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第46話 迎えに行く
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「アリス、メニリーフ王国へ行きませんか?メアリーさんのお迎えを兼ねて、観光で」とアレクが朝食の席で言った。
「お迎えですか? ふっふふ、多分限界でしょうね。待ってるでしょうね」とアリスが答えると
「お迎えって名目があれば、入れてくれるでしょうね」とデイビスが言えば
「確かにそれなら入れますね・・・実は行ってみたいと思ったのですけど・・・ですけど勇気がなくて。あの怖い報告書が本当だったら・・・でもちょっとね。悪いとね。思っていたので。お迎えに行くのはいいですね」とアリスが反省してますって風で言うのをアレクとデイビスが笑いをこらえて見ていたが
「先ず、メアリーさんとライラの様子を見に行く。行ったついでに観光。あの半分鎖国している国に入るいい口実だ。アリスも外交デビューかな」とアレクが言えば
「まぁ準備しておいて良かったわ」と控えていたラズベリーが両手を打ち合わせて言った。
「そうね、ラズベリー。さすがね」とアリスが言うと、ラズベリーは
「わたくしと言うよりは」とアレクを意味ありげに見た。
「あぁアレク様が・・・ありがとうございます」
「わたしが選んだから・・・気に入ってくれるといいが」
「アレク様が選んだ物は好きです。アレク様に包まれているような・・・」と最後まで言えずに言葉が切れた。アリスはなんだか恥ずかしいことを言ったような気がして・・・うつむいてしまった。
アレクもそれを聞いていつもの落ち着きとがなくなって
「いや、その、なにか、気に・・・気にいって・・・また、また、買い物に」と言っていると、ラズベリーが笑いをこらえながら
「出発はいつですか?」と事務的に言った。
「行くと決めたらすぐに行きたい。アリスはどうかな?」とアレク言うと
「うん、早いほうがいいですね。明日でもいいくらいです」とアリスが答えると
「では明日。出発しよう。ここの王室に報告するのは帰国してからだな」とアレクが言うと
「それがいいですね」とデイビスが答えた。
翌日、誰の見送りも受けずに馬車が三台、王宮を出た。
船は四人が乗り込むと滑るように動き出した。
「どれくらいかかるかな?」とアリスが鏡のような海を見ながら言うと
「三日だそうだ」とデイビスが答えた。
アリスは毎日、甲板を早歩きで往復して過ごした。
そしていくつかの島を通り過ぎて陸が見えて来るとじっと立って近づくのを見た。
先に荷物を降ろして馬車に積み込んでから、四人は船から降りた。
アリスは船に向かって手を振ると馬車に乗り込んだ。
馬車が見えなくなると一族はこの国の沿岸を調査するために出発した。
四人は控え室に案内された。そこでアリスは髪を結い直した。
ほどなく迎えが来て国王夫妻と会うために移動した。
貴族が並ぶ部屋でラズベリーとデイビスは壁際に控え、アリスとアレクは並んで国王夫妻のもとへ向かった。
アリスは深く頭を下げたが、アレクは軽く会釈をした。
「今、ここにいるメアリー嬢の迎えに来たと言うことだな」と国王が言うと
「はい」とアレクが返事をすると
「メアリー嬢を中へ」と王が声をかけた。
地味に髪を結い古びたドレスを着たメアリーがライラに付き添われて入って着た。
『あら、ドレスが似合ってない。けっこう苦労した?ってライラやつれてる』とアリスは思いメアリーの様子を観察した。
国王が口を開いた。
「メアリー嬢、始めて顔を見るな」『始めて?どういうこと?』とアリスが混乱していると、メアリーが腰を曲げて頭を下げた。
「良い」と国王が言うとメアリーは頭を上げたがなにも言わなかった。そこにアレクが声をかけた。
「こんにちは、メアリー様。迎えに来ました。王妃殿下が寂しがっておられます。一度戻って下さい」
「母上が?」
「はい、とても寂しがって、ご自身で迎えに来たいと・・・ですがそれは無理ですのでわたくしどもが参りました」
「そうお。母上が、仕方ないわね。一度帰ります」
「かしこまりました。それではわたしは鉱山の視察に参りますので、それまでここで待っていて下さい」
「鉱山に行くの?一緒に行くわ」とメアリーが言った。顔に生気が戻った。
「それは頂けないな」とアレクが答えた時
「お土産です。まだ来ますよ」と箱が運び込まれた。
部屋にいる貴族がどよめいた。
「その赤い印の箱を先に開けて下さい。貴族の方へのお土産です。どんなものがいいのかわからなかったので、バッグを用意しました」とデイビスが言うと
「お配りします」とラズベリーがバッグを抱えて配り始めた。アリスも配り始めた。
「貰った者は引き取ってくれ」と国王の側近や侍従が声をかける。
やがて、部屋には貴族と入れ替わりにやって来た。おば様たちとちいおじ様たちが並んだ。
「この方たちは?」とデイビスが言うと
「おば様。ちいおじ様です」とパールが言った。四人とも意味がわからなかったが、追求しなかった。
「なるほど。黄色い印の箱を開けて下さい」とデイビスが言うと
ちいおじ様たちがさっと箱を開け始めた。
「布を持って参りました」とアレクが言うと
おば様たちはさっと取り出しては体に当てて行く。お互いの姿を見て燥いでいたが、それも治まり、布を手に頭を下げて出て言った。
ちいおじ様たちはラズベリーが布を当てて似合うのを渡している。やがてちいおじ様たちも出て行った。
「さて、メアリー嬢はこの者たちと一緒に鉱山に行きたいのだな?」と国王が言うと
メアリーは
「はい」と答えた。
「どうかな?」とアレクに国王は顔を向けた。
アレクは
「鉱山なんて行くのが大変だよ」とメアリーに言った。
「お迎えですか? ふっふふ、多分限界でしょうね。待ってるでしょうね」とアリスが答えると
「お迎えって名目があれば、入れてくれるでしょうね」とデイビスが言えば
「確かにそれなら入れますね・・・実は行ってみたいと思ったのですけど・・・ですけど勇気がなくて。あの怖い報告書が本当だったら・・・でもちょっとね。悪いとね。思っていたので。お迎えに行くのはいいですね」とアリスが反省してますって風で言うのをアレクとデイビスが笑いをこらえて見ていたが
「先ず、メアリーさんとライラの様子を見に行く。行ったついでに観光。あの半分鎖国している国に入るいい口実だ。アリスも外交デビューかな」とアレクが言えば
「まぁ準備しておいて良かったわ」と控えていたラズベリーが両手を打ち合わせて言った。
「そうね、ラズベリー。さすがね」とアリスが言うと、ラズベリーは
「わたくしと言うよりは」とアレクを意味ありげに見た。
「あぁアレク様が・・・ありがとうございます」
「わたしが選んだから・・・気に入ってくれるといいが」
「アレク様が選んだ物は好きです。アレク様に包まれているような・・・」と最後まで言えずに言葉が切れた。アリスはなんだか恥ずかしいことを言ったような気がして・・・うつむいてしまった。
アレクもそれを聞いていつもの落ち着きとがなくなって
「いや、その、なにか、気に・・・気にいって・・・また、また、買い物に」と言っていると、ラズベリーが笑いをこらえながら
「出発はいつですか?」と事務的に言った。
「行くと決めたらすぐに行きたい。アリスはどうかな?」とアレク言うと
「うん、早いほうがいいですね。明日でもいいくらいです」とアリスが答えると
「では明日。出発しよう。ここの王室に報告するのは帰国してからだな」とアレクが言うと
「それがいいですね」とデイビスが答えた。
翌日、誰の見送りも受けずに馬車が三台、王宮を出た。
船は四人が乗り込むと滑るように動き出した。
「どれくらいかかるかな?」とアリスが鏡のような海を見ながら言うと
「三日だそうだ」とデイビスが答えた。
アリスは毎日、甲板を早歩きで往復して過ごした。
そしていくつかの島を通り過ぎて陸が見えて来るとじっと立って近づくのを見た。
先に荷物を降ろして馬車に積み込んでから、四人は船から降りた。
アリスは船に向かって手を振ると馬車に乗り込んだ。
馬車が見えなくなると一族はこの国の沿岸を調査するために出発した。
四人は控え室に案内された。そこでアリスは髪を結い直した。
ほどなく迎えが来て国王夫妻と会うために移動した。
貴族が並ぶ部屋でラズベリーとデイビスは壁際に控え、アリスとアレクは並んで国王夫妻のもとへ向かった。
アリスは深く頭を下げたが、アレクは軽く会釈をした。
「今、ここにいるメアリー嬢の迎えに来たと言うことだな」と国王が言うと
「はい」とアレクが返事をすると
「メアリー嬢を中へ」と王が声をかけた。
地味に髪を結い古びたドレスを着たメアリーがライラに付き添われて入って着た。
『あら、ドレスが似合ってない。けっこう苦労した?ってライラやつれてる』とアリスは思いメアリーの様子を観察した。
国王が口を開いた。
「メアリー嬢、始めて顔を見るな」『始めて?どういうこと?』とアリスが混乱していると、メアリーが腰を曲げて頭を下げた。
「良い」と国王が言うとメアリーは頭を上げたがなにも言わなかった。そこにアレクが声をかけた。
「こんにちは、メアリー様。迎えに来ました。王妃殿下が寂しがっておられます。一度戻って下さい」
「母上が?」
「はい、とても寂しがって、ご自身で迎えに来たいと・・・ですがそれは無理ですのでわたくしどもが参りました」
「そうお。母上が、仕方ないわね。一度帰ります」
「かしこまりました。それではわたしは鉱山の視察に参りますので、それまでここで待っていて下さい」
「鉱山に行くの?一緒に行くわ」とメアリーが言った。顔に生気が戻った。
「それは頂けないな」とアレクが答えた時
「お土産です。まだ来ますよ」と箱が運び込まれた。
部屋にいる貴族がどよめいた。
「その赤い印の箱を先に開けて下さい。貴族の方へのお土産です。どんなものがいいのかわからなかったので、バッグを用意しました」とデイビスが言うと
「お配りします」とラズベリーがバッグを抱えて配り始めた。アリスも配り始めた。
「貰った者は引き取ってくれ」と国王の側近や侍従が声をかける。
やがて、部屋には貴族と入れ替わりにやって来た。おば様たちとちいおじ様たちが並んだ。
「この方たちは?」とデイビスが言うと
「おば様。ちいおじ様です」とパールが言った。四人とも意味がわからなかったが、追求しなかった。
「なるほど。黄色い印の箱を開けて下さい」とデイビスが言うと
ちいおじ様たちがさっと箱を開け始めた。
「布を持って参りました」とアレクが言うと
おば様たちはさっと取り出しては体に当てて行く。お互いの姿を見て燥いでいたが、それも治まり、布を手に頭を下げて出て言った。
ちいおじ様たちはラズベリーが布を当てて似合うのを渡している。やがてちいおじ様たちも出て行った。
「さて、メアリー嬢はこの者たちと一緒に鉱山に行きたいのだな?」と国王が言うと
メアリーは
「はい」と答えた。
「どうかな?」とアレクに国王は顔を向けた。
アレクは
「鉱山なんて行くのが大変だよ」とメアリーに言った。
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読んでいただいてありがとうございます。感想を送ってくださいましてありがとうございます。なかなかお返事が出来なくて心苦しいです。どの感想もたいへんありがたく、励まされるものです。ただお返事が・・・本当にすみません。この作品とほぼ同時に「王妃はわたくしですよ」と言うのを投稿しています。こちらはしばらくお休みしていたものですが、なんとか再開しました。良かったらそちらも読んでみて下さい。
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