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第42話 正式な顔合わせ
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クローゼットに入っていた。風変わりで古びた服を着たメアリーが挨拶をしている。
「わたくしはお願いした通り、アッシュ様のお側で仕える準備のために、参りましたメアリーです。この身が擦り切れるまでお仕えする覚悟でございます。皆さまご指導をお願いします。それとこちらの品物は皆さまへと思い持って参りました。お納め下さい。
虫けらの 我を導く 許しの手」
そういうとメアリーは深く頭を下げた。
「なかなか素直そうじゃない。いいわね。ご指導しましょ」
「その服見覚えがあるわ。まだ着られるとは」
「繕いの練習に使ったから、まだ大丈夫だろ」
「気をつけて歩かないと生地が裂けるよ」
「もとの色は何色だったんだい?」
とおば様たちは言いながら、手土産を見ている。
「夜、カードで遊ぶから・・・」
「今日は負けないぞ」
「途中で寝るなよ」
「それはおまえだろ」と、ちいおじ様たちが話しているが、メアリーは、反応しない。
パールとティナはそれに気づいているが知らんふりしている。ライラは手土産のなかから、扇を取り出して広げて見せたり、ショールをおば様の肩に当てたりしている。
「この前、見た、玉虫色のドレスはないね」
「あれは手土産ではございません」とライラが答えると
「そうかい」
「まぁいいけどね」
「ライラさんだったね。あんたは、賢そうだから聞くけど、メアリーさんにずっと仕えるのかい?」
「はい」とライラは答えた。
こういった会話、この部屋の喧騒はメアリーの耳に届いていた。
だが、メアリーはニールの助言であまり、口を聞かないようにしていた。そうでなければ、切れまくっていただろう。メアリーは我慢していた。その証拠に顔が赤くなってきている。
ここで切れられるのはまずい。ライラは
「それでは、メアリー様はここで失礼致します」と言ってメアリーと一緒に部屋に戻った。
「フォッフォッフォッフォあの娘と来たら」とおば様の声が後ろで聞こえた。
「お部屋まで、ご辛抱下さい」とライラに言われてメアリーの鼻息が荒くなった。
部屋に戻るとメアリーはライラの頬をぶって怒鳴った。
「なんで黙ってるの?わたしが侮辱されたのよ」ライラはため息が出た。むちゃくちゃで根拠のない八つ当たりだ。
王女として扱われないこと、衣装が気に入らない、部屋がいや。食事が・・・お風呂が・・・全部だ。
『わたしだって嫌だ。アホなお前が嫌だ。仕える価値のないお前が嫌だ。お金のためにこんな所に来た馬鹿な自分が嫌だ』そう叫びたかったが、ライラは頬の痛みをこらえてメアリーの髪を結い直した。
これから、夕食のお給仕だ。お盆を目の上に捧げ持つ。あれだ。
すませたら厨房で夕食を取って部屋に戻って来た。
無理だとライラは思ったが、負けてはいられない。なんとかメアリーをベッドに入れるとライラは自分の部屋に戻った。
廊下でニールが待っていて、ちょっと話をした。ニールの差し入れの乗った盆を持ってライラは部屋に戻った。
カードゲームのお世話を匂わされたがメアリー様は気がつかなかった。そこまでわたくしが気を回すことはないとライラは居直っている。
『愚か者 わたしも同じ 愚かだね』でライラの一日が終わった。
「わたくしはお願いした通り、アッシュ様のお側で仕える準備のために、参りましたメアリーです。この身が擦り切れるまでお仕えする覚悟でございます。皆さまご指導をお願いします。それとこちらの品物は皆さまへと思い持って参りました。お納め下さい。
虫けらの 我を導く 許しの手」
そういうとメアリーは深く頭を下げた。
「なかなか素直そうじゃない。いいわね。ご指導しましょ」
「その服見覚えがあるわ。まだ着られるとは」
「繕いの練習に使ったから、まだ大丈夫だろ」
「気をつけて歩かないと生地が裂けるよ」
「もとの色は何色だったんだい?」
とおば様たちは言いながら、手土産を見ている。
「夜、カードで遊ぶから・・・」
「今日は負けないぞ」
「途中で寝るなよ」
「それはおまえだろ」と、ちいおじ様たちが話しているが、メアリーは、反応しない。
パールとティナはそれに気づいているが知らんふりしている。ライラは手土産のなかから、扇を取り出して広げて見せたり、ショールをおば様の肩に当てたりしている。
「この前、見た、玉虫色のドレスはないね」
「あれは手土産ではございません」とライラが答えると
「そうかい」
「まぁいいけどね」
「ライラさんだったね。あんたは、賢そうだから聞くけど、メアリーさんにずっと仕えるのかい?」
「はい」とライラは答えた。
こういった会話、この部屋の喧騒はメアリーの耳に届いていた。
だが、メアリーはニールの助言であまり、口を聞かないようにしていた。そうでなければ、切れまくっていただろう。メアリーは我慢していた。その証拠に顔が赤くなってきている。
ここで切れられるのはまずい。ライラは
「それでは、メアリー様はここで失礼致します」と言ってメアリーと一緒に部屋に戻った。
「フォッフォッフォッフォあの娘と来たら」とおば様の声が後ろで聞こえた。
「お部屋まで、ご辛抱下さい」とライラに言われてメアリーの鼻息が荒くなった。
部屋に戻るとメアリーはライラの頬をぶって怒鳴った。
「なんで黙ってるの?わたしが侮辱されたのよ」ライラはため息が出た。むちゃくちゃで根拠のない八つ当たりだ。
王女として扱われないこと、衣装が気に入らない、部屋がいや。食事が・・・お風呂が・・・全部だ。
『わたしだって嫌だ。アホなお前が嫌だ。仕える価値のないお前が嫌だ。お金のためにこんな所に来た馬鹿な自分が嫌だ』そう叫びたかったが、ライラは頬の痛みをこらえてメアリーの髪を結い直した。
これから、夕食のお給仕だ。お盆を目の上に捧げ持つ。あれだ。
すませたら厨房で夕食を取って部屋に戻って来た。
無理だとライラは思ったが、負けてはいられない。なんとかメアリーをベッドに入れるとライラは自分の部屋に戻った。
廊下でニールが待っていて、ちょっと話をした。ニールの差し入れの乗った盆を持ってライラは部屋に戻った。
カードゲームのお世話を匂わされたがメアリー様は気がつかなかった。そこまでわたくしが気を回すことはないとライラは居直っている。
『愚か者 わたしも同じ 愚かだね』でライラの一日が終わった。
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