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第53話 祭りの後で

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「よく、集まってくれた。お祭りはご苦労だった。民と接してどうだった?クラーブ公爵」とアレクに言われて
「そうですね。楽しそうだと思いました」と答えたが、なんでこんな質問をとアレクを恨んだ。

「民は喜んでましたね。またやりましょう」とギルバードが言うと

「さすがだな」とアレクが答えた。そしてマイルスを見ると

「マイルスからは詳細な報告書が提出されて、皇国でも参考にさせて貰おうと写しを取って送った所だ」と公爵たちの反応を見ながら言った。そして
「すまない、先に言うべきだったのに、ハトン公爵。後を継がれたそうでお祝い申し上げる。父上の回復をお祈り申し上げる」と頭を下げた。

「ありがとうございます。父が倒れたと、予想外のことが起きてそれからのことですので、戸惑いばかりですが・・・父は今のところ落ち着いております」とマイルスが答えると
「それはなにより・・・前公爵の判断。お父上の置き土産はありがたいものであるし、配慮させて貰ったよ」とアレクが言った。

その時、ノックしてからドアを開けて特務部とアリスが入って来た。

「伯爵、来たな。あっそのままで」とアレクが言ってアリスは特務部の男に椅子を引いて貰って座った。男は部屋の前に行ってこう挨拶した。

「本日、集まって貰いましたのは、国の資産を皆さんがなくしてしまった件について王家からの処分を伝えるためです。司会、進行、説明は権限を頂いてわたくしが致します。後ほど、時間があれば王太子殿下がお見えになります」と言った。

公爵たちはお互いに顔を見合わせて、アレクをアリスを見て司会者に顔を戻した。

司会者は続けた。
「炊き出しの有用性はご理解なさってますね。あの道具も役目を立派に果たしたと思うが、いつ行方不明なったのかは、はっきりしてません」とここで、ギルバードが
「あれは倉庫になかったのだ」と言った。

「ダイナ様、証明ができません。スペーダ公爵は片付けたと名言しております。
はっきりしているのは、なくなった。それだけです。いつなくなったのか、わかりません。管理を公爵家がやっていて、なくなった。責任は公爵家にあります。

国の財産をなくして素知らぬ振りを続けた。そこで王家は示しをつけるべきだと考えました。
我々、特務部は相談されましたので、歴史を調べました。その時はこちらの伯爵に大変お世話になりました」とアリスに向かって軽く頭を下げた。

司会者は続けた。
「調べていくうちに、領地を預かり国の中でお役目を果たすべき貴族がその役目を果たさないのは何らかの意図があるのでは?と言う疑問が出て来まして・・・歴史ではその意図は謀反で」
「違う、そんなことは「まさか」「そのような」「それは」「いいがかりだ」「そんな勝手な」などと声がした。

「失礼ながら公爵家の立場では疑われる行為は避けるべきでした。王室はあなたがたに蔑ろにされたと感じています」

司会者が話し終わると公爵たちは顔を歪めてお互いを見たり司会者を睨みつけたり、ちらっとアリスに視線を送ったりした。ただ、アレクの方は見なかった。

司会者は
「先に結論を言いますね。各公爵家の所領を返していただきます。全部ではありません。どの地域かと言うことも決定しております」と言いながら、資料を各公爵に渡す。

それぞれの公爵は資料と見て息を飲むとアリスに向かって

「あんまりです。道具の代金を払います。肉焼く道具だ・・・馬鹿にしてるのか?」
「仕返しなのか?小娘が・・・」
「何故、こんなことを・・・カーラとは友人」

司会者が
「黙りなさい。見苦しい・・・」と言うと彼らは黙ったが、力なく天井を見たり頭を抱えたりしていた。

「これは王室の意向を受けて特務部がまとめたものですよ。伯爵は内政に置いて判断力に不足はありません。いままでの仕事を調べました。実質、国を回しておられました」そこで咳払いをして
「失礼、今はその話ではありませんでした。この決定事項に署名をしていただく話です」
「民のことなら心配はない」とアレクが言うと

「こんな、だまし討ちのようなことを」とクラーブ公爵が訴えた。
「わたしは今回の炊き出しは無関係でした」
「だからこそ、ダイナ公爵とスペーダ公爵を説得すべきだった」とアレクが言うと
「あっ」と言うとうなだれた。

「王太子殿下がお見えです」と司会者は言うと自ら、ドアを開けた。

王太子は
「そのままで」と言いながら、椅子に座るとアリスに微笑みかけた。

「わたしは残念に思っている。あなたがた公爵家は国の財産をなくしても知らんふり。結局、国がそれを補填した。あんたがたは王家の補佐として役に立っていない。
改めて、ご自分の役割を学んで欲しい。管理しきれない領地はこちらで管理する」

「ですが、あんまりです。これでは公爵家として・・・」とスペーダ公爵がかすれた声で言った。
「不満だと言うのか?」と王太子は返した。

「不満などとは・・・納得できません」とスペーダ公爵が言うと
「そうです。納得できません・・・道具と領地・・・」とダイナ公爵も言った。

「納得出来ないのは不満があるからであろう。国の財産を粗末に扱いつづけ、あげくの果てになくした。
その事になんの重みも感じない。責任を感じない。そのような公爵家はいらない。
王室はそう思ったが、特務部が公爵家はやり直せる。その機会を与えよと言うから今回の処置だ。
王家はあなたがたに不満を持っている。これ以上がっかりさせて欲しくない」と王太子が言うと
「・・・承知いたしました」「かしこまりました」と返事が返って来た。


署名が終わった公爵から部屋を出て行った。

最後に残った公爵に王太子が声をかけた。

「ハトン公爵。今回はよくやってくれた。返上された領地はそのまま返す故、管理を頼む。それと、頼むついでに今回戻って領地で公爵の領地に接したところの管理も頼む」
「は?はい、かしこまりました」とマイルスは返事をしたが、ほっとして力が抜けた。

そこにアレクがこう言った。
「返上された領地は飛び地になって面倒だが、伯爵に管理を頼んだ」とアリスを見た。アリスはハトン公爵に軽く頭を下げた。

「そこで、相談に乗ってやって欲しい」とアレクが続けると

「?!・・・わたしが!ですか」

「そうだ」とアレクが答えると

「よろしくお願いします」とアリスも重ねた。

「それは?なぜ?アリスが?」と王太子が口を出したが、それを無視して

「スター騎士団から二人ほど護衛を派遣する。大丈夫だと思うが実力のないやつの妬みは厄介だからな・・・些事ではあっても面倒だから・・・騎士団は好きに使ってくれ、責任はクレールスター皇国がとる」とアレクが言うと

ハトン公爵の顔色が悪くなったが、深呼吸して気が落ち着いたのか
「ありがとうございます。お心使いに感謝いたします。ではこれで」と言うと気力を振り絞って立ち上がった。

公爵が廊下に出ると、護衛が二人待っていた。
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