、
「エディ!!わたしはここよ」と大きな声が聞こえた。
【リジーが呼んでますよ。王太子殿下!いつものように腕を差し出して】
歓声がどよめきに変わった。
しかし、エドワードは気づかぬふりをした。続いて外国からの賓客が紹介された。
彼らは皆、王太子とその婚約者の前に立ち止まり少し言葉を交わすと、去って行った。
【お孫さん、おめでとうございます。嬉しさがあふれてますね】
ごつい顔の元宰相と挨拶を交わしていた時はこうだった。
海のそばの小国の小柄な大使と挨拶をしている時
【今年のワインは美味しいよ。樽から飲んで大人気だった】これは確実に妖精情報だ。
この国のワインは、この後高騰した。なんせ、妖精に大人気のワインだ。
エリーがその事に気づいたのは先日の王太子とのお茶の席だった。もしかして妖精にいたずらされている?
自分の頭の上に視線が彷徨うのだ。
試しに王太子への不満を心で呟いたら伝わったようで、おろおろしているのが愉快だった。
妖精のいたずらはどんな発言も不問にされる。
初めて、王太子と公の場に出るのが楽しみに思えた。
挨拶が終わりダンスという時に、いつものようにリジーが飛び込んで来た。
「エディ、お待たせ」
いつものようにエリーを少し押しのけ、王太子の腕を取った。
【ほんとに二人はぶれないわね】
「リジー、やめてくれないか。ここは婚約者と踊る所だ」
【婚約者はリジーでいいでしょうに。お似合いですわ】
「妹に譲れないのは王太子妃にふさわしくありません」とエリーは今日は自分で公爵夫人のセリフを言った。
【こんな事を教育する親を持っているのは王太子妃にふさわしくない】
「王太子殿下、いつもの通りで、いままで一度もわたくしと踊った事はありませんよ。陛下も王妃殿下も認めてらっしゃいますので、いつも通りにファーストダンスはお二人で」
国王夫妻の顔色は悪かった。
【どうしたんだ?公爵夫人の得意顔が冴えないようだ】
【さすがにリジーが無作法だと思ってるのでは?】
【今更だよな】
音楽が始まり王太子とリジーが踊り始めて、次々に踊りの輪に加わって行く人々はさりげなくエリーの頭の上に視線を彷徨わせる。
【どうして今日は殿下はわたくしを気にするのでしょう? 家で面倒になるのよね。妹の面倒を見てないって。
わたくしが着られるよう、二人分のドレスを贈ってくるし・・・いつもわたくし当てのドレスをリジーが着ているのを平気な顔で見てるのに】
リジーとのダンスを終えた王太子はエリーにダンスを申し込んだ。最初で最後のエリーとのダンス。王太子は胸がいっぱいになった。
リジーに断固たる態度を取っていれば・・・もう、遅い。
エリーはあっさりと王太子の手を取るとステップを踏んだ。
【生まれて始めてのダンスの相手がこの人とはね】
にっこりと笑って王太子を見るエリーの頭の上はここまで来るとおかしさの方が先になった。
ダンスが終わると待ち構えていたリジーが
「エディ」と言いながら王太子の腕を取った。
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